日医ニュース
日医ニュース目次 第1251号(平成25年10月20日)

平成25年度中国四国医師会連合総会
地域医療,医療提供体制などについて活発に協議

平成25年度中国四国医師会連合総会/地域医療,医療提供体制などについて活発に協議(写真) 平成二十五年度中国四国医師会連合総会が,九月二十八,二十九の両日,広島市内で開催され,日医から横倉義武会長,羽生田俊副会長,今村定臣・高杉敬久・小森貴・藤川謙二各常任理事が出席した.
 二十八日には,総会に先立ち,「医療基本法(仮称)制定について」と題するシンポジウムが開催され,羽生田副会長を含むコメンテーターによる講演と,今村常任理事を座長に「医療基本法(仮称)の制定に向けたシンポジウム」が行われ,基本法の必要性について議論するとともに,参加者からもさまざまな質問・要望が寄せられた.
 二十九日の総会では,平松恵一中国四国医師会連合委員長(広島県医師会長)に続いて,横倉会長があいさつを行った.横倉会長は,本年八月に公表された社会保障制度改革国民会議の報告書に触れつつ,「国の財政難を理由に規制緩和を推し進める動きがあり,日本経済再生の名の下に,国際戦略特区において混合診療の拡大,医学部新設,外国人医師・看護師の優遇など,医療の産業化を加速する議論が急速に顕在化してきている」と説明.
 また,TPPへの対応として,ブルネイで開かれたTPP会合への羽生田副会長の派遣や米国研究製薬工業協会とのシンポジウム共催を報告し,「日医は,国民の健康を守る専門家集団として,強い意志を持って世界に冠たる日本の公的医療保険を堅持していくことに変わりはなく,今こそ“日本医師会綱領”の下に会員が一致団結するべき時ではないか」と述べ,各医師会の理解と協力を求めた.
 平成二十四年度庶務・会計報告の後,次期開催県医師会となる森下立昭香川県医師会長があいさつし,総会は終了.その後,四つの分科会が開催された.

地域医療ビジョンの策定に向けた協議を

平成25年度中国四国医師会連合総会/地域医療,医療提供体制などについて活発に協議(写真) 第一分科会「医療保険(労災・自賠責等)・介護保険」では,(一)審査支払機関における審査方法等,(二)在宅患者訪問診療料の算定要件のあり方,見直し,(三)医療と介護の連携,(四)病床機能情報の報告・提供と病床再編,(五)病床機能情報の報告制度から地域医療ビジョン策定─等について議論が行われ,藤川常任理事が出席した.
 「地域医療ビジョンの策定」について,各県医から進捗状況の報告を受けた藤川常任理事は,九月二十四日付で日医から文書「病床機能報告制度及び地域医療ビジョンについて」を発出したことを示し,「病床機能報告制度や地域医療ビジョンの検討に関して,日医からも情報提供に努めるが,行政と早期に協議を始めて欲しい」と要請した.
 更に,日医への要望として,「介護療養病床の存続」「介護療養型医療施設の存続へ向けての取り組み」「次期介護報酬改定に向けて『ケアの質のアウトカム評価』の導入」「看護必要度の見直し」「次期診療報酬の改定関連」「仕入れ税額控除が可能な課税制度」「自賠責保険における健保使用」などが挙げられた.
 消費税率八%時の診療報酬上の対応について,薬剤の使用量に応じて不公平になるのではないかとの問いに対して,藤川常任理事は,「八%引き上げ後も従来どおりの算定式になることが確認されている」と述べ,薬剤の使用量の多寡による診療科間の不公平は生じないとした.

