日医ニュース
日医ニュース目次 第1237号(平成25年3月20日)

勤務医のページ

勤務医と開業医は適切に区分出来るか?
岡山県医師会副会長 清水信義

 平成二十四・二十五年度日本医師会勤務医委員会に対する横倉義武会長からの諮問は「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」である.勤務医の日医への加入率が低いことはよく話題に挙げられ,日医は開業医の集まりであるとの評価も聞くところである.日医の会員区分で見ると,開業医と勤務医の数に大きな差がないのに,このような評価がなされているのはなぜであろうか.会員の意見を代表する代議員に占める勤務医の割合が一二・六%にとどまり,更に日医の理事など役員には,開業医や私的病院の勤務医が多いのはなぜであろうか.

日医の会員区分

 それには,分かりにくい日医の会員区分を整理してみる必要がある.会員区分からみると,
 (一)A(1)会員:病院・診療所の開設者,管理者及びそれに準ずる会員(八万四千五十一人,五〇・七%)
 (二)A(2)会員(B):上記A(1)会員及びA(2)会員(C)以外の会員(三万八千二百三十二人,二三・一%)
 (三)A(2)会員(C):医師法に基づく研修医(八百四十二人,〇・五%)
 (四)B会員:上記A(2)会員(B)のうち日本医師会医師賠償責任保険加入の除外を申請した会員(四万千八百五人,二五・二%)
 (五)C会員:上記A(2)会員(C)のうち,日本医師会医師賠償責任保険加入の除外を申請した会員(七百二十人,〇・四%)
 従って,A(1)会員を除いたA(2)(B,C)会員とB会員とC会員がおおむね研修医を含めた勤務医となり,その総数は八万千五百九十九人(四九・三%)となる.この分類による勤務医は,開設者以外の医師は全て勤務医となることから,親子で開業などの場合,開設者以外は勤務医に含まれ,数の上では大規模病院等の勤務医と同じ扱いになる.逆に勤務医であるが公的な病院の院長などは勤務医扱いでなくなる.
 ちなみに,A(1)会員は平成二十二年度に比べ微減,B会員は微増している.
 日医会員の総数は平成二十四年十二月一日現在で,十六万五千六百五十人である.
 厚生労働省統計と比較出来る平成二十二年度でみると,日医会員数は十六万五千八百四十一人で,厚労省の平成二十二年十二月三十一日現在における全国の届出「医師数」は二十九万五千四十九人であるので,全医師に対する日医の会員の割合は五六・二%,同調査の医療施設に従事している者に限ると五九・一%である.

厚労省の統計との比較

 厚労省大臣官房統計情報部「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると,平成二十二年十二月三十一日現在における全国の届出「医師数」は二十九万五千四十九人となっている.ちなみに,平成二十二年届出医師数を平成二十年と比べると八千三百五十人,二・九%増加している.また,人口十万対医師数は二百三十・四人で,前回に比べ五・九人増加している.
 厚労省への届け出から医師が主として従事している業務の種別をみると,「医療施設の従事者」は二十八万四百三十一人(総数の九五・〇%)で,前回に比べ八千五百三十四人,三・一%増加している.「介護老人保健施設の従事者」は三千百十七人で,前回に比べ二十二人増加し,「医療施設・介護老人保健施設以外の従事者」は八千七百九十人で百三十三人減少している.
 医療施設の従事者,約二十八万人のうち,病院の従事者は十八万九百六十六人で全医師の六一・三%になる.更にこの中で,病院(医育機関附属病院を除く)開設者または法人の代表者は,五千四百三十人(一・八%),病院(医育機関附属病院を除く)の勤務者十二万六千九百七十九人(四三・〇%),医育機関附属病院の勤務者は四万八千五百五十七人(一六・五%)である.
 医育機関附属病院における臨床系の教官または教員は二万五千八百六十二人(八・八%)であるが,その処遇は臨床系でも教育職として低く抑えられており,特に,国立大学では震災復興のため,平成二十四・二十五年度の給与を平成二十二年度比で平均七・八%程度引き下げるよう求められている.
 一方,診療所の従事者は九万九千四百六十五人(三三・七%)であり,そのうち診療所の開設者または法人の代表者は七万二千五百六十六人(二四・六%),診療所の勤務者は二万六千八百九十九人(九・一%)である.

結論としては

 厚労省の統計による診療所の開設者等七万二千五百六十六人に対し,日医のA(1)会員は八万四千五十一人であるが,A(1)会員には病院開設者や管理者等が含まれていることから,全てが開業医ではない.このように見ると,日医の会員区分が必ずしも勤務医と開業医の区分を明確に表したものではないことが分かる.
 勤務医については,病院勤務医と診療所勤務医,更に医育機関,公立病院,独立行政法人,社会保険関係病院,そして医療法人などにより,かなりの差があることも念頭に置きながら勤務医問題を考える必要がある.

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