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第1232号(平成25年1月5日) |
「有床診療所の日」記念講演会
「身近な入院施設・有床診療所」をテーマに

日医及び全国有床診療所連絡協議会共催の「有床診療所の日」記念講演会が昨年十二月九日,約三百名の参加者を集めて,日医会館大講堂で開催された.
藤川謙二常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は,有床診療所の起源とされる小石川養生所が舞台となった,映画「赤ひげ」を取り上げ,“ヒポクラテスの誓い”に基づく医師の倫理がストーリーに巧みに描かれていると説明.「特に,有床診療所の医師は情熱のある医師であり,一般の方も本日の講演を聞いてぜひとも理解を深めて欲しい」と述べた.
続いて葉梨之紀全国有床診療所協議会長(日医常任理事)と宇都宮啓厚生労働省保険局医療課長(森桂課長補佐代読)からあいさつが述べられた.
健康落語
立川(たてかわ)らく朝(落語家・医師)氏が「内緒のパーティ」と題した落語を披露.糖尿病を患い入院し,日頃食事制限されている患者たちが,担当医に内緒で深夜にパーティを開くというオリジナルの落語.立川氏の軽妙な話術に会場からも大きな笑いが起きた.
健康落語を披露する立川らく朝氏 |
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「有床診療所の日」の由来を説明
講演では,田中秀一読売新聞東京本社論説委員,松村誠日医有床診療所に関する検討委員会副委員長が座長となり,木村丹全国有床診療所連絡協議会常任理事から,「有床診療所の日」が十二月四日となった根拠について,江戸時代の歴史を記した書物『徳川實紀』を基に,小石川養生所が享保七年(旧暦の一七二二年)同日に開設されたことによるものとの説明があった.
有床診療所の紹介
続いて,三地域にある有床診療所の活動が映像を交えながら紹介された.
馬原医院(徳島県阿南市)からは,地域で医療を提供しながら研修医の育成なども活発に行っているとの説明があった他,地域医療の最後の砦として存続させるために必要なこととして,(一)有床診療所の病床機能を正しく評価,(二)人材,病床区分の規制緩和,(三)多剤投与の薬剤料算定―などが挙げられた.
森整形外科(広島県広島市)では,患者の家族の話を含め,入退院のエピソードを紹介.患者にとって有床診療所は,身近に医療を受けられる伴走者であり,各地域に多くの有床診療所が設立されることを願うとした.
たいとう診療所(東京都台東区)からは,訪問看護ステーションや介護事業所と連携している様子や更に,理念として,(一)人間の尊厳の保持,(二)自己決定権の尊重,(三)地域リハビリテーションの推進―を掲げ,患者の自立を目指した医療が行われている状況が紹介された.
ディスカッション
ディスカッションでは,小林博岐阜県医師会長(日医有床診療所に関する検討委員会委員長),渡邉俊介東京女子医科大学客員教授(元日本経済新聞社論説委員),江口成美日医総合政策研究機構主席研究員,立川氏の四名のコメンテーターが登壇し,有床診療所についてディスカッションが行われた.
小林岐阜県医会長は,有床診療所を次の世代にどのように継承していくかを考え,有床診療所が地域医療の中核となるように,住民から地域のケア会議などに意見を寄せて欲しいとした.
渡邉教授は,「社会保障と税の一体改革」では,これからの医療が病院完結型から地域完結型に変化していくとされたことから,有床診療所の役割は極めて重要になるとする一方,入院基本料などの格差により,このままでは有床診療所が存在しなくなってしまうのではないかと危惧を示した.
江口主席研究員は,有床診療所のうち四分の一が産婦人科であり,全国の出産の半分は,産科の診療所で行われていることを紹介.有床診療所を社会資源として維持するため支援していくべきとし,住民には大病院志向ではなく,有床診療所の活用も考えて欲しいと述べた.
立川氏は,有床診療所は寄席のようであると表現し,身近な娯楽として各町内に一つは存在していた寄席のように,気楽に受診出来る有床診療所を減らしてはいけないと訴えた.
指定発言として,近藤太郎東京都医師会副会長が,「有床診療所は地域に根差しており,患者や家族に医師が寄り添う姿勢が感じ取られた.これからは,地区医師会でチームを組み,各診療所が協力して“面で診る医療”をつくり上げていくべき」と発言.最後に,鹿子生健一全国有床診療所連絡協議会副会長のあいさつにより閉会した.
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