日医ニュース
日医ニュース目次 第1228号(平成24年11月5日)

第56回社会保険指導者講習会
「実践 小児・思春期医療」をテーマに

第56回社会保険指導者講習会/「実践 小児・思春期医療」をテーマに(写真) 第五十六回社会保険指導者講習会が十月四,五の両日,日医と厚生労働省との共催により,日医会館大講堂で開催された.
 小森貴常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつを行った横倉義武会長は,小児科医が不足する中,地域医療においては,小児科以外の医師も,かかりつけ医として小児の医療に尽力していることに謝意を表し,小児医療を社会全体で支援していく取り組みが求められるとした.
 その上で,近年の医療改革に触れ,「改革が繰り返される度に,日本の地域医療は改善されるどころか悪化し,地域間の格差も生まれてきている.これは,財政のつじつま合わせに力点が置かれてきたこともあるが,最大の原因は,それぞれの地域によって異なる医療提供体制をきめ細かく把握し,それを反映させた医療政策を実施してこなかったことにある」と指摘し,日医として,各医師会から地域の実態を汲み上げ,国に具体的な実現を迫るとともに,改善に必要な財源の確保を求めていくとの姿勢を示した.
 続いて,木倉敬之厚労省保険局長があいさつし,午前は,(一)わが国の小児医療の現状と問題点,(二)子どもの診療の進め方,午後は,(三)子どものアレルギー疾患の診断と治療,(四)呼吸困難をきたす子どもの感染症の診断と治療,(五)子どもの痙攣(けいれん)・意識障害の診断と治療,(六)思春期の子どもの性の問題―について講演と質疑応答が行われた.
 二日目は鈴木常任理事の司会で,午前は,(一)改善しつつあるわが国の予防接種体制,(二)外来でよく見る子どもの感染症,午後は,(三)子どもの心臓病の診断と治療,(四)思春期の子どものこころの問題と対応―と題した講演と質疑応答が行われた.
 午後に行われた厚労省関係の講演では,まず原壽厚労省医政局長が,「日本の医療提供体制の現状と課題」と題して講演した.
 同局長は,高齢になるほど有病率が高くなることから,「団塊の世代が高齢者になっていく段階で,病気の増え方はその何倍かになっていく」とし,それを見据えた医療提供体制のあり方を考えることが大きな課題だとした.ただし,病床を増加させることについては現実的でないとの見方を示し,患者ニーズに応じた病院・病床機能の役割分担や,医療機関間,医療と介護の連携強化など,医療・介護機能の再編を図る必要性を強調.医師の養成数については,もう少し増やすべきだとする一方,むやみな増加は,将来,日本の人口が減った際,失業につながるとして,女性医師への子育て支援の充実や医療クラークの活用などを推進すべきだとした.
 続いて,宇都宮啓保険局医療課長が,「地域包括ケアシステムと医療・介護の連携」と題して講演し,「制度改正ごとに政策が変わるとの批判もあるが,住まいを中心に医療・介護・保健・福祉等のケアを受けられる地域包括ケアシステムを二〇二五年に実現させることが国の目標である」と説明.平成二十四年度の診療報酬・介護報酬の同時改定でもその方向付けを行ったが,今後もそれを目指して制度改正を行うとして,住民のニーズを踏まえつつ,医療提供者として地域での役割を考えていくことを求めた.
 最後に,中川俊男副会長が総括し,「今後の日本の医療のあり方について国が示す方向性が誤っていれば,日医は正していかなくてはならない」として,社会保障制度改革を巡る懸案事項を取り上げ,解説を行った他,八月に成立した「社会保障制度改革推進法」や消費税の社会保障財源化の問題点を指摘.国民皆保険を守るということは,全ての国民が公的医療保険に加入した上で,(一)公的な医療給付範囲を将来にわたって維持する,(二)混合診療を全面解禁しない,(三)営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させない―という三点が担保されることだと強調した.

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