日医ニュース
日医ニュース目次 第1284号(平成27年3月5日)

平成26年度日本医師会医療情報システム協議会
「医療連携IT化元年」から4年……ITを使った地域医療連携が全国で大きな展開!

平成26年度日本医師会医療情報システム協議会/「医療連携IT化元年」から4年……ITを使った地域医療連携が全国で大きな展開!(写真) 平成二十六年度日本医師会医療情報システム協議会が二月十四,十五の両日,「医療情報の取り扱いはどうあるべきか? 〜医療におけるIDのあり方〜」をメインテーマとして日医会館大講堂で開催され,熱心な議論が行われた.
 石川広己常任理事の総合司会で開会.冒頭,あいさつを行った横倉義武会長は,「現在,二〇二五年に向けて地域医療の再編成が行われているが,ITを使った地域医療連携システムの構築が大きな力を発揮することは間違いない」とし,本協議会の成果に期待感を示した.
 続いてあいさつした協議会運営委員長の宮城信雄沖縄県医師会長は,「今回の協議会は,ディスカッションの時間を十分にとったので,フロアから積極的な発言をお願いしたい」と述べた.

開発基盤やノウハウの共有で,イニシャルコストの抑制を

 引き続き行われた「地域医療連携(事務局)セッション」では,四つの事例報告が行われた.
 「さどひまわりネット」については,佐藤賢治新潟県厚生連佐渡総合病院外科部長が,業務フローの変更を求めないネットワークについて報告した.
 平良亮沖縄県医師会業務二課長は,県民の健康を守るため,医療・介護全体の連携を図る多職種連携を目標とした「おきなわ津梁(しんりょう)ネットワークの取り組み」を紹介した.
 田能村祐一別府市医師会事務次長は,進化を続ける「ゆけむり医療ネット」について説明した.
 高橋肇高橋病院理事長は,医療・介護・生活支援統合型システムである「道南地域医療連携協議会(道南MedIka)」について報告した.
 引き続き,先駆的な取り組みをしている「MMWIN」の登米祐也宮城県医師会常任理事,「あじさいネット」の牟田幹久長崎県医師会常任理事,「まめネット」の小竹原良雄松江市医師会理事,「Net4U」の三原一郎鶴岡地区医師会長,「さどひまわりネット」の佐藤佐渡総合病院外科部長,「おきなわ津梁ネットワーク」の安里哲好沖縄県医師会副会長・比嘉靖同理事,「ゆけむり医療ネット」の矢田公裕別府市医師会監事・田能村同事務次長,「道南MedIka」の高橋理事長の総勢十名の地域医療連携のスペシャリストに,石川常任理事を加えて,五つのテーマに沿ってディスカッションが行われた.
 「連携の地域的範囲」に関しては,ほとんどの地域医療連携システムは二次医療圏あるいは県単位で展開しており,地域医療連携を成功させる秘訣(ひけつ)はリーダーの存在が必須だとの考えで一致.
 「連携のためのデータ形式の統一」では,指定発言をした山本隆一東京大学大学院特任准教授がSS-MIX2の解説をするとともに,標準化を推進するためには,ユーザーである医師あるいは医師会が声を上げることが重要であると強調した.
 「地域医療連携は何を連携するか」に関しては,「医療連携」と「介護を含めた連携」に分けてディスカッションが行われた.
 「医療連携」では,各病院のポリシーの中で診療情報が開示されており,閲覧する医師と開示する医師との間には乖離(かいり)があるので,お互いの考えの統一化が必要とされた.
 「日医認証局の利用」では,小竹原松江市医師会理事が,紹介状にHPKIの署名機能を利用しており,大規模病院ほど必須なシステムだと強調.日医認証局は今後必ず必要となるが,高い利用価値の開発も必要だと述べた.
 また,ほとんどのシステムが地域医療再生基金で構築されており,運用は会費あるいは利用料で運営していることが明らかとなった.
 「運用資金の問題」では,具体的な金額を提示してディスカッションを展開.今後は重複したシステムの開発は無駄であり,成功した地域医療連携システムの開発基盤やノウハウを共有できれば,開発費用やイニシャルコスト抑制につなげることができるのではないかとの展望が示された.

医療分野専用の医療等IDの必要性を強調

─石川常任理事

平成26年度日本医師会医療情報システム協議会/「医療連携IT化元年」から4年……ITを使った地域医療連携が全国で大きな展開!(写真) 二日目には,まず,「日医IT戦略セッション〜ORCA・日医認証局の今後の発展に向けて〜」が行われ,日レセと連携ソフト(電子カルテなど),MI_CAN等の最新情報が紹介された.山本東大大学院特任准教授からは,「医療現場主導のIT化を推進して欲しい」と日医への要望があり,石川常任理事が日医のIT戦略を示した.
 議論の中では,日医認証局への期待が多く寄せられ,年会費を戦略的に無料にすべきとの意見が多く寄せられた.
 午後からは,シンポジウム「医療情報の取り扱いはどうあるべきか? 〜医療におけるIDのあり方〜」が行われた.
 行政の立場から講演した瓜生和久内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室パーソナルデータ関連制度担当室内閣参事官は,個人情報保護法改正の背景,課題,昨年末に提出した骨子案の主な内容を説明.
 向井治紀内閣府大臣官房番号制度担当室長は,医療分野を中心にマイナンバーの解説をする中で,「カルテにマイナンバーを記載するのは違法である」と強調するとともに,「保険の資格確認に利用する方法についてはいろいろな考え方がある」と述べた.
 鯨井佳則厚生労働省大臣官房参事官(情報政策担当)は,「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」が昨年十月に取りまとめた「中間まとめ」の内容を中心に説明.「医療分野で番号を使うとしたら,どういう利用場面があるのか,番号のあり方や,マイナンバーで整備されたインフラをできるだけ活用して,二重投資とならないようにしたい」との考えを示した.
 石川常任理事は,一意性はあっても悉皆(しっかい)性はない医療分野専用の医療等IDの必要性を強調し,その実現のために日医会内に「医療分野等ID導入に関する検討委員会」を発足させたことを報告.「マイナンバーは,本来,『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律』でその利用法が厳密に記載されており,記載以外の使用は全て違法行為であるにもかかわらず,さまざまな制度のバックグラウンドとして使われる可能性が高くなっている.医療の現場もその例外ではなく,危惧される状況を議論し,問題点を浮き彫りにすることで,医療分野専用の医療等IDの必要性を政府に提案していきたい」と述べた.
 最後に,次回担当県の檜谷義美広島県医師会副会長のあいさつの後,運営委員会委員の佐久本嗣夫沖縄県医師会理事が二日間の協議会を総括し,閉会となった.
 なお,本協議会では,「医師資格証」を使った出欠管理を初めて行い,八十一名の利用があった.

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