日医ニュース
日医ニュース目次 第1279号(平成26年12月20日)

勤務医のページ

卒前実習,卒後研修における医師会の重要性
東京都医師会理事 友安 茂

 私の大学勤務時代は,教育,診療,研究に明け暮れ,医師会活動の意義について考える機会は少なかった.
 今般,東京都医師会理事,日本医師会勤務医委員会委員に就任し,行政から地域医療機関への伝達に医師会が重要な役割を果たし,逆に行政への医師の意見は医師会が行っていることを実感した.
 今までは,一般開業医と大学勤務医はお互い別世界で暮らしていたが,病診連携というシステムが実行されてきたことに代表されるように,大学勤務医と一般開業医の連携を密にしなければ,医療は成り立たない時代になってきている.
 現在の大学病院勤務医師は,あまりにも専門医志向が強く,患者を総合的に診療する医師が減少し,専門としている領域以外は診ない,または診られなくなってきている.
 この現象は,国民の求めている医師像とかけ離れ,現行の専門医制度の欠点が明らかにされてきている.
 このような流れの中で,横倉義武日本医師会長からの平成二十六年の勤務医委員会への諮問は,「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備─その推進のために日本医師会が担う役割─」であった.
 このテーマを一見すると,国民の求める医師像の育成とは別のテーマと思えるが,私は本諮問に対する具体的な提案を行うことによって,国民が求めている医師像を作り上げることができると考えている.
 東京都医師会には約二万人が入会している.開業医一万人,勤務医一万人と均等で,勤務医のうち大学病院に勤務する医師は六千人である.この大きな開業医集団と勤務医集団の個別意識を変え,国民の期待に応えなければならないと考えている.
 先ほど述べたように,国民の大きな期待の一つに,特定の疾患でなく,どんな疾患でも診られる医師の育成が挙げられ,それに対して国は平成二十七年度から総合診療専門医制度を創設することに決めた.
 総合診療専門医の育成カリキュラムには地域医療実習が含まれるようになり,研修医を送り出す大学と開業医間の実習研修についての連携は,今まで以上に強化していかなければならなくなった.そのため,両者の仲介役として,日医,都道府県医師会の役割が重要となってきている.
 東京都医師会は,会内の生涯教育委員会(委員長:高木康昭和大学教授,副委員長:安岡博之港区医師会理事)に委嘱して,大学医師会員と地域医師会員を対象に,卒前教育,卒後研修のアンケート調査を実施し,解析中である.その結果の詳細は,平成二十七年四月開催の日本医学会総会で発表予定であるが,その一部を述べる.
 アンケートの回収率は五割を超え,今後の日本の医療制度における医師の関心の深さを示唆する結果であった.
 アンケートを見ると,開業医の先生は医学部学生,大学研修医を自院で教育,研修させても良いとの意見が多く,更に若い医師を同窓,同門に限らず,育てていきたいとの気持ちが溢れた結果であり,委員全員が感銘を受けた.
 開業医と研修医のマッチング法,研修プログラム,医療事故賠償,その他実施面では多くの問題はあるが,若い研修医を育てていこうとする開業医の心意気を実感している.
 今後,研修医の地域研修において,大学勤務医と開業医が共同して研修カリキュラムを構築するための会議,検討会を実施することによって,大学勤務医と開業医の間で顔の見えた交流が盛んになる.
 また,医学生,研修医も地域医療実習研修を通して地域医療の重要性を実感し,多職種連携の意義も理解できるようになると予想している.
 大都市圏では医学部が複数存在するが,一医大しかない県もある.地域中核病院数,内情も各都道府県によってさまざまであり,日本全体での集約した答申を打ち出すことは非常に困難であるが,横倉会長からの諮問に対しての具体的な答申を出さなければならないと考えている.
 私は,東京都の十三大学と地区医師会を仲介し,研修を行うシステムができれば,次世代医師が地域社会での医療の重要性,必要性を理解し,更に歯科医師,薬剤師,看護師,メディカルパートナーと協調することにより,地域社会に安定,安心した医療が供給できると考えている.

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