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第1230号(平成24年12月5日) |
平成24年度(第43回)全国学校保健・学校医大会
「子どもたちの健やかな成長を願って」をメインテーマに

学校医等を表彰する横倉会長 |
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平成二十四年度(第四十三回)全国学校保健・学校医大会(日医主催,熊本県医師会担当)が十一月十日,「子どもたちの健やかな成長を願って」をメインテーマとして,熊本市内で開催され,日医からは,横倉義武会長始め,今村聡副会長,今村定臣・小森貴・石川広己・道永麻里各常任理事が出席した.
当日は,午前に五つの分科会〔「『からだ・こころ(一)』こころ・心臓・腎臓・実態調査」「『からだ・こころ(二)』健康教育・生活習慣」「『からだ・こころ(三)』運動器検診・スポーツ傷害」「耳鼻咽喉科」「眼科」〕を開催.各会場には,立ち見が出るほどの参加者が集まり,研究発表並びに活発な討議が行われた.
引き続き行われた都道府県医師会連絡会議(写真右)では,次期担当を秋田県医師会とすることを決定.坂本哲也秋田県医師会副会長より,「子どもは希望 未来は力」をテーマとして,来年十一月九日に秋田市内で大会を開催する旨の説明が行われた.
学校保健活動に対する長年の貢献を顕彰
午後からは,まず,開会式と表彰式が行われた.
開会式であいさつした横倉会長は,子どもたちが直面する問題が多様化・複雑化する中で,子どもたちが安心して学校生活を送るためには,学校のみならず,家庭や地域も一丸となった取り組みが不可欠だと強調.参加者に対しては,「学校医がなすべきことは何かという学校保健の原点に立ち返り,建設的な議論をして頂き,その成果を地域の学校保健活動に反映してもらいたい」と述べた.
表彰式では,長年にわたり学校保健活動に貢献した九州ブロックの学校医,養護教諭,学校関係栄養士各八名の代表者に対して,横倉会長から表彰状と副賞を,福田稠熊本県医師会長から記念品を,それぞれ贈呈.受賞者を代表して,緒方俊一郎前熊本県医師会理事から,今回の贈賞に対する感謝と引き続き子どもたちの健全な発育に取り組んでいく旨の謝辞が述べられた.
子どもの二極化を危惧─水田熊大大学院教授
引き続き,「現代の子どもたちの『身体の二極化』について考える〜運動器検診と小児生活習慣病検診への取り組み〜」をテーマとしたシンポジウムが行われた.
「子どもの体と運動」と題して基調講演を行った水田博志熊大大学院教授は,現代の子どもの運動習慣について,「ほとんどしない子ども」と「甲子園やJリーグなどを目指して,加熱したスポーツ環境の中にいる子ども」の二極化が見られると指摘.また,その二極化が子どもたちの体力の低下や生活習慣の乱れ,スポーツ外傷傷害の多発等の問題を引き起こしているとして,「早寝早起き運動の推進」「運動指針やガイドラインの整備」「学校運動器検診の導入」等による早期の対応を求めた.
三人のシンポジストによる発表では,まず,梅田修二おぐに整形外科医院長が,運動器検診の普及のため,平成二十年度から三年間にわたって行ったモデル事業等の結果を報告.今後の課題として,(1)教育委員会や内科系の学校医に運動器検診の重要性を認識してもらうこと(2)運動器検診マニュアルの作成等,効率よくスクリーニング出来る体制の確立―等を挙げた.
中村公俊熊大医学部附属病院講師は,熊本市で小学四年生を対象に実施している「小児生活習慣病予防検診」を紹介.小児期の肥満は,成人期の疾患発症リスクにもつながるとして,小児期からの積極的な介入の意義を強調するとともに,検診に当たっては,子どもたち自身に肥満であることを自覚させることが重要になるとした.
吉野栄治山鹿市立山鹿中学主幹教諭は,中学校で実際に野球指導をしている立場から,現在の子どもの特徴として,肩甲骨,股関節,足首の可動域が狭いことを挙げ,その原因として,外遊び時間の減少があると指摘.子どもたちの健全な育成のためにも,今後は,学校のスポーツ指導者と専門医との密接な連携が必要との考えを示した.
今求められているのは「悩む力」─姜東大大学院教授
その後の特別講演「悩む力―意味への意志について」では,姜尚中東大大学院教授が,日本の現状について,全体に閉塞感が漂い,いつ何が起きるか分からない,極めて不確実で危険な状況にあると指摘した.
また,この閉塞感を打破するため,声高に市場化の導入を求める人がいるが,「市場化は劇薬であり,それは誤りだ」とした上で,今必要なことは「悩む」ことであると強調.悩むことで,人間には本当の意味での生きる力(情熱)が生まれてくるとして,医師にはその手助けをしてもらいたいとした.
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