日医ニュース
日医ニュース目次 第1292号(平成27年7月5日)

「子育て支援フォーラムin群馬」を開催
子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して

「子育て支援フォーラムin群馬」を開催/子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して(写真) 「子育て支援フォーラムin群馬」が六月十三日,日医,SBI子ども希望財団,群馬県医師会の共催により,群馬県・前橋市内で開催された.
 本フォーラムは,子育て支援と児童虐待防止に向けた啓発活動,情報提供を行うことを目的として,平成二十三年度から開催しているものであり,当日は二百六十四名の参加があった.
 永山雅之群馬県医理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(今村定臣常任理事代読)は,児童相談所における児童虐待の相談対応件数が年々増加している現状を憂慮.「虐待防止対策は一朝一夕に解決できるものではないが,本フォーラムを幼い命を虐待から守るための第一歩にして欲しい」として,本フォーラムの成果に期待感を示した.
 続いて,あいさつした月岡鬨夫群馬県医会長は,「虐待の原因は,貧困や親の未熟,価値観の変化等さまざまな要因があり,根が深い」とした上で,虐待から子どもを守るためにも,日頃から周囲が子ども達の変化を意識しておく必要があるとした.

子育て世代包括支援センターの全国展開を目指す─鈴木厚労省社会・援護局長

 その後は,今村常任理事を座長として,「人口減少社会の克服〜妊娠・出産から子育てへの切れ目ない支援システムの構築〜」と題し,鈴木俊彦厚生労働省社会・援護局長による基調講演が行われた.
 同局長は,人口減少の現状・原因として,経済雇用格差によって地方から大都市(東京圏)へ若者が流出していることを挙げ,今後も,その流出の増加が続けば,人口減少のスピードは更に加速すると指摘.
 その解決策として,地域ごとにさまざまな機関の関係者が機能の連携・情報の共有を図り,妊娠期から子育て期までの総合的相談や支援をワンストップで行えるよう,母子保健コーディネーター(保健師・助産師等)を配置する「子育て世代包括支援センター」の全国展開を目指して,平成二十六年度よりモデル事業を展開していることを紹介した.

虐待に対する連携等の現状と課題について四つの講演

 引き続き行われたシンポジウム(座長:今泉友一群馬県医理事)では,まず,溝口史剛前橋赤十字病院小児科副部長が,児童虐待を取り扱う医療現場では,虐待かどうか医学的判断を行う際に医師個人での対応が困難なことから,県内に全国で初めて「児童虐待防止医療アドバイザー制度」を設置したことを報告.虐待に関する専門的な医学知識や経験に基づき,助言をする役割を担うことで,医療者への負担軽減につながっているとした.
 伊藤理廣JCHO群馬中央病院医務局長・産婦人科主任部長・リプロダクションセンター長は,若年者の望まない妊娠の増加を問題視.その上で,群馬県産婦人科医会で作成した,学校ではなかなか触れられない具体的な避妊方法等を教えるための県内標準スライドモデルを紹介.各講師に配布し,講演に使用してもらうことで,若年者の望まない妊娠を少しでも減らしていきたいとした.
 星野崇啓さいたま子どものこころクリニック院長・小児精神科医は,虐待され児童養護施設に保護された子ども達の診療経験を基に,被虐待児の育ちの経過と対応について,市内の事例を交えながら概説.子どもにとって最も大切なのは保護者の「機能」ではなく「存在」そのものであり,子どもの健全な身体的・精神的な発育を第一に,子どもが安心できる生活を支援するためにも,子どもと保護者の共生を目指すことが重要であるとして,「まずは支援者が子どもに安心感を与え,受け入れることで,子育てに自信を無くしている保護者との信頼関係を築いていって欲しい」と述べた.
 加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長は,児童人口が減少しているにもかかわらず,保護児童数が増加する一方,要保護児童であっても児童福祉施設等で保護できていない現状を報告.その解決のためには,在宅支援を基本とする,全ての子ども家庭を視野に入れた新たな社会的子育てシステムを構築する必要があり,その実現のためにも「子ども・家庭基本法」の制定を提言したいとした.
 その後は,四人のシンポジストによる討議並びに出席者との間で活発な質疑応答が行われた.
 討議の冒頭には,オブザーバーとして参加した田村悟厚労省虐待防止対策室長から,児童虐待防止のためには,社会全体で継続的に取り組むことが重要であるとの考えが示された.
 なお,日医では,今年度,香川県など計三カ所で同様のフォーラムの開催を予定している.本紙で案内を順次掲載していくので,ぜひ参加して頂きたい.

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