日医ニュース
日医ニュース目次 第1221号(平成24年7月20日)

社会保障審議会医療保険部会(6月21日)
次期医療費適正化計画について議論

社会保障審議会医療保険部会(6月21日)/次期医療費適正化計画について議論(写真) 社会保障審議会医療保険部会が六月二十一日,都内で開催され,日医からは鈴木邦彦常任理事が出席した.
 当日の議題は,「医療費適正化計画について」で,資料「次期医療費適正化基本方針等について」に基づき,厚生労働省事務局より説明がなされた.
 医療費適正化計画は,平成二十年度を始期とする一期五年間の計画であり,平成二十五年度より始まる第二期に向け,今年度中に国が「医療費適正化基本方針」を示し,これを踏まえ都道府県において計画を作成.その報告を集約して国が計画を作成する段取りとなっている.
 都道府県が作成する医療費適正化計画は,平成二十三年八月に成立した地域主権改革に関する法律により,「計画期間における医療に要する費用の見通しに関する事項」のみが必須的記載事項とされたため,それ以外の特定健診・特定保健指導の実施率の目標や平均在院日数の短縮に関する目標等については,都道府県の任意的記載事項となり,地域の実情を踏まえた上で目標を設定,若しくは設定しないことが可能となった.しかし,都道府県が地域の実情を踏まえ,任意的に目標等の設定が出来るとは言っても,参考となるデータの提供と分析手法等については,国から情報提供することとしている.

「療養病床の削減」が削除された点は評価─鈴木常任理事

 鈴木常任理事は,「第一期では『療養病床の削減』が盛り込まれたため現場は大混乱した.今回はそれが削除されており,その点は評価出来る」とした上で,「厚労省では『適正化=引き下げ』を意味するようであるが,あくまでも現場の取り組みを反映する適正化であって欲しい」と述べた.更に,国から推計ツールが配付されるが,それが各都道府県の自主性を阻害することのないよう求めた.
 また,平均在院日数の短縮と医療費の削減との関連について,「わが国はもともと入院医療費が低いので,入院医療費の高い諸外国のような効果は期待出来ず,逆に平均在院日数が短くなれば,その分医療密度が上がり,一日当たりの単価が上がることになる.また,高齢化が世界最速のスピードで進んでいるため,新たな入院需要も生まれ,病床の稼働率は低下せず,空床が出来ない状況であり,病床の削減も出来ず,入院医療費としては増えている.更に,医療現場においては,平均在院日数の短縮による弊害も出ており,OECDでは,平均在院日数の短縮により再入院率が上がり,一疾患当たりの費用はほとんど下がらず,上がる場合があるということも指摘されている.わが国においても,特定機能病院において,再入院率が上がっているというデータもある」と述べ,平均在院日数をひとくくりにする見方を改め,現実的な手法を考えるべきと主張した.
 一方,保険者代表の委員からは,「このまま医療費の増加が続けば,保険や国の財政はもたない.医療費の適正化を推進するために,数値目標と具体的な施策を示すことが必要.基本方針案に国としての強い意思が感じられない」「この基本方針案で,医療費の適正化が実現出来るのか疑問.危機的な国家財政に対し,スピード感に欠ける」「国民の健康を守るという,国としての強い意思を持って方針を示す必要があり,例えば,全国民に健診を義務化するといった取り組みも検討すべき」などの意見が出された.

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