日医ニュース
日医ニュース目次 第1277号(平成26年11月20日)

勤務医のページ

平成26年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
メインテーマ「地域医療再生としての勤務医〜地域医療における総合診療医の役割〜」

勤務医のページ/平成26年度全国医師会勤務医部会連絡協議会/メインテーマ「地域医療再生としての勤務医〜地域医療における総合診療医の役割〜」(写真) 平成二十六年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催,神奈川県医師会担当)が十月二十五日,「地域医療再生としての勤務医〜地域医療における総合診療医の役割〜」をメインテーマとして,横浜市内で開催された.
 横浜市内での開催は,昭和六十三年の第九回以来今回が二回目であり,全国から四百名が出席した.
 冒頭のあいさつで横倉義武会長は,「団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年を見据え,地域医療を巡る環境は,今まさに変動の時を迎えている.こうした変化に対応し,国民の生命と健康を守るための活動を深化していくためには,全ての医師がその拠り所となる基本理念,すなわち『日本医師会綱領』の理念を共有していく中で,医療界の更なる団結を図る必要がある」と述べた.
 続いて,あいさつした大久保吉修神奈川県医師会長は,「昭和五十六年に福岡市医師会が担当して開催した協議会から今回までの協議会のテーマを顧みると,その時代の医療を取り巻く環境や世相が反映された諸問題を取り上げて討論されてきているが,昭和五十六年から変わっていないのは,勤務医,開業医を問わず医師の連携が重要ということである」とした.

特別講演1「日医が考える総合診療専門医の役割」

 横倉会長は,まず,専門医制度全般について,「『日本医師会綱領』を土台として,国民の健康な生活を確保するために,安心・安全な医療提供体制全体の中で大局的に捉えるべき」との見解を示した.その中で,「適正な専門医への志向は好ましいことだが,行き過ぎた専門医の制度化については,地域医療との整合性に課題が生じる,フリーアクセス制限につながる,専門外の患者を診察しなくなる場合があるなど,医療提供体制全体からみると懸念される側面もある」と述べた.
 総合診療専門医については,その医師像の定義について,まだ議論を深める余地があるとの認識を示した後,総合診療専門医とかかりつけ医の関係について,「長年にわたり地域医療を支え続けてきた“かかりつけ医”という概念について,もう一度再認識し,かかりつけ医の機能を充実させる一方で,総合診療専門医の特性も評価することが妥当」との考えを示した.
 また,日医生涯教育制度は,主として地域医療の観点から医療を学ぶ教育制度なので,かかりつけ医,総合診療専門医を問わず,更に全ての領域の専門医もこれに参加してもらい,質の高い充実した医療提供体制を確立する一助として欲しいとした.

特別講演2「新制度における専門医」

 久史麿日本医学会長は,「専門医の在り方に関する検討会」で座長を務めた立場から,専門医制度全般について講演した.
 新しい専門医制度は,従来の学会を中心とする専門医制度の改革を目指して,平成二十三年十月に厚生労働省内に同検討会が設置され,平成二十五年四月二十二日に公表された検討会報告書では,専門医を「神の手を持つ医師やスーパードクターのことを意味するのではなく,安心,安全で標準的な医療を提供できる医師のことである」と定義し,総合診療専門医の医師像,期待される役割などについても検討結果がまとめられている.また,総合診療専門医の研修プログラムについては,日本専門医機構において有賀徹昭和大学病院院長を委員長とする委員会で,今後,具体的な提案がなされることになっていると説明した.

次期担当県あいさつ

 次期担当県の小山田雍秋田県医師会長より,次年度は平成二十七年十月二十四日(土)に秋田市内で開催を予定しているとの案内があった.

日医勤務医委員会報告

 泉良平勤務医委員会委員長より,横倉会長からの諮問「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」に対する答申についての報告があった.また,勤務医委員会で郡市区等医師会に行ったアンケート調査結果から,各地域医師会において具体的で地道な勤務医との連携,入会勧誘を行うことで勤務医の組織率向上が図られる可能性が示されたとした.

シンポジウム

 第一部「総合診療医の現状について」では,全国各地で総合診療に取り組んでいる病院の総合診療や,各地域の医療環境や特性を踏まえた総合診療と大学の医学教育を踏まえた総合診療医の育成について,(一)「神奈川県立足柄上病院総合診療科の現状と取組について」(吉江浩一郎横浜市立大学総合診療医学臨床教授),(二)「聖マリアンナ医科大学における総合診療内科の現状」(松田隆秀聖マリアンナ医科大学総合診療内科教授),(三)「佐久総合病院グループにおける総合診療の現状」(鄭真徳JA長野厚生連佐久総合病院総合診療科部長),(四)「名古屋大学医学部附属病院総合診療科の現状─日本型の総合診療医育成システムを目指して─」(伴信太郎名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻総合診療医学教授),(五)「地方病院の救急医は多機能幹細胞医」(今明秀八戸市立市民病院救命救急センター所長)─の五題の講演が行われた.
 第二部「総合診療専門医に対して各医会,協会から望むこと」では,新たな専門医制度に位置づけられた総合診療専門医に対して,眼科,整形外科,耳鼻咽喉科,皮膚科,精神科,それぞれの立場から,総合診療専門医との連携について講演が行われた.
 また,第三部「合同討論」では,笠井夫常任理事が,第一部の「総合診療医の現状」について総括を行った後,合同討論・質疑が行われた.

「かながわ宣言」採択

 最後に,「かながわ宣言」(別掲)が満場一致で採択され,協議会は閉会となった.

かながわ宣言

 高齢化の進展や高度医療への対応に向けて,総合診療専門医の育成をはじめとする専門医研修制度のさらなる充実が求められている.
 また,地域で必要な医療を確保するため,今後,病床機能報告制度に基づくデータ等により,各都道府県が地域の特性に配慮しながら作成する地域医療構想(ビジョン)に基づいて,地域住民の生命・健康を守っていくための施策が展開されていくことになる.
 このような取り組みが適切に遂行されていくためには,地域医師会が中心的な役割を担い,積極的に関与していくことが期待される.
 以上を踏まえ,勤務医と地域医師会の協働による地域医療の再生に向けて,次のことを宣言する.

一,新たな専門医制度では,客観的且つ透明性のある基準を定めて運用し,医療の質の向上に資すること.

一,専門医研修中の出産育児介護等が,専門医取得に不利益にならないよう制度設計を図ること.

一,地域医療構想(ビジョン)の作成にあたっては,勤務医をはじめとする全ての医師の意見を広く汲み取りながら,地域の実情に即した形での“まちづくり”を行っていくこと.

平成26年10月25日

全国医師会勤務医部会連絡協議会・神奈川

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