日医ニュース
日医ニュース目次 第1293号(平成27年7月20日)

「次期診療報酬改定」「医療事故調」等,直近の課題に対する質問に理事者側が回答

 当日は,横倉会長のあいさつの後,6月24日開催の日本医学会臨時評議員会で6選された久史麿日本医学会長が,「今後も日医を支えていきたい」とあいさつ.その後,中川俊男副会長が「平成26年度日本医師会事業報告」を行った.
 引き続き行われた「第1号議案 平成26年度日本医師会決算の件」「第2号議案 平成27年度日本医師会会費賦課徴収一部変更の件」「第3号議案 平成28年度日本医師会会費賦課徴収の件」の審議では,今村聡副会長が3議案の提案理由をそれぞれ説明.「第2号議案」については,「医療事故調査制度が本年10月から開始されるに当たって,会費賦課徴収額の全体を見直すことなく,院内事故調査の費用を賄うための保険を創設するためのものである」とした.また,橋本省財務委員会委員長からは,5月8日開催の財務委員会における3議案の審議結果が報告され,3議案は賛成多数で承認された.
 その後の代表質問,個人質問に対する理事者側の回答の概要は以下のとおりである.
※会長あいさつの全文等,今回の定例代議員会の詳細は『日医雑誌』第144巻第5号8月号別冊をご参照下さい.

代表質問1 院内処方,院外処方の診療報酬の適正化について

「次期診療報酬改定」「医療事故調」等,直近の課題に対する質問に理事者側が回答(写真) 馬場惠介代議員(九州ブロック)からの院内処方,院外処方の診療報酬の適正化についての質問には,中川副会長が医薬分業の問題点として,院外の薬局への移動は,特に高齢者にとって大きな負担となっていること,院外処方は患者の自己負担が院内処方の3〜4倍以上になるケースがあることを説明.その上で,「院内処方と院外処方の報酬の不合理な格差は是正すべき」と主張した.
 また,塩崎恭久厚生労働大臣が経済財政諮問会議で「調剤報酬を抜本的に見直す」と述べたことにも言及.「調剤報酬への過度な財源配分を見直し,行き過ぎた医薬分業を押し戻すべき」との考えを示した.
 更に,厚労省の「かかりつけ薬局」を推進するとの方針については,「患者が信頼できる『かかりつけ薬剤師のいる薬局』の整備が急務である.大手チェーン薬局にも,地域包括ケアシステムを共に構築していく多職種の一員としての自覚を持って欲しい」と述べ,今後も中医協を中心に,調剤報酬のあり方についても検討していきたいとした.

代表質問2 平均在院日数について

 藤原秀俊代議員(北海道ブロック)の平均在院日数に関する質問には,中川副会長が,「平均在院日数の短縮は限界を超えていると認識しており,これ以上の短縮化は容認できないことを一貫して主張してきた.今後もその方針は変わらない」と強調.平均在院日数の短縮化を入院医療の指標とすることについては,(1)過度に短い入院期間は,医療機関の退院へ向けた調整機能が働きにくく,患者の精神的,身体的な負担となる(2)短期間で退院する多くの受け持ち患者の退院時サマリーの記入等に追われ,勤務医が疲弊する─などの問題点を挙げるとともに,「短い期間で退院させられる患者や家族の中には『追い出された』という思いを持つ方も少なくない」と,無理な短縮化に懸念を示した.
 更に,同副会長は,「これからも医療の本質をゆがめる平均在院日数の短縮化を始めとする指標の導入は受け入れない.患者と家族が安心して入院治療を受け,納得して退院できる医療提供体制の構築を目指していく」との決意を示し,理解を求めた.

代表質問3 次期診療報酬改定と消費税問題について

 利根川洋二代議員(関東甲信越ブロック)からの次期診療報酬改定と消費税問題に関する質問には,今村副会長が控除対象外消費税問題について,以下のとおり回答した〔次期診療報酬改定の見通しと同改定における薬価改定財源の扱いに関する回答については,代表質問(7)を参照〕.
 消費税問題の解決に向けた取り組みに関しては,日医が主催し,財務省主税局,厚労省保険局・医政局,三師会,四病協がそれぞれ委員として参加する「医療機関等の消費税問題に関する検討会」を会内に設置し,課税取引への転換の際に必要となる「見える化」の作業を進めていることを報告.
 その上で,「従前の診療報酬への上乗せ方式には無理があり,既に限界であることは,関係者間の共通の理解である.軽減税率は,抜本的解決への有力な選択肢であるが,単一税率の場合よりも事務負担が増えるため,医療機関等の事務負担軽減への配慮が課題となる」とした.
 更に,軽減税率を導入した場合の懸念として,社会保険診療が課税取引に転換することになり,いわゆる「補てん分の引きはがし」が起こることを挙げ,「この問題については医療界全体でしっかりと理解して取り組んでいく必要がある」と述べた.

