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第1216号(平成24年5月5日) |
社会保障審議会医療保険部会(4月18日)
短時間労働者への社会保険の適用拡大等について議論

社会保障審議会医療保険部会が四月十八日,厚生労働省で開催され,日医からは鈴木邦彦常任理事が出席した.
当日の議題は,(一)社会保障・税一体改革における医療保険制度改革,(二)審査支払機関の在り方─等であった.
(一)では,厚労省事務局より,去る二月十七日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」に基づき,短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大(平成二十八年四月施行)を含む「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が三月三十日の閣議決定を経て国会に提出されていることが報告された.具体的には,(1)週二十時間以上(2)月額賃金七・八万円(年収九十四万円)以上(3)勤務期間一年以上等の要件を満たす場合には適用が拡大され,現行の基準で推計すると約四十五万人が対象となる.この対応により,協会けんぽや国保等においては,約百億円程度の財政改善が見込まれる一方,健保組合においては,約四百億円の負担増が試算されている.このため,医療保険等における激変緩和措置を講ずることも,併せて検討されているとの説明があった.
保険者代表の委員は,法案そのものに反対であり,今回のように医療保険部会等での審議がないまま,法案提出が先行し,事後報告となったことは納得出来ないとし,今後はそうしたことのないよう配慮を求めるとともに,事前に同部会のような場できちんと議論すべきだと強く抗議した.
一方,短時間労働者の社会保険加入は,本来そうあるべきものであり,当分の間,激変緩和措置を講ずることについても十分理解出来るとする意見も出された.
鈴木常任理事は,「日医としては,全ての国民が同じ医療を受けられる制度,全ての国民が支払能力に応じて公平な負担をする制度,そして将来にわたって持続可能な制度というものを理念として掲げている」と述べた上で,人口が減少していく中,高齢者や女性の労働力確保が必要になっていくことから,長期的な視点に立って,財政調整をしながら適用拡大を実現していく必要があるとした.
また,後期高齢者医療制度廃止法案を白紙撤回するとの一部報道についての委員からの質問には,厚労省事務局より,「関係者の理解を得た上で高齢者医療制度改革会議の取りまとめを踏まえ,法案を提出する方針に立っており,その実現に向け調整を進めているところである」との説明があった.
審査支払機関の在り方の議論を開始
(二)では,まず,厚労省事務局より,衆議院決算行政監視委員会が平成二十三年十二月八日,「行政監視に基づく事業の見直しに関する決議」で,「社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会のレセプト審査事務について,審査の効率化を図り,医療費を削減するため,統合に向けた検討を速やかに進めるべき」とし,六カ月以内の報告を求めていることを受け,本部会で議論を行う旨の説明があった.更に,「審査支払機関の統合に関する主な論点」として,(1)統合によるコスト削減,審査の質の向上(2)審査支払機関の役割を踏まえ,どのような組織の在り方が考えられるか(3)統合に関する具体的な検討課題について(4)現在の審査の適正化・効率化,コスト削減等の取り組みとの関係をどのように考えるか─の四つの論点(十二項目)が示された.
鈴木常任理事は,「統合ありき」ではなく,統合した場合あるいは統合しない場合のメリット・デメリットについて,資料を基に議論するよう要望した.本格的な議論は,次回からの予定.
産科医療補償制度の見直しに向けて
その他,産科医療補償制度について,保険者代表の委員から,産科医療補償制度の実施状況を定期的に報告することや,支払準備金の余剰の状況によっては,掛け金の見直しや医療保険者への払い戻しを検討することが要望された. |