日医ニュース
日医ニュース目次 第1255号(平成25年12月20日)

南海トラフ大震災を想定し超高速インターネット衛星「きずな」を利用した実証実験(防災訓練)を実施

南海トラフ大震災を想定し超高速インターネット衛星「きずな」を利用した実証実験(防災訓練)を実施(写真) 南海トラフ大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)が十一月二十日,日医会館で,独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)並びに独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の協力を得て実施された.
 日医は,昨年七月二十六日に開催した平成二十四年度都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会において,北海道・埼玉県両医師会を結んで非常時通信デモンストレーションを実施.本年一月には,JAXAとの間で「超高速インターネット衛星『きずな』を用いた災害医療支援活動における利用実証実験に関する協定」を締結している.
 今回の実証実験(防災訓練)は,本協定に基づき,南海トラフ巨大地震による広域大規模災害を想定し,多元的なインターネット通信手段の確保を図るとともに,インターネットを利用した災害医療活動の検討を行うことを目的として実施されたものである.
 当日は,通常のインターネット環境が機能停止,または不安定になったとの想定で,「きずな」の送受信アンテナを愛知・兵庫・香川の三県医師会館に,NICT車載局を救護所に設定した名古屋市内に設置した他,出席以外に,日医テレビ会議システムにより,ほぼ全ての道府県医師会が参加しての大規模な訓練となった.
 石井正三常任理事の防災訓練開始宣言の後,横倉義武会長が,防災訓練の一環としてあいさつを行い,「昨日,二〇XX年十一月十九日十六時十六分,南海トラフ地震によるとみられる広域・大規模地震が発生,マグニチュードは九・〇,東海地方を中心に,各所で最大震度七を記録,太平洋沿岸各地で建物倒壊,火災,土砂災害,津波が発生し,死傷者は数十万人に及ぶ見込みで,紀伊半島,四国,九州でも深刻な状況と思われる.日医会館の被害は,軽微にとどまり,何とか機能は維持出来ている」と被害状況を報告.
 更に,(1)発災当日,会長を本部長として災害対策本部を立ち上げ,参加出来た役員で臨時理事会を開催,JMATの派遣を決定し,まず各都道府県医師会に出動準備を要請,更に,日本薬剤師会や病院団体等,被災者健康支援連絡協議会の構成団体にも,JMATへの参加協力を要請(2)二十日に会長宛てに厚生労働大臣よりJMATの派遣要請があり,関係省庁にもJMATの派遣決定を連絡し,協力を要請(3)JAXA及びNICTに対し,インターネット衛星「きずな」の協力を要請─したと説明し,「本日は,JMATの派遣に向けた情報交換のため,都道府県医師会とTV会議を行うこととした」と述べた.その上で,日医とJAXAとの協定は一年ごとの自動更新なので,今後の充実のためにもアンケート等で忌憚(きたん)のない意見,要望を寄せて欲しいとして,都道府県医師会担当役員に協力を要請した.
 次に,中尾正博JAXA宇宙利用ミッション本部衛星利用推進センターミッションマネージャが「きずな」について,永田高志日医救急災害医療対策委員会委員が「クラウド型災害医療情報システム」について,それぞれ概要を説明した.
 続いて,「きずな」のアンテナを設置している三県医師会から,柵木充明愛知県医師会長,川島龍一兵庫県医師会長,森下立昭香川県医師会長が,各地の被害や対策等の状況に触れつつあいさつした.

“継続は力”であり,繰り返し実施を─横倉会長

 防災訓練第二部では,被害想定について事務局が説明した後,石井常任理事が,発災時から訓練開始時点までの日医の対応について説明し,シナリオに沿って発災日翌日の八〜十六時の動きをダイジェストで行った.
 各地の医師会とTV会議等を通じて情報交換中に,陸上自衛隊の川朗陸将補から電話が入り,自衛隊の対応や,JMATとして派遣される際の留意点等について発言があった.
 訓練の中では,クラウド型災害医療情報システムを用いて,オンライン上でのJMAT登録,災害診療記録の利用,また,JAXAから提供された衛星画像に医療施設や避難所などの地図情報を加工し投入するなど,情報の共有と活用のための種々の方策が試みられた.
 松原謙二副会長は,総括として,「大規模災害では,複数の通信手段を確保する必要があり,JAXAのインターネット衛星はまさに有効な手段」と指摘,検討を進めていくとした.
 最後に,横倉会長は,「起きて欲しくない自然災害ではあるが,もし起きた時に,少しでも多くの方々の助けとなるよう,“継続は力”ということで繰り返し行っていかなければならない」と述べ,初の訓練は終了した.

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