日医ニュース
日医ニュース目次 第1223号(平成24年8月20日)

第8回男女共同参画フォーラム
「変わる〜男女共同参画が啓(ひら)くワークライフバランス」をテーマに

第8回男女共同参画フォーラム/「変わる〜男女共同参画が啓(ひら)くワークライフバランス」をテーマに(写真) 第八回男女共同参画フォーラムが七月二十八日,最高気温三十五・九度の猛暑の中,三百五十九名の参加者を集めて,富山市内で開催された.
 村上美也子富山県医師会理事が開会を宣言.続いてあいさつに立った横倉義武会長は,男女共同参画の更なる推進のためには,男性の意識改革と同時に女性にも変革が求められていると指摘.その上で,医療政策・社会保障政策を推進していくためには男女共同参画の視点は不可欠との認識を示し,引き続き,医師が男女を問わずワークライフバランス(以下,WLB)を実現し,医師としての使命を全う出来るよう環境整備に努めていくので,協力願いたいとした.
 岩城勝英富山県医師会長は,「医師不足や事務作業量の増大等により,地域医療が崩壊の危機にある中で,女性医師の離職防止が問題解決の鍵となっている」として,女性医師の勤務継続支援・復職支援の重要性を強調.本フォーラムの参加者が全国各地で地域社会や行政に働き掛けることで大きな動きにつながることに期待感を示した.

基調講演

 基調講演「医療機関におけるWLB」では,国内七百社,海外百社のWLB・ダイバーシティ(多様性:以下,DIV)先進企業を訪問ヒアリングしてきた渥美由喜氏(厚生労働省政策評価に関する有識者会議委員/東レ経営研究所DIV&WLB研究部長)が,WLBの三要素として,(1)業務をオープンにして共有化(2)絶えざる業務改善(3)お互い様,思いやり―を挙げ,英国で二〇〇六年度WLB企業ナンバーワンを受賞した王立協会病院等を例に,医療機関がWLB,DIVに取り組む意義や対応策について紹介した.
 また,人命を扱うためプライベートを犠牲にして職務を優先し,夜間も業務があるという業界特性を持つ医療機関にとって,成功の鍵は,「業界・院内の文化(認識)を変える」ことで,制度より風土づくりが重要だと指摘.更に,今後の人口減社会では,WLBの推進により,制約がありながら働く人たちの視点で業務プロセスの効率化を図りつつ,より質の高い業務を追求していくべきとした.

報告

 報告では,まず,小笠原真澄日医男女共同参画委員会委員長が,日医男女共同参画委員会の役割や平成二十二・二十三年度の答申の内容等について概説.秋葉則子日医女性医師支援委員会委員長は,女性医師支援センターのさまざまな取り組みや女性医師バンクの運用状況を説明するとともに,「二〇二〇.三〇」推進懇話会を一月二十七日に開催したこと等を紹介した.

パネルディスカッション

 引き続き,四人のパネリストがそれぞれの立場で講演を行った.
 藤巻高光氏(埼玉医大脳神経外科教授)は,小児科医で免疫学者の妻と脳外科医である自身が,二年半の米国留学研究生活を経ながら家事・育児を行ってきた半生について説明.また,アンケート調査の結果,三十一年前の卒業生には「女性医師問題」への意識はあまりなかったが,現在の医学生はある程度意識しており,今後の環境整備が重要で,お互いを認め合い,それぞれの良さを生かすことがDIVにつながるのではないかと述べた.
 小川加奈子氏(富山赤十字病院内科)は,妊娠・出産を経て復帰した自身の経験から,働き方を変えて仕事を継続することは,上司・同僚・家族・社会全体といった周囲の理解,許容(忍耐),協力がなければ成り立たないとした.
 市田蕗子氏(富山大医学部小児科准教授/同大学附属病院診療教授)は,院内保育所,病児・病後児保育室の開設等の環境整備により,女性医師のほぼ全員が職場復帰している富山大学の現状を報告する一方,日本循環器学会や日本小児科学会を対象としたアンケート調査結果を基に,育児や勤務環境に対する意識を変える必要性を指摘した.
 清野佳紀氏(日医男女共同参画委員会委員/大阪厚生年金病院名誉院長)は,大阪厚生年金病院のWLB改善への取り組みを紹介.医療現場のWLBを守るためには,(1)子育て支援制度(2)短時間正社員制度(3)主治医制の見直し(4)チーム医療やシフト制(5)開業医を含めた地域連携(6)職員の大幅な増員等が重要とした.

宣言の採択

 コメンテーターとして小森貴常任理事が加わった総合討論では,フロアから寄せられた質問を基に活発な議論が行われた.その後,南里泰弘・村上美也子両富山県医師会理事が,医師のWLBが,安全な医療システムの持続に不可欠であるという意識を啓き,男女共同参画を更に推進することを宣言した「日本医師会第八回男女共同参画フォーラム宣言(案)」を読み上げ,満場一致で採択された(下記参照)
 その後,次期担当医師会の小田悦郎山口県医師会長のあいさつに続いて,泉良平富山県医師会副会長が閉会を宣言し,フォーラムは終了となった.なお,次回のフォーラムは,平成二十五年七月二十七日に,山口市内で開催される予定.

宣 言

 医師は,その使命感から,過重労働による様々なリスクに自主努力で対峙している.
 男女共同参画を推進してきたことで,我々は医師のワークライフバランスが,安全な医療システムの持続に不可欠であるという意識を啓いた.
 我々医師は,以下の共通認識を持ち,男女共同参画をさらに推進することをここに宣言する.
一,男女共同参画は,男女問わず,意欲と能力に応じた特性を活かすことによって,医学・医療に求められるダイバーシティ(多様性)を生み出すものである
一,ワークライフバランスの推進は,医療安全と医療の質の向上のための行動である
一,男女共同参画のさらなる推進のためには,医師の協働,必要な社会保障費の確保,および国民を巻き込んだ議論と啓発が必要である

平成24年7月28日
日本医師会第8回男女共同参画フォーラム

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