代表質問4 臨床研修医に対する保険診療教育の充実を

 佐藤和宏代議員(東北ブロック)からの「臨床研修医に対する保険診療教育の充実を図るべき」との指摘に対しては,横倉会長が賛意を示した上で,「厚労省から日医が委託を受けて,保険診療に関する講義を行い,修了後に正式な保険医登録を可能とする案も,研修医の期間に保険診療が行えなくなる問題と併せて検討していきたい」と回答.更に,「研修医も保険医である以上,保険診療を学ぶことは“義務”であると考えており,2013年に『医師養成についての日本医師会の提案(第3版)』を取りまとめ,医学部1〜4年は,社会保障制度や医療政策及び医療経済等について,5〜6年生は診療参加型臨床実習において保険診療の重要性を含め,患者の生活に寄り添った医療・介護を学習することを提案している」と説明した.
 その上で,同会長は,「医療倫理に基づく保険診療教育は医師会にしかできない」と強調し,佐藤代議員からの「保険診療教育に関する3つの調査の実施」の提案についても,前向きに検討していく考えを示した.

代表質問5 「女性医師支援センター」について

 「女性医師支援センター」に関する豊田秀三代議員(中国四国ブロック)からの質問((1)資金面(2)コーディネーターの職務と育成(3)組織のあり方(4)事業の継続性)には,今村副会長が回答した.
 同副会長は,「女性医師支援センター」は厚労省からの委託を受けて実施している事業であり,厚労省が定める実施要綱に基づき,「女性医師バンク事業」「再講習会事業」を実施していることを説明した上で,(1)について,厚労省からの委託費をその活動の財源としているが,現在のところ,資金不足にはなっていないとした.
 (2)については,就業斡旋(あっせん)が主な業務であるが,広報活動にも参加頂いているとした他,昨年度にはコーディネーターの交替を一部実施するなど,その育成にも努めていることを報告した.
 (3)と(4)については,「日医が事業の中止,継続,内容変更を決定できるものではない」とした上で,「本事業は日医として重要な事業で,組織強化の面からも欠くことができない事業の1つである.万一,厚労省が本事業の廃止を決定するような場合は,日医が独自に取り組むことも検討したい」とした.

代表質問6 「在宅医療の問題点」について

 「在宅医療の問題点」に関する越智眞一代議員(近畿ブロック)からの質問には,松原謙二副会長が回答した.
 同副会長は,在宅患者訪問診療料の現在に至る経緯について,「中医協において,他の検証調査に先んじて影響調査が実施され,審議の結果,次回改定に向けて更に検討を進めることになった」と説明.「中医協では,既に次期改定に向けた本格的な議論が進められており,昨年度実施した検証の調査結果から,高齢者向け住まい等における在宅医療のあり方として,具体的な論点が示されており,在宅医療を行う医療機関は,居宅等を中心に診療する医療機関と,高齢者向け集合住宅を中心に診療する医療機関に分化しつつあるので,引き続き,是正すべきところはしっかり改善していきたい」と述べた.
 更に,「駐車禁止地区除外許可証を現行の緊急往診のみではなく,定期的な在宅医療についても対応させるべき」との指摘に対しては,「日医から警察庁に要望する方向で厚労省などと相談していく」と説明し,理解を求めた.

