日医ニュース
日医ニュース目次 第1246号(平成25年8月5日)

石井常任理事に聞く
会員等の声を基にJMAT携行医薬品リストの完成を目指す

 日医は,この程,「JMAT携行医薬品リストVer.1.0」を作成し,公表した.そこで,今号では,救急災害医療担当の石井正三常任理事に,リストの内容や今後の日医の対応等について説明してもらった.

石井常任理事に聞く/会員等の声を基にJMAT携行医薬品リストの完成を目指す(写真) 一昨年の東日本大震災の際には,多くの医療関係者にJMAT活動にご参加頂いたわけですが,その送り手である医師会や医療機関等からは,「どのような医薬品を携行させれば良いのか分からなかった」という声を多数頂きました.
 また,今後起きると言われている首都直下型地震,そして南海トラフ巨大地震では,三〜七日,状況によっては一カ月以上,薬剤の不足及び供給低下が予想され,それまでの間は携行する薬剤で初期の避難所の巡回診療や被災者への医療活動を行うことが求められると言われています.
 これらの状況を踏まえて,日医では,JMATが被災後一週間以内に被災地へ支援に行く場合,その初期に準備する薬剤の指針を作成しようということになり,救急災害医療対策委員会の下に災害医療小委員会を設けて,検討を開始しました.
 小委員会では,昨年十月の初会合以来,稲坂博委員長(愛知県医師会理事)を中心に,救急災害医療対策委員会の委員五名の他,専門的な意見をお聞きするため,日本薬剤師会(日薬)の永田泰造常務理事,日本精神科病院協会の千葉潜常務理事,長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授にもご参加頂き,精力的に検討を行って頂きました.その結果,取りまとめられたものが,今回の医薬品リストとなります.

薬剤選定に当たっての三つのコンセプトとは

 東日本大震災時の避難所では,被災者から,「普段のようにいつものお薬が欲しい」と依頼されることが多かった他,「風邪薬,口内炎の薬の依頼だけではなく,不眠になった被災者から眠ることが出来るようなお薬が欲しい」といった依頼もあったと聞いています.
 このように多岐にわたる被災者への支援を可能とし,軽量コンパクトに,そして現場で迅速に処方出来るよう,今回のリストの作成に当たっては,(1)大多数の医療従事者が知っていて扱いやすいこと(2)値段が安価であること(3)流通上のフローとストックで確保しやすいこと―の三つをコンセプトとして,薬剤の選定を行いました.
 セットの内容についてですが,今のところは,「A:成人基本セット」「B:精神科セット」「C:妊婦緊急搬送キット」「D:小児科セット」「E:簡易診断セット」「F:緊急用薬剤セット」「G:消毒関係」の七つとなっていますが,福島第一原子力発電所事故のようなケースや生物関係のテロを想定して,「H:特殊災害関係」の作成も現在検討しているところです.
 今回のセットの想定ですが,例えば,「A:成人基本セット」で言えば,およそ千人規模の地域の避難所(五カ所程度)へ支援に行き,三百人程度を診察,一人当たり最大三日分処方する状況が一週間続いた場合を想定し,策定したものになっています.

今回のリストはあくまでバージョン一・〇

 今回のリストはバージョン一・〇としていることからもお分かりのように,完成品というわけではなく,あくまでも大まかな薬剤の指針を示したものに過ぎません.
 季節・災害の種類・感染症情報などにより,薬剤の種類や数量は変わってきますし,地域ごとの特性もあるでしょうから,各学会から出されるガイドラインや,会員の先生方等の意見を踏まえ,随時バージョンアップをしていきたいと考えています.リストの全文は,日医のホームページに別掲のように掲載しておりますので,会員の先生方には,ぜひリストをご覧頂き,下記の宛先までご意見・ご提言をお寄せ頂きたいと思います.
 また,今後についてですが,ICT(情報通信技術)の活用による効率的な薬剤や支援物資の供給のため,日医とJAXAによるデモンストレーション及び衛星利用実証実験に関する協定も踏まえ,クラウド型災害医療情報システムの普及も併せて推進していかなければならないと考えています.
 更に,今回のリストは,日薬と協力して安定した薬剤供給体制の下,システムとして対応することを目指していますので,地域の医師会と薬剤師会との連携により,各薬剤師会がリストに基づく医薬品を備蓄し,災害時には薬剤師がこれを携行してJMATと同時出動・合流する仕組みも検討していく所存です.
 いずれにしましても,JMAT活動は,会員の先生方のご支援・ご協力なしには成り立たないものですので,引き続きのご支援・ご協力の程,お願い申し上げます.

「JMAT携行医薬品リストVer.1.0」は,日医ホームページのトップページ東日本大震災関連情報→JMAT携行医薬品リストの順にアクセス頂きますと,ご覧頂けます.

 

ご意見・ご提言を募集中

 日医では,この程作成した「JMAT携行医薬品リストVer.1.0」をより使いやすいものにするため,会員の先生方のご意見・ご提言を募集しています.下記宛て,お送り下さい.

送付先:日医地域医療第一課
メール 
FAX 03-3946-2140(直)

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