日医ニュース
日医ニュース目次 第1250号(平成25年10月5日)

日医・四病協 特定除外に該当する入院患者実態調査結果を公表
医療現場の実態に基づいた長期入院のあり方の検討を

 日医と四病院団体協議会(四病協)は,9月18日に合同記者会見を行い,両団体が共同で実施した「特定除外に該当する入院患者実態調査」の結果を公表.厚生労働省に対して,本調査の結果や,両団体が合同提言した「医療提供体制のあり方」に基づき,現場の実態を踏まえた改革に方向転換することを求めた(調査結果の詳細は日医ホームページ参照).

左から中川副会長,相澤日病副会長,
猪口全日病副会長

 特定除外制度(一般病棟入院基本料七対一,十対一を算定する病棟に九十日を超えて入院する患者のうち厚労大臣が定める状態等にある患者は,特定入院基本料の算定対象から除かれるとともに,平均在院日数の算定対象とならない)に関しては,二〇一二年度の診療報酬改定で,一般病棟入院基本料十三対一,十五対一で廃止され,七対一,十対一においても,長期入院の実態把握をした上で,適切な評価について検討を行うとされた.
 これを受けて,中医協の下には,入院医療等の調査・評価分科会が設置され,二〇一二年度には一般病棟入院基本料七対一,十対一を算定する病院を対象とした長期入院の実態調査を実施.この結果を基に,中間とりまとめでは,特定除外制度の見直しの方向性が示された.
 日医と四病協では,厚労省が行った調査の回収率があまりにも低く,問題があることから,改めて長期入院の実態を把握するための調査を行うことを決定し,実施したのが今回の調査である.
 同調査の概要であるが,実施主体は日医と四病協(日本病院会,全日本病院協会,日本医療法人協会,日本精神科病院協会)で,調査項目は特定除外患者の割合,平均在院日数,病態など.調査期間は,二〇一三年七〜八月.対象施設数は二千六十病院で,そのうちの七百八十一病院から回答を得た(回収率三七・九%).
 因(ちな)みに,前述の厚労省調査の回収率は九・四%.また,回答特定除外患者数(七対一・十対一のみ)は,厚労省調査で二百五十四人であったのに対して,今回の調査では二千三百四十五人と,約十倍に上っている.
 当日行われた記者会見には,日医から中川俊男副会長,四病協から相澤孝夫日本病院会副会長,猪口雄二全日本病院協会副会長がそれぞれ出席した.
 まず,相澤日病副会長が,「回収率が非常に低い調査結果を基に整理された中間とりまとめが中医協総会に報告され,『七対一入院基本料を算定する病院数の削減ありき』で,診療報酬の見直しが性急に進められていることから,今回共同で調査を実施することになった」と本調査の実施に至った経緯を説明.その後,中川副会長が,調査結果の概要を解説した.
 同副会長は,調査結果から,(一)特定除外患者の割合は七対一で三・九%,十対一で六・八%であるが,特定除外患者ありの病棟に限ると七対一で六・七%,十対一で一〇・二%である,(二)特定除外患者ありの病棟に限ると,特定除外患者を含めた場合,平均在院日数は七対一で一・四日,十対一で四・八日延びる,(三)七対一ではリハビリテーション実施中及び悪性新生物治療中の特定除外患者が多く(図),悪性新生物治療中の患者は七割以上が当該病棟でなければ治療が困難で退院出来ない,(四)十対一では,腎不全患者の特定除外理由として,人工透析のみならず重度障害・重度意識障害・難病等も見られる,(五)脳神経外科で特定除外の割合が高い,(六)退院の受け皿が不十分と回答した病院や,病床規模の小さい病院で,特定除外患者の割合がやや高かった─ことなどが明らかになったとした.
 猪口全日病副会長は,「長期入院が悪いかのように決めつけてしまうと患者さんの不利益になるし,治療の継続に非常に問題が出てくる.性急に平均値だけで判断するのではなく,疾患別の状態等をよく精査した上で,長期入院についての今後の対応を考えていくべき」と主張.相澤日病副会長も,「患者さん一人ひとりの詳しい状態を調べ,更に地域の医療提供体制のあり方も十分に考慮した上で,特定除外をどうするかを考えるべきである.単なる調査結果のみで,長期の入院は削減するという考え方は,変えて頂きたい」と述べた.
 中川副会長は,また,「七対一に全く触るなということではなく,しっかりしたデータに基づいてエビデンスを持って議論して欲しいというのが,今回の調査の最大の理由である.今のように,削減ありきで,客体数の少ない偏ったデータで議論するのは容認出来ないことから,日医と四病協が共同で調査をした」と改めて説明.その上で,調査に協力頂いた医療機関に,この場を借りて,感謝を申し上げたいと結んだ.

日医・四病協 特定除外に該当する入院患者実態調査結果を公表/医療現場の実態に基づいた長期入院のあり方の検討を(図)

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