日医ニュース
日医ニュース目次 第1261号(平成26年3月20日)

ワークショップ
「会員の倫理・資質向上をめざして」と改称して開催

ワークショップ/「会員の倫理・資質向上をめざして」と改称して開催(写真) 第四回ワークショップ「会員の倫理・資質向上をめざして─都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理─」が二月二十六日,日医会館小講堂で開催された.
 藤川謙二常任理事の司会で開会.横倉義武会長は,あいさつで,平成二十二年度から毎年開催してきたシンポジウム「会員の倫理・資質向上をめざして」を,内容の構成を鑑み,四回目となる今回から,ワークショップ「会員の倫理・資質向上をめざして」と改称したことを説明.医師の行政処分の三大事由は「わいせつ行為」「業務上過失致死傷(医療)」「診療報酬不正請求」であるとした上で,本来は個人の自覚に帰することであるが,医師としての高い倫理観と使命感を維持出来るよう,医師集団として,情報提供や再教育への関与等,支援していく方策を講じなければならないとの考えを示した.
 続いて議事に移り,森久保雅道会員の倫理・資質向上委員会委員(東京都医師会理事),北村聖同委員(東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター教授)が座長となり,茨城・愛知・福岡・鹿児島各県医師会から,それぞれの取り組みが紹介された.
 石渡勇茨城県医師会副会長は,医事紛争処理委員会や苦情処理窓口の設置,茨城県医療安全相談センター事業への協力,茨城県医療問題中立処理委員会,医の倫理・自浄委員会など,医事紛争・医療安全に対する取り組みについて説明した.
 大輪芳裕愛知県医師会理事は,(1)医療安全支援センター(苦情相談センター)(2)医療安全対策委員会(3)会員相談窓口─などの医療安全対策事業を柱として,会員の自律的な倫理・資質向上に取り組んでいるとした.
 戸次鎮史福岡県医師会理事は,(1)「よりよい医療を目指して」ポスター(2)ハートフル研修会─など,「自浄作用活性化委員会」の取り組みを中心に解説.更に,医療モニター制度「メディペチャ」が今年度十年目を迎え,記念誌を作成,各都道府県医師会長宛てに送付予定であるとした.
 金子洋一鹿児島県医師会副会長は,平成十四年に運用開始した「患者さんの声ダイヤルイン」の概要及び事例に対する県医師会の対応と医道倫理自浄委員会での意見等を紹介した.

二つの事例について,活発に討議

 引き続き,樋口範雄同副委員長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)から,「討論の課題と進め方」についての説明が行われた後,
 (一)診療報酬請求に関する問題(県医師会に診療報酬の架空,水増し請求が行われているという匿名の投書があったため問い合わせたところ,市医師会にも一年ほど前,同様の投書があり,市医師会長から注意するよう文書を送った経緯があることが判明した医師に対する,県医師会としての対応),
 (二)終末期医療の問題(脳梗塞で救急搬送され,気管内挿管,人工呼吸器が装着された六十歳男性.入院時から意識はなく,二カ月以上経っても回復せず,家族が相談に来た時の主治医としての対応)
─の二つの設例について,参加者が七つのグループに分かれて討議を行うワークショップ形式によるケーススタディが行われた.
 全体討議では,グループによる議論の内容が発表された.
 事例(一)では,匿名情報には対応すべきではなく,厚生局に任せるべきとの意見も出されたが,多くは,まず情報の真偽を確認するために,本人と面会して事情を聴くとか,市医師会との連携を密にして情報収集し,自省を促してはどうかといった意見であった.また,療養担当規則の理解不足や請求の仕方が分からないケースに対しては,医師になった時の指導や県医師会の研修等が重要との意見,更に,今後は非会員への対応も必要との指摘もあった.
 事例(二)では,家族の話を聞き,説明・相談しながらサポートしていくこと,多職種でチームを作って対応することが重要との意見が出された.また,現行の終末期医療ガイドラインに沿って,家族の意思の統一を確認し,倫理委員会に諮るべきという意見もあった一方,終末期医療に係る法整備を望む声も出された.
 最後に,森岡恭彦同委員長(日赤医療センター名誉院長,日医参与)が,世界医師会マドリッド宣言「プロフェッショナル・オートノミーと臨床上の独立性」(二〇〇九年改訂)を引用し,「倫理問題は,すぐに効果があるわけではないが,会員の倫理・資質向上に向けて努力し続けるべきである」と総括し,ワークショップは終了となった.

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