代表質問7 次期診療報酬改定の財源について

 次期診療報酬改定の財源に関して,(1)経済財政諮問会議等からの医療費抑制への対抗策(2)薬価の引き下げ並びに消費税率の引き上げ財源の使い道に対する日医の見解を問う徳永宏司代議員(中部ブロック)の質問には,横倉会長が回答した.
 (1)については,「医療費にあらかじめキャップをはめてしまうことの危険性を政府与党に対して説明している」と述べるとともに,年末の予算編成に向けて,政府に対して財源確保を強力に求めていくと言明.
 (2)の薬価改定財源については,「医薬分業」の推進とも密接に関連することを踏まえつつ,財源が厳しい中で,その財源等を活用し,技術を充実させることにより,医療の安全・安心を図ることが必要との考えを示した.更に消費税率の引き上げ財源については,診療報酬改定に配分するのが望ましいとする一方,「国の借金が1,000兆円を超え,労働力も減少するという極めて厳しい局面の中で,国民の理解を得て有効に消費税財源を活用し,国民皆保険を堅持しながら国民の健康を守っていくことを,皆で知恵を絞って考えなくてはならない」とした.

代表質問8 法医・病理に携わる医師の育成及び待遇改善について

 法医・病理に携わる医師の育成及び待遇改善について,具体的な長期施策を講じるよう,日医から国に対して提言すべきとの尾治夫代議員(東京ブロック)からの要望には,松原副会長が,より抜本的に事態の改善を図るためには,日医が中心となって医療界全体が社会に訴えていくような姿勢と取り組みが必要だと指摘.その際には,例えば,臨床と法医学・病理学の融合,あるいは交流の促進といった取り組みを進めることによって,相互に行き来しやすいキャリアパスを医療界,医学会全体として構築するなど,柔軟な発想が求められるとした.
 また,国に対しては,「死因究明に関する検討会」を新設することを求め,その議論の中で,死因究明体制の充実,特に人材の育成と確保の重要性を強調するなど,より積極的かつ具体的な提言をしていきたいと述べた.

個人質問1 医療番号制度に対する日医の見解を問う

 医療番号制度に対する日医の見解を問う橋本省代議員(宮城県)からの質問に対しては,石川広己常任理事が,(1)「マイナンバーを医療分野で用いるべきではなく,医療分野専用の番号または符号(医療等ID)を創設すること」を強く主張し,その考えは政府の成長戦略にも十分反映されていること(2)「医師資格証」による医師認証と,医療等IDによる患者の本人確認を組み合わせ,よりセキュリティを高める運用形態の検討も始めていること─などを説明.
 電子カルテの普及については,医療機関・医療情報の電子化を考える前に,各都道府県で様式が異なる地域公費の問題等,山積する課題を解決すべきであるとし,電子カルテ化が,強制的に押し進められぬよう注視していくとするとともに,「各地域・医療機関の特性や,国民感情を無視したICT政策の推進は,地域医療に混乱をもたらすだけでなく,医師・患者間の信頼関係を崩壊させることにもつながる.今後も現場の意見を十分に取り入れて提言を行っていきたい」とした.

個人質問2 診療報酬の改定について

 松山正春代議員(岡山県)からの診療報酬の改定に関する質問については,松本純一常任理事が回答した.
 同常任理事は,診療報酬改定に際しては,会内の「社会保険診療報酬検討委員会」でまとめられた「前回改定の評価」及び「次回改定に対する要望」に基づいて対応しており,エビデンスを添付する重要性も認識していることを強調.その上で,「初診料・再診料などの基本診療料が根拠もなく減額されることはあってはならない.前回改定で増点されたのは,あくまでも消費税率引き上げ分であり,純粋なプラスではない」とした.
 かかりつけ医の報酬である地域包括診療料・地域包括診療加算については,塩崎恭久厚労大臣が経済財政諮問会議で,「次回平成28年度改定で更なる評価を検討し,先行事例を収集し横展開する」との見解を示しているとし,大病院から診療所,中小病院への外来患者の誘導策が設けられるなど,外来の機能分化が推進される中,かかりつけ医機能を強化し,次期改定で更なる評価を求めていくと述べた.

