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第1264号(平成26年5月5日) |

終(つい)の住処(すみか)

「これがまあ終の住処か雪五尺」は一茶五十歳の時の句で,そこで亡くなったのは六十五歳だそうです.
近ごろは病院以外に老健,特養などの施設での看取りも増えてはいますが,住み慣れた自宅での看取りはまだまだです.宮島俊彦元厚生労働省老健局長著『地域包括ケアの展望─超高齢化社会を生き抜くために』によれば,病院,施設では居住権ではなく利用権しかないので,高齢者が急性期,回復期,療養病床,施設と移動を余儀なくされ,それまでどおりの生活を続けることは難しい.デンマークでは,介護施設を増やした結果,高齢者は「施設閉じこもり」になり,これまでの生活の継続はなく,介護職員は高齢者の要求に何でも従う「召使症候群」にかかったので,施設は凍結され,「居住とケアの分離」の原則が出来たそうです.
わが国では,欧米とは違って社会保障の大きな柱である住宅政策を,建設省(現国土交通省)が行ってきたため,低所得層向け住宅,高齢者向け住宅の整備が,甚だしく遅れています.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が増えてはいますが,今回の診療報酬改定で集合住宅への在宅医療点数は大きく削減され,在宅医療推進に冷や水をかけられました.
急速に高齢者が増えつつある大都市圏では,「これがまあ終の住処か行き倒れ」にならないためにも,高齢者の終の住処確保,地域医師会を巻き込んだ地域包括ケアの推進とその財源確保は喫緊の課題です.
(撥)
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