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第1238号(平成25年4月5日) |
平成24年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会
看護職員の不足解消と質の確保を巡る課題等について協議

平成二十四年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会が三月十五日,日医会館小講堂で開催された.
冒頭,あいさつに立った横倉義武会長は,医療現場における看護職員の不足は深刻な状況にあり,ゆゆしき事態であると指摘.二〇一二年現在,約百四十万人の看護職員が現場に従事し,そのうち准看護師は約三十八万人が就業している.准看護師は看護師と共に地域医療において非常に重要な役割を果たしており,地域医療確保の観点から,現在の准看護師養成制度は必要だとして,全国各地域の医師会立看護師等学校養成所の運営について今後も強く支援していく考えを示した.
更に,同日夕刻に,TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加問題に関して安倍晋三総理が記者会見を行うとの報道があることに触れ,日医はかねてからTPP交渉参加によって国民皆保険が毀損(きそん)されることに懸念を表明してきたと説明.「今後の交渉の行方を十分注視していくとともに,もし日本の国益に反すると判断された場合には,TPP交渉から速やかに撤退するという選択肢をもって交渉に臨むよう求めていく」と述べた.
当日は,まず,岩澤和子厚生労働省医政局看護課長が,「看護職員を巡る最近の動向について」と題して,看護職員就業者数の推移や,就業場所別就業者,看護教育制度等について報告.看護職員就業者数については,平成二十三年の看護職員全体では百四十九万五千五百七十二人と,十年前と比較すると二十六万二千七十六人の増(看護師は二十八万六千九百六十二人の増,准看護師は四万三千六百五十一人の減)であり,就業場所別では,病院六二%,診療所二一%の他,助産所,介護老人保健施設,訪問看護ステーション,社会福祉施設,介護老人福祉施設,保健所など,就業場所や働き方の多様化がみられるとした.
更に,学校養成所数が増加し,学校種別・入学前経験・一般基礎学歴等が多様化し,男子学生が増加するなど,多様性の時代における看護職員の質の確保が重要な課題であると指摘した.その上で,(一)定着促進,(二)再就業支援,(三)養成促進─の三つの柱で施策に取り組んでいるとして,平成二十五年度予算案における主な看護職員確保対策事業について説明した.
また,各都道府県医師会から厚労省に対して寄せられた,(1)准看護師制度の今後の方向性についての見解(2)実習施設の確保(3)養成所の入学定員の緩和(4)実習施設・実習内容の要件(5)養成所の専任教員定数─などに関する質問・意見に対し,岩澤課長は,准看護師は地域医療を支える重要な担い手であり,今の看護職員需給見通しで准看護師養成所をなくしてしまうことは考えられないと強調.また,入学定員について,複数年にわたり大幅に超過する場合は,学則を変更して対応して欲しいとするとともに,臨地実習の具体例に関する事務連絡を発出したことや,実習施設・実習内容の要件や専任教員定数については,次回の看護師等基礎教育のカリキュラム改正時に合わせて検討したいなどと回答した.
次に,川嶋みどり健和会臨床看護学研究所長・日本赤十字看護大学名誉教授は,「看護の今とこれから」と題し,六十二年間看護師として,看護の自立を目指してきた自身の経験を踏まえて,チーム医療と保助看法を再考.二大看護業務である「診療の補助」と「療養上の世話」について考察し,特に後者における「自然治癒力」を引き出す看護の力の重要性を強調,看護師の業務範囲の拡大については,たとえ研修したとしても医療安全は保てないということで,特定行為に係る看護師の研修制度には反対の立場を示した.
続いて,江口成美日医総研主席研究員は,「医師会立看護学校における看護学生の喫煙に関する現状調査」の結果と分析について報告を行った.
本調査は,(1)医師会立看護師・准看護師養成学校における喫煙の現状を把握する(2)看護学生の禁煙支援のニーズと看護学校での禁煙教育の現状を明らかにする─ことを目的に,平成二十四年十一〜十二月,全国の医師会立看護学校在校生と学校(全国二百七十三校,三万三千六十七名)を対象に実施.看護学生調査の回答者は,学校二百五十九校(回収率九四・九%),学生三万千百二十四人(回収率九四・一%,男一八・七%,女八〇・九%,無回答〇・四%),看護学校調査の回答者は,学校二百四十二校(回収率八八・六%)であった.
江口主席研究員は,看護学生の喫煙率が,女子一五・八%,男子三五・八%であったことなど,調査結果を説明し,「看護学生の禁煙は,看護師,ひいては国民全体の禁煙と健康につながり得る」「医師会立看護学校の今後の禁煙教育において医師会のより積極的な関与が望まれる」と結んだ(詳細は,日医総研ワーキングペーパーNo.276参照).
藤川謙二常任理事は,看護大学の増加により,国立病院附属や日赤の養成所(看護師三年課程)の数が半分以下に減っており,更に,看護大学,養成所(三年課程)の平成二十四年三月の卒業生の進路については,看護大学で九九・八%,養成所で九九・四%が「病院」に就業している現状を報告.また,「新人看護職員研修における新人准看護師の技術到達目標の目安(試案)〜たたき台〜未定稿」を中間報告として資料提出し,説明した.
最後に,事前に寄せられた,各都道府県医師会からの質問・意見に対して,同常任理事がそれぞれ回答を行い,閉会した.
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