国民の健康寿命を延ばす活動の主役は医師

 第二分科会「地域医療(在宅医療等)」では,(一)減少の一途をたどる有床診療所への各県医の対応,(二)各県の在宅看取りの進捗状況と在宅医療推進に対する課題,(三)在宅医療,地域ネットワークづくりの取り組み,(四)介護予防・日常生活支援総合事業─について議論が行われ,横倉会長と高杉常任理事が出席した.
 「有床診療所」に関しては,新規開業への敷居が高いと指摘する意見が寄せられたことに対して,高杉常任理事が,「本年四月に厚生労働省から,在宅・へき地・小児・周産期医療等,地域において良質かつ適切な医療が提供されるために必要な診療所であり,医療計画に記載が認められる場合には,届け出により病床が設置出来ることが再周知されている」と説明.「行政から門前払いを受けるケースがあれば,都道府県医師会から支援してもらいたい」と呼び掛けた.
 各県医からは,要支援者の介護予防給付を市町村事業に移行する厚労省の方針について,市町村によってサービスの質に格差が出ることを懸念する意見などが挙げられた.また,「介護予防・日常生活支援総合事業」に関して,高杉常任理事は,「医師は病気を診るだけでなく,『元気なお年寄りを増やす』という視点を持つべきである.国民の健康寿命を延ばすための活動の主役は医師である」と強調した.
 更に,日医への要望として,「日医電子認証センターの利用」「地域包括ケアの理念と地域医師会の役割の明確化」「開業医の疲弊問題」などが挙げられた.

都道府県医師会代表者が各都道府県の防災会議に参画を

 第三分科会「医療提供体制(災害・感染症等)」では,(一)地域医療支援センター,(二)定期予防接種の県内広域化,(三)各種ワクチンの安定供給のための取り決め事項,(四)災害時医療チームの編成状況及び研修,(五)災害発生時の医療機関連絡体制─について議論が行われ,小森常任理事が出席した.
 「ワクチンの安定供給」について小森常任理事は,「予防ワクチンの公費負担・公費補助を実現することが私の使命である」との意気込みを見せ,本年流行した風疹の対応については,厚労省の検討会で「特定感染症予防指針」を策定することを明らかにした.更に,「ワクチンの供給確保」については,各都道府県で行政,医師会,卸業が連携を取る必要性を訴え,「予防接種基本計画」でワクチン増産体制を整える考えを示した.
 日医への要望としては,「若年成人に対するワクチン接種」「感染症における取り組み」「災害医療コーディネーターの定義・役割」「JMAT活動」「二次救急医療機関の救急搬送受け入れ」「全ての都道府県医師会担当理事連絡協議会にテレビ会議参加の選択肢の付与」「学校医の報酬の検討の場の設置」などが挙げられた.
 「災害医療コーディネーター」について小森常任理事は,東日本大震災の際に自らが福島県相馬市へ支援に行ったことを説明.「地域医師会長が,現地に参集した各医療チームや地元の介護関係者と情報を共有し,課題への対策・実行をコーディネートすることが重要」とした.「JMAT活動」については,日医が中央防災会議の委員となることを引き続き要望するとともに,都道府県医師会代表者が各都道府県の防災会議に参画することが重要であるとした.

調査委員会の調整にはブロック内での連携も重要

 第四分科会「医事紛争」では,(一)各県における医師賠償責任保険の取り扱い,(二)転倒防止義務,(三)廃止医療機関における診療録の保管,(四)治療費未収金の問題,(五)院内事故調査委員会─について議論が行われ,今村常任理事が出席した.
 「転倒防止義務」について今村常任理事は,「超高齢社会を迎え,今後頻繁に起きる問題と考える.転倒を完全に防ぐことは難しく,その後の検査や治療などの対応が重要である」との考えを示した.
 「治療費未収金の問題」については,厚労省「医療機関の未収金問題に関する検討会議」において,実施基準の明確化などが議論されたが,効果検証が行われておらず,小口未収金の回収は解決されていないとして,厚労省に検証を求め,再度検討する考えを示した.また,「院内事故調査委員会」については,「全ての医療機関に体制づくりをお願いしたいが,中小医療機関では院内事故調査委員会の立ち上げは困難である.その場合は,県の医師会が中心となり,事故調査体制を支援することになる.事故調査委員が偏ることで公平さに疑義が生じかねない場合には,他県から支援を受けることも考えて頂き,各ブロック内での連携が重要となる」とした.
 また,日医への要望として,「検討されている医療事故調査制度への医師会の関与」「医療事故調査制度の設立に向けた指針の策定」「成年後見制度の範囲拡大」などが挙げられた.

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