個人質問3 医療事故調査制度について

個人質問4 医療事故調査制度「支援団体」としての都道府県医師会の役割について

「次期診療報酬改定」「医療事故調」等,直近の課題に対する質問に理事者側が回答(写真) 今眞人代議員(北海道),西田芳矢代議員(兵庫県)からの医療事故調査制度に関する質問には,今村定臣常任理事が一括回答した.
 まず,西田代議員からの同制度に対する「国民目線での検証システム」を設置すべきとの指摘には,まさにそのとおりであり,厚労省内に検証委員会を設置して,制度運営をチェックすることも一案との考えを示した.また,支援団体の支援内容の目安については,日医の「医療安全対策委員会」で原案を練って頂くのが適切とした他,解剖及びAiについての大学病院などとの調整に関しても,同委員会に検討を要請するとした.
 支援団体の運営経費については,第三者機関である「医療事故調査等支援センター」から業務委託を受ける部分は,一定の金額が支払われるよう厚労省と協議中であることを報告.遺族への報告書の様式についても,検討中であるとした.更に,都道府県医師会が支援団体として医療事故の定義に関する相談を受けた際に,対応に苦慮することのないよう,ある程度統一的な対応基準を設ける意向を示した.
 続いて,今代議員からの,同制度とWHOドラフトガイドラインとの関係についての質問には,厚労省の「同ガイドラインと整合的である」との解説を紹介した上で,同制度の見直しの際には,再度,検証することも重要とした.また,調査報告書については,当事者の過失や責任の判断材料とならない,純粋に医療安全対策に資する報告書を作成するよう,関係者に啓発や研修などを重ねていくことが重要だと指摘.支援団体の設置,運営に関わる,財政的,物理的,人員確保等の問題については,日医として,地域の医師会や各会員の負担が軽くなるよう,あらゆる方策を検討し,取り組んでいく考えを示した.
 更に,現在,日医として医療対話推進者を養成しているが,事故調査の専門医や,支援団体の前面に立って調査全般をコーディネートする医師会役員の研修などの取り組みも急ぎ実施したいとした.

個人質問5 健康寿命の延伸に対する日医の具体的な取り組みについて

 徳永剛代議員(佐賀県)からの「健康寿命の延伸に対する日医の具体的な取り組み」についての質問に,羽鳥裕常任理事は,日医としては生涯保健事業の体系化を目指し,その環境整備として健診データの標準化を進めていく意向を示した.その上で,具体策としては,まず禁煙の推進を挙げ,日医としても,2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目途に,受動喫煙防止の法制化を強力に支援していくとした.
 また,かかりつけ医からの受診勧奨などによるがん検診受診率の向上,平成24年度で平均46.2%にとどまっている特定健診の受診率の引き上げ,特定健診項目の見直し等も政府に強く働き掛けていくとした.
 更に,慢性疾患の治療中断の減少も極めて重要な課題との認識を示すとともに,日医の中でも「糖尿病対策推進会議」等を通して関連学会と連携していることを紹介.「今後も,エビデンスに基づくさまざまな施策の推進によって健康寿命の延伸へつなげていく」と述べた.

個人質問6 外国人観光客2,000万人時代を迎えてメディカルツーリズムに対する日医の考えを改めて伺いたい

 福田健代議員(栃木県)からの「外国人観光客2,000万人時代を迎えてメディカルツーリズムに対する日医の考えを改めて伺いたい」という質問には,石井正三常任理事が,従来の商業主義的なメディカルツーリズムは,日本の医の倫理とはなじまず,これまでの日医の基本的な考え方は変わらないとする一方,国際化の中で,国籍や宗教などによって医療にアクセスする機会を奪うことはあってはならないとした.
 また,国際貢献について考えるならば,日本医療研究開発機構(AMED)の活用等により,日本の優れた医療技術の更なる進歩と普及を進めることなどが大切だとの考えを示した.
 更に,「観光立国」を目指す国の方針の下,マスギャザリングメディシン(集団災害医療)への対応の必要性にも触れた上で,医療現場では,外国人・日本人の隔てなく,医療倫理に裏打ちされた真摯(しんし)な対応ができる体制づくりや制度整備が重要という,日医の変わらぬ方針を示した.

個人質問7 外国人患者受入医療機関に対する支援体制の構築について

 近藤邦夫代議員(石川県)からの「外国人患者受入医療機関に対する支援体制の構築」についての質問には,笠井夫常任理事が回答した.
 国の「観光立国」政策には,日医としても賛同するとしつつ,訪日外国人旅行者数が2,000万人に達した時,観光庁の統計によれば,単純計算で年間約80万人の患者が発生し,その多くは日本語でのコミュニケーションが困難で,昨年の訪日外国人のうち,非英語圏の人が大半を占めている現状を指摘.厚労省,消防庁などの中央省庁や地方自治体で対応を取りつつあるものの,医療情報サービスへの取り組みには地域差があり,更なる努力が必要とした.
 その上で,日医としても,外国人患者,医療機関に対する多言語の医療情報サービスの充実に,医師会間,更に行政や関係団体等との密接な連携を生かしながら,協力体制づくりを進めることが必要と考えており,テレビ電話や通訳ソフトなどICTの進歩も踏まえながら取り組んでいくとした.

