日医ニュース
日医ニュース目次 第1260号(平成26年3月5日)

平成25年度母子保健講習会
「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─8」をテーマに

平成25年度母子保健講習会/「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─8」をテーマに(写真) 平成二十五年度母子保健講習会が,「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─8」をメインテーマとして,二月十六日に日医会館大講堂で開催された.
 今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った横倉義武会長は,今期の周産期・乳幼児保健検討委員会が,昨年,新たに“成育”の概念を導入した「成育基本法」の提案を答申し,十二月には,「成育基本法成立に向けた議員連盟」の発起人会が開催されたことを紹介.「日医としては,より多くの国会議員の理解を得て,『成育基本法』の成立を目指していきたい」と述べ,更なる理解と協力を求めた.
 当日は,成育基本法成立に向けた議員連盟会長の河村建夫衆議院議員,同連盟事務局長の羽生田俊参議院議員が出席し,それぞれあいさつした.
 午前は,講演二題が行われた.
 五十嵐隆国立成育医療研究センター理事長・総長は,「『成育基本法』の設立を目指して」と題して,(一)わが国の子どもの保健・医療水準と健康問題,(二)「成育医療」の概念,(三)「成育基本法」の目指すもの,(四)「成育基本計画」に盛り込まれる内容,(五)今後「成育基本計画」において検討が必要と考えられる具体的課題─について詳細に解説.周産期,小児期,思春期を経て次世代を育成する成人期までを一つのサイクルとして捉え,国,地方自治体,医師等の責務として,より幅広く子ども達の医療,保健上の課題に対処しようという理念法である「成育基本法」の必要性を強調した.
 岡井崇総合母子保健センター愛育病院長は,「産科医療補償制度の理念と実績」と題する講演で,二〇〇九年に創設され,五年を経て見直しが行われている本制度の理念,概要について説明した他,運用の実績を報告.
 本制度運用の成果として,原因分析は第三者機関が行うので,医師が原因について患者側と争うことが少なくなり,紛争と訴訟が大幅に減少したこと,原因分析結果を脳性麻痺の防止に役立てることが出来ることなどを挙げた.

成育医療をめぐる課題でシンポ

 午後は,「成育医療をめぐる課題:わが国における子育て支援」をテーマにシンポジウム(座長:松平隆光日本小児科医会長/浮田俊彦石川県医師会副会長)が行われた.
 まず,榊原智子読売新聞東京本社社会保障部次長が,「『養育困難』時代に求められる社会的支援―少子化対策から包括的な次世代育成政策へ」として,わが国では,「子ども・子育て関連三法」により,戦後の救貧対策・選別主義という観点の児童福祉政策からは転換が図られているが,高齢者と子どもの給付に不均衡があることを指摘.更に,社会保障給付費の構成比・子どもの相対的貧困率・合計特殊出生率の推移等の各国との比較データを示し,女性の雇用率と合計特殊出生率,子育てへの公的支出と合計特殊出生率にそれぞれ正の相関関係があることを説明した他,福祉先進国フィンランドの出産育児相談所「ネウボラ」についても紹介した.
 次に,左合治彦国立成育医療研究センター副院長が,「胎児治療について」と題して,「人のライフサイクル」の最も初期の段階に対応する究極の成育医療とも言える「胎児治療」の現状と今後の展望について解説し,その目的は「後遺症なき生存」であり,一層の発展が期待されるとした.
 金子淳子金子小児科院長は,「乳幼児健診の標準化をめざして─小児科医主体のパートナーシップ―」と題して,小児科医による一カ月健診の利点を示しつつ,一カ月健診を公費化した山口県における取り組みを説明.
 更に,エジンバラ産後うつ病質問票によるスクリーニングの一カ月健診への導入や,健診の内容や手技の標準化を目指した『1か月健診ガイドブック』を作成中であることなど,活動の説明があった.
 安達知子総合母子保健センター愛育病院副院長は,「思春期の子ども・若年成人への健康教育」と題して,特に女性の身体や妊娠・出産・子育てと女性に特有な疾患への理解を深める教育を中心に説明し,全ての子ども達が望まれて生まれ,健康な生涯を送るためには,リプロダクティブヘルスのための施策が重要であるとした.
 討議では,病児保育,性教育,妊娠期からの相談事業などについて,フロアとの間で熱心な意見交換が行われ閉会した.

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