日医ニュース
日医ニュース目次 第1284号(平成27年3月5日)

都道府県医師会だより

「愛媛県医師会女性医師部会」の取り組みについて

―愛媛県医師会―

都道府県医師会だより(写真) わが国では少子高齢化社会における労働力減少に対応するため,女性の活用が重視されており,第二次安倍政権においても女性の積極活用が目玉政策の一つとなっている.
 しかし,わが国の女性就業について欠かせない視点に,いわゆる「M字カーブ」という問題がある.結婚,出産,育児を機に多くの女性が離職する傾向が以前から続いている.
 その典型とも言える女性医師の就業継続の困難さは,意思に反した大量の退職を招き,医師不足に拍車をかけ,特に地方の医療環境の厳しさ増幅の要因となっている.
 そこで,愛媛県医師会では平成十八年十一月に「愛媛県医師会女性医師部会」を立ち上げ,女性医師の就業支援に対応することとなった.
 まず,平成十八年に一回目の女性医師対象のアンケート調査を実施し,その結果,六割強の女性医師が,個々の努力で妊娠,出産,育児と仕事を両立させ,当直,時間外勤務にも対応していた.
 しかし,代替医の確保が困難などの理由で,産休はもちろん育休も取りづらく,やむを得ず退職に至った例も数多くあった.
 この時点では,院内託児所の設置,時間外託児の受け入れ,病児保育の実施,当直,日直の免除,時間外呼び出しの免除,産休,育休の取得確保が重点的な要望であり,家族,職場の上司・同僚の理解を求める声も切実であった.
 平成二十三年にも同様のアンケートを実施したが,前回に比し,ハード面の問題の解決がかなり進み,院内託児所が多くの病院に設置され,一部の病院では曜日限定であっても二十四時間託児,病後児保育も実施され,当直,夜間呼び出しにも対応可能となったことで,勉強会にも出席できるようになっていた.この時点で多くみられた要望は,ソフト面の充実,つまり家族の協力,職場での上司・同僚の理解,勤務時間の短縮,再研修制度の実施等であった.
 愛媛県医師会女性医師部会では,これらの分析結果に基づいて,活動方針を決め,実施可能な点からその改善に取り組んできた.
 愛媛大学の協力の下,「男女医学生・研修医をサポートするための懇談会」を毎年愛媛大学医学部で開催し,出産,育児と仕事の両立が大変重要なことである旨の教育,サポートシステムの紹介等を行っている.
 また,「病院長,病院管理者に対する女性医師の勤務環境改善のための講演会」を愛媛大学医学部連携病院長会議の中で実施させて頂き,各病院での女性医師支援制度の充実に寄与している.
 愛媛大学では,早くから総合臨床研修センターが設置されており,その中で「マドンナプロジェクト」が機能しており,女性医師の復職支援がメンター制度を軸にして実施され,成果を上げている.更に女性研修者支援システムも既にスタートしている.
 女性医師部会では,東西に長い愛媛県の地理的条件を考慮して,松山地区のみならず,南予の宇和島や東予の新居浜でその地域の女性医師の交流会を開催している.
 また,四年前から愛媛県西予市では,当地出身でシーボルトの娘,日本人初の産科女性医師である楠本イネを称えた「西予市おイネ賞」事業が行われているが,その一環として表彰式に参加して,楠本イネの遺志を継ぎ,真摯に医業にまい進しつつ家庭人としても成長を遂げるよう,努力している女性医師に対する地域表彰の選考にも関与している.
 最近では女性医師の就業継続支援に対する社会の理解は少しずつ得られてきているが,女性医師自身が更なる自己研鑽をする努力が求められるとともに,女性医師部会としても女性医師が各種勉強会に参加が可能となるように臨時託児所の設置,ホームページの立ち上げを実施し,さまざまな困難に直面されている女性医師のサポートに努め,これらが医師不足の解消の一助となるよう,医師全体のワークライフバランスの改善に向けて活動していく所存である.
 最後に,愛媛県医師会は二年前に新会館を落成して,この度,ようやく会館玄関ホールに日本古来からの医療の守り神である薬師如来像(写真)が完成,設置されたので,ご来館の際にはご観覧頂ければ幸いである.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.