日医ニュース
日医ニュース目次 第1222号(平成24年8月5日)

子育て支援フォーラムin岩手
子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して

子育て支援フォーラムin岩手/子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して(写真) 「子育て支援フォーラムin岩手」が七月十四日,日医,SBI子ども希望財団,岩手県医師会の共催により,岩手県医師会館で開催された.
 本フォーラムは,昨年度に開催した「子ども虐待防止フォーラム」から名称変更したものであり,子育て支援と児童虐待防止に向けた啓発活動,情報提供を行うことを目的として,今年度は,今回の岩手県を皮切りに,北海道,岡山県,新潟県の計四カ所で開催することが予定されている.
 当日は,吉田耕太郎岩手県医常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(羽生田俊副会長代読)は,「児童虐待にはさまざまな要因が指摘されており,一朝一夕には解決することは出来ないが,尊い命を守るためにも,地域全体で食い止めなければならない」と強調した上で,本フォーラムがその一助になることに期待感を示した.
 続いて,あいさつした石川育成岩手県医会長は,県内の産婦人科医会,小児科医会との連携により,妊産婦のメンタルヘルスケアに取り組んできたことを説明.
 参加者に対しては,虐待防止に向けて,本日得た知識を各地域で役立てて欲しいと呼び掛けた.

各都道府県に妊娠等悩み相談窓口開設

 その後,今村定臣常任理事を座長として,寺尾俊彦日本産婦人科医会長による特別講演が行われた.
 寺尾会長は,妊婦が容易に相談出来る体制を整備するため,各都道府県に「妊娠等の悩み相談窓口」を開設したことを報告.
 現在の問題点として,(一)晩婚化,夫の育児への非協力により,出産・育児をすべて一人でしなければならない女性が増えている,(二)自分の子どもを諦める年齢が上がってきているため,特別養子縁組の成立が難しくなっている─こと等を挙げ,児童虐待の防止のためにも,これらの問題の解決に向けて努力していく考えを示した.
 引き続き行われたシンポジウム(座長:小林高岩手県産婦人科医会長)では,奥山眞紀子国立成育医療研究センターこころの診療部長が,児童虐待の防止のためには,妊娠期から関わりを持つことが重要になると説明.また,産後の女性を対象にアンケート調査した結果,妊娠期のうつよりも,対人関係がうまくいかないことが子どもの虐待に結び付く可能性の高いことが明らかになったとして,新たな対応が必要だと指摘した.
 秋元義弘岩手県立二戸病院産婦人科長は,周産期医療従事者も比較的安易に対応出来るスクリーニングセット〔エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS),育児支援チェックリスト,赤ちゃんへの気持ち質問票〕を用いて,妊娠中及び産後早期からのメンタルヘルスケアを実施している岩手県の取り組みを紹介.今後も,これまで行われてきた対策の検証などを行いながら,望まない妊娠の減少,健やかな子育ての実現に向けて努力していく意向を示した.
 三浦義孝岩手県小児科医会長は,子育ての目標は子どもの自立にあり,その土台には人への信頼感,自己肯定感が必要となるが,その土台づくりに「抱っこ」が重要な役割を果たしていると強調.
 また,虐待防止のためにも,育てられている時代から,乳幼児と触れ合う経験を増やし,子どもを好きになることが必要だとして,乳児検診の場に小・中・高校生を参加させることを提案した.
 西澤哲山梨県立大教授は,虐待をする親には,子どもの幸せというよりも自分の幸せ,欠けたものを補うために子育てをしている傾向が見られると指摘.
 また,一般的に少子化傾向と言われる中で,子どもを育てられない親が増えている原因として,「妊娠先行結婚」(いわゆる“できちゃった結婚”)の増加が考えられるとし,その場合には,母子家庭になる傾向が強いことから,その支援が今後重要になるとした.
 その後の討議では,百名を超す参加者とシンポジストとの間で,活発な質疑応答が行われ,フォーラムは盛会裏に終了となった.

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