日医ニュース
日医ニュース目次 第1244号(平成25年7月5日)

医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)答申まとまる
医療事故調査制度の実現に向けての具体的方策を提案

寺岡委員長から答申を
受け取る横倉会長(左)
 医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)は,このほど,会長諮問「医療事故調査制度の実現に向けた具体的方策について」に対する答申を取りまとめ,六月七日に担当の高杉敬久常任理事が同席の下,寺岡暉委員長(寺岡記念病院理事長)から横倉義武会長に提出した(写真)
 答申の内容は,(一)医療事故調査制度の趣旨と考え方,(二)医療事故調査制度の体制,(三)医師法二十一条の改正─の三つの柱で構成されている.
 (一)では,医療行為に関連した予期しない死亡事例が発生した場合,原因究明及び再発防止を図る体制・制度を医療界が自律的に構築・運営することが必要であると指摘するとともに,むやみな刑事介入を防ぎ,医療者が安心して医療に取り組める体制づくりを求めている.
 (二)では,医療事故調査制度の実現に向けての具体的方策として,
 I.全ての医療機関に「院内医療事故調査委員会」を設置・運営
 II.Iの体制を支援するため,地域に連携組織(「地域医療安全調査機構」,「地域医療事故調査委員会」,何れも仮称)を設置・運営
 III.I,IIに加えて,更なる医学的調査や再発防止策の策定に向けた活動を全国レベルで行うため,第三者組織(「中央医療安全調査機構」,「中央医療事故調査委員会」,何れも仮称)を設置・運営
 ─する三段階方式を提案.
 具体的には,有害事象へ素早く対応するためにも,全ての医療機関に院内医療事故調査を行う体制を構築するとともに,地域ごとに医師会や大学病院,医療団体などが参画する第三者性を備えた連携組織を設けることを提言.その上で,地域で原因究明に至らなかった事案については,全国レベルで検証し,再発防止についての提言を行うため,日医,日本医学会,大学病院,病院・医療団体等,医療界が一体となって組織・運営する第三者機関を中央に設置するとしている.
 (三)では,近年の医師法二十一条の運用のされ方は,委縮医療という負の影響をもたらしたとした上で,この問題の解消なくしては,医療界の自律的な医療事故調査制度の具体化は進まないと指摘.今後については,医師法二十一条の改正を目指しながらも,医療事故の自律的な調査を率先して行い,その結果,厚生労働省や警察庁との間で同法の解釈について一定の明確なコンセンサスが得られるようになれば,同条の本来の趣旨にかなうことになるとしている.
 答申が取りまとめられたことを受けて,六月十二日に記者会見を行った高杉敬久常任理事は,厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」で取りまとめられた報告書(五月二十九日)との違いについて,「第三者機関の設置の在り方で本報告書と相違はあるものの,大筋では考え方を共有している」とした上で,「今後,厚労省のガイドラインなどが作成される際には,本答申を基に日医から提言を行っていきたいと考えている.どのように盛り込まれるのか注視していきたい」と発言.
 また,本答申の内容については,「医療界の中でもさまざまな意見があり,一〇〇%の合意は得られていない」と改めて強調した上で,更なる合意に向けて,引き続き努力していく考えを示した.

医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)

水谷 匡宏(北海道医常任理事)
橋本  省(宮城県医常任理事)
橋本 雄幸(東京都医理事)
石渡  勇(茨城県医副会長)
二井  栄(三重県医常任理事)
松原 謙二(大阪府医副会長)
清水 信義(岡山県医副会長)
堤  康博(福岡県医専務理事)
寺岡  暉(寺岡記念病院理事長)
有賀  徹(昭和大学病院院長・全国医学部長病院長会議理事)
神野 正博(全日病副会長・四病院団体協議会)
鈴木  厚(川崎市立井田病院地域医療部長)
坂井かをり(NHKエデュケーショナル科学健康部シニア・プロデューサー)
畔柳 達雄(日医参与)
奥平 哲彦(日医参与)
手塚 一男(日医参与)
【高杉常任理事・医事法・医療安全課】

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