日医ニュース
日医ニュース目次 第1265号(平成26年5月20日)

勤務医のページ

平成24・25年度 勤務医委員会答申
「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」〜その2〜

 今号では,本紙第1263号(4月20日号)に引き続き,勤務医委員会(委員長:泉良平富山県医師会副会長)答申「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」の概要を紹介する.
 なお,答申各章の内容は,執筆者である同委員会委員の意見がつづられており,必ずしも同委員会の総意を表すものではないことに留意されたい.

6.日本医師会認定医制度

 医師として必要な倫理観や道徳観,人間としての教養や人柄,地域医療での行政との関わり,あるいは多様な患者に対応出来る臨床力は誰も教えてくれるものではなく,臨床医としての品質を保証する制度もない.ここで日医が,医師の品質を保証する「日医認定医制度」を創設することを提案したい.日医が品質を保証するのだから,認定は日医会員であることが前提となる.
 日本の医療の特徴は国民皆保険である.この量的保証の次に,質的保証が求められ,医療の高度化も重なって「専門医制度」が導入された.しかし,「専門医制度」は学問的,科別専門医であり,信頼出来る医療,幅広い見地からの医療を保証するものではなかった.ここで求められるのは医師の人格と技術を保証する制度である.
 「日医認定医制度」が医師の一定レベルを保証し,患者は「認定医に診てもらう方が安心」となればよく,各専門医についても認定医の取得を前提にすればよい.また,病院は雇用している認定医数を病院信頼係数として誇ればよい.
 患者の要望に応じるのが時代の流れである.「日医認定医制度」が二次的に日医の組織率を高め,日医が全ての医師の総意を表す団体と見なされれば幸いである.

7.Early exposure

 多くの医学部では,基礎医学を学習している時期に地区の開業医の医療行為を見学するカリキュラムを作成しており,この実習はearly exposureと言われている.しかし,この時期には,医療を実践する際の疑問・矛盾点などには気づいていないため,医師会活動への理解は皆無である.
 この問題を解決するため,卒後臨床研修に特に,診療所での地域医療研修を入れることを勧奨したい.医師になってからのearly exposureである.医師として地域医療研修をすれば,救急医療,介護,予防注射,学校医,医師賠償責任保険等に郡市区等医師会がどれほど関与しているか分かる.また,地域医師が地域社会と密着した活動を行っているか,それを実行するのは医師個人の人脈,学閥でなく,郡市区等医師会が活動しているか理解出来るのではないか.
 更には上部組織として都道府県医師会,日医が存在し,行政を動かし医療環境の改善を図っていること,大学病院のみで日本の医療は成り立たないこと等,医師会の実行力を肌で感じてもらうことも可能となる.
 医療に係る問題等に医師会が介入し解決していく現場を体験すれば,医師会活動の重要性を理解出来,入会への大きな動機となると考える.

8.日本医師会執行部への勤務医の参画

 日医会員でない多くの医師は,勤務医や行政職にある医師であると思われるが,これら非会員医師が日医に入会することによって,名実共に「日医は日本の全医師を代表する団体である」と言える.つまり,日医にとって勤務医の入会促進が政策の実現に必要不可欠であり,また近道でもある.
 日医が真に勤務医のための具体的施策を提案し,日医が勤務医の味方であり自分達のために働いているということを分かってもらうためには,現役の公的病院の勤務医が執行部に入り,指揮を執る必要がある.そのためには,日医理事に勤務医枠を設け,勤務医の代表が常に執行部に入り,勤務医問題担当となることが不可欠である.
 日医会員の四七・二%を占める勤務医の意見を集約出来る組織があれば,現時点でも日医は勤務医の考えを入れた政策を提言出来るようになり,国民に医師全体を代表する団体であると示すことが出来る可能性が高い.多くの都道府県に勤務医部会が組織されている現状をみれば,日医内に勤務医部会を組織することは難しいことではない.
 日医勤務医部会を勤務医の手で運営し,その代表を日医理事の勤務医枠に充てることにすれば,その背後には日医会員の約半数を占める勤務医会員がいることになり,勤務医の意見集約や勤務医のための施策の立案も容易になってくるだろう.

9.日本医師会への加入促進

(一)医師年金のメリット
 勤務医は定年後も,現役時代と同じ医療機関ないし別の医療機関に雇用され,定期的な収入を得ることが多い.そのため,老齢厚生年金や退職共済年金は算定年金額と定年後の収入額に応じて一部ないし全額支給停止になる場合が多い.
 一方,私的年金に当たる日医年金は,六十五歳を過ぎれば定年後の収入に関係なく給付されるので,定年後の生活設計を考える上で便利である.日医年金は,医師会入会の他のメリットや必要性を十分に理解し,安定した年金受給が保証される安心した生涯設計を考えたい勤務医に推奨出来る年金と言えるのではないだろうか.
(二)半強制的な日医への加入促進策
 医師が患者に安心かつ安全な医療を提供し,患者・家族に信頼される人間関係を築くためには,医の倫理について精通し実践出来なくてはならない.また,保険診療を含む医療制度及び医療関連諸法規定についても精通していることが求められる.
 そのため,これらのことを医学生及び若い医師に責任をもって教育し,その教育効果を認証する機関が必要となる.
 そこで,日医がその役割を担うことを提案したい.日医は関係各所に働き掛け,前述の教育及び試験を行い,認定証を発行出来る資格を取得し,日医発行の認定証保有を,各学会ないし第三者機構が実施する専門医認定試験の受験資格にする制度を構築する.この制度が構築出来れば,入会促進に寄与するのみならず,医療の社会的側面にも深い理解を持つ医師の育成に大きく貢献すると思われる.

10.真の男女共同参画社会の実現に向けて

 男女共同参画が意味するのは,「男女が社会の対等な構成員となる」ことである.
 女性医師が自身の能力を発揮し社会的に貢献するためには,意思決定機関で意見を発信することが重要であるが,日医で活動する女性は極端に少ない.その理由としては,(一)家庭と仕事の両立に精一杯で,キャリア形成が難しい,(二)ガラスの天井で昇進が難しい,(三)上の立場になれば社会的活動がより容易になるが,その入り口が狭い,(四)固定的性別役割意識や時間的・立場的な制約が,社会的活動を妨げている─ことが考えられる.
 この負の連鎖を断ち切り,日医への参画を促すには,日医が掲げた「女性一割運動」を速やかに実行し,女性医師の登用を図る必要がある.更に,各委員会での女性医師の活動を適切に広報することで,日医の活動に共感する者が増え,関心が高まると考える.
 また,オンデマンドで的確な医学情報の提供,e-learning等の充実等,入会のメリットをつくることも必要である.学会に行くことが出来なくとも,最新の医学情報を得ることが出来,自己研鑽出来れば,キャリア形成・維持・向上に役立つ.
 加えて,日医がさまざまな学会や病院における男女共同参画に係る取り組みのハブとなり,個人の状況に応じて適切な支援策につなげ,更には全体を協働させて,より高次のシステムを創造出来ればよいと考えている.
 近い将来,真の男女共同参画社会が実現することを期待する.

まとめ

 答申各章の内容を踏まえ,「医師会入会による身分保障」「医師会入会勧誘」「日医組織の改革」等十項目について,まとめが記されている.
 なお,巻末のスライド「日医の活動と取り組みの紹介(案)」は,日医ホームページからダウンロードが可能となっている.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.