個人質問8 総合診療専門医の養成,新制度下での女性医師への対応について

 鹿島直子代議員(鹿児島県)は,総合診療専門医の進捗状況や新制度下での女性医師等に関する日医の対応について質問した.
 小森貴常任理事は,総合診療専門医の養成について,日本専門医機構『専門医の在り方に関する検討会報告書』等の作成に関与し,実質的に地域医師会の協力がなければ,成りたたない記載となっていることを説明.
 更に,専門医制度改革が行われているこの時にこそ,日医生涯教育制度の改革を行うべきとの考えを示し,「専門医の認定・更新に関わる研修」や「診療報酬算定の要件に必要な,研修参加証明」の一元的な管理を,来年春に開始できるよう,検討を始めているとした.
 また,女性医師問題や地域偏在に関しては,「出産・育児・介護等と専門医の取得・更新との両立」「キャリア形成への配慮」について,日医からの要請により,女性の視点からの制度設計になるように,日本専門医機構でも女性の理事を中心に議論を行っているとした.

個人質問9 新興・再興感染症等に関する日医の対応について

 角田徹代議員(東京都)は,エボラ出血熱,デング熱などの再興感染症や新型インフルエンザ,MERS(中東呼吸器症候群)などの新興感染症などへの日医の対応について質問.
 道永麻里常任理事は,日医が平成9年に感染症危機管理対策室を設置し,迅速な情報提供に努めてきたこと,平成21年のインフルエンザA/H1N1の混乱を受け,各都道府県医師会と緊急連絡網を設定し,昼夜を問わず連絡を受けられる体制や感染症関係通知文書のメール配信を行っていることなどを報告.
 これらの感染症の国内発生時には,24時間体制で対応や情報提供をする必要があるとの認識を示す一方,常時24時間体制の維持には,体制の確保など課題もあり,今後検討していくとした.
 BSL-4施設の稼働については,「本年3月に早期稼働を求める声明を公表したこと」「5月に開催された『自由民主党・国際保健医療戦略特命委員会』においても要請を行ったこと」などを説明し,今後も政府への働き掛けを継続する意向を示した.

個人質問10 セルフメディケーション推進における医療営利化への懸念について

 濱本史明代議員(山口県)からの,セルフメディケーション推進における医療営利化への懸念に対しては,鈴木邦彦常任理事が回答した.
 同常任理事は,「健康寿命の延伸」の名の下に,スイッチOTCの促進等,営利企業に新たな市場を提供するための動きが活発であり,日医として細心の注意を払いながら対応していると報告.商品販売中心のドラッグストアが,かかりつけ薬剤師のいる薬局の機能を担保したとしても,真に地域住民の健康に頁献できるか疑問であるとした.
 また,安易に医薬品を用いるようなセルフメディケーションではなく,セルフケアの推進が重要であり,真の健康情報拠点は,かかりつけ医機能を持つ医療機関であると説明.日医としては,この考えを横倉会長が参画する経済産業省の「次世代へルスケア産業協議会」や,羽鳥常任理事が参加している厚労省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」等の場において,積極的に主張し,理解を求めていく考えを示した.

個人質問11 「かかりつけ医」と「総合診療専門医」の位置づけについて

 「かかりつけ医」と「総合診療専門医」に関する日医のビジョンを問う小野晋司代議員(京都府)の質問には,釜萢敏常任理事が回答した.
 まず,同常任理事は,総合診療専門医はあくまで学問的基盤を持つ専門医の1つとして位置づけることが重要とする一方,多くの医師が,専門性,診療の領域,診療の場を越え,患者と地域に寄り添う「かかりつけ医」として診療に当たっており,その役割が患者の多様なニーズに合致して,日本の医療制度を支える大きな柱になっているとの見解を示した.
 また,福岡・鹿児島両県医師会の「認定かかりつけ医制度」に触れ,かかりつけ医機能の強化こそが,今後の超高齢社会を支える重要な視点であり,新たな研修の機会を提供すべく検討していることを明らかにした.
 最後に同常任理事は,「かかりつけ医は,専門医制度全てを包含した幅広い概念であり,国民の健康を守り,かかりつけ医機能をより強固なものにするため,全力を尽くしていく」と述べ,理解を求めた.

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