日医ニュース
日医ニュース目次 第1295号(平成27年8月20日)

勤務医のページ

勤務医活動の活性化と医師会の課題
医療生協さいたま行田協立診療所所長/日医勤務医委員会委員 植山直人

組織率向上と勤務医活動の活性化

 現在,開業医の約85%は日医に入会しているが,勤務医は40%程度にとどまっている.横倉義武会長は,第2期目の就任会見で「組織を強くする」ことを方針の1つとして掲げ,より一層の医師会の組織強化のために,会内に「医師会組織強化検討委員会」を立ち上げる等,より実践的な議論と取り組みを推進している.
 前期の日医勤務医委員会に求められた諮問は「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」であり,今期は「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備─その推進のために日本医師会が担う役割─」である.これは,地域医師会活動に勤務医が積極的に加わることによって,勤務医が医師会に入会する機会が増えると考えられることから,その受け皿を整備することが必要であることを示している.
 医師会は単なる医師に対するサービス機関ではなく,現場の医療を担い,地域医療を支えながら発展してきた歴史を持っている.医師会や社会などに無関心な孤立した勤務医の増加を放置すれば,国民皆保険を始めとする日本の医療を守ることはできない.
 勤務医の入会促進においては入会のメリットが強調されているが,勤務医の活躍に焦点を当てた場合は,メリットよりもモチベーションが重要になる.

「三層構造」と勤務医活動のフレームワーク

 医師会には,郡市区等医師会と都道府県医師会,そして日医が別の法人組織として存在する.
 この組織形態は,各医師会が独立した自主的な組織であることを担保するものとなっており,自律的な医師の団体という考えを最大限に尊重したものである.一方,会員の身分や代議員の選出に関しては「三層構造」となっており,意見の集約に工夫が必要となっている.
 郡市区等医師会の勤務医役員は18・6%にとどまっており,勤務医会員の役員登用と共に,日医のこのことに対するイニシアチブや地域8ブロックの体制強化,更に各都道府県医師会の取り組みの強化が求められている.
 勤務医が意義ややりがいを感じる取り組みを行い,これに積極的に参加する会員を勤務医会員の核として,勤務医の声を地域医師会や日医の活動に反映させるフレームワークが必要である.

地域医師会での勤務医活動と勤務医の抱える問題への対応

 勤務医の活動を活性化するためには,医師会でのモチベーションを高める課題を提示することが重要である.
 勤務医の入会促進に関しては,「関心がある」(59・3%)「やや関心がある」(22・4%)と多くの郡市区等医師会が関心を示しており,その理由として「地域医療連携を促進するため」(81・7%)「医師会の会員数を確保するため」(64・3%)「勤務医の意見等を会務に反映させるため」(62・7%)「学校保健や地域保健について勤務医の理解・協力が必要なため」(51・3%)となっている(出典:「郡市区等医師会における勤務医に係る調査 報告書」日医勤務医委員会,平成26年2月).この点をみれば,地域医師会で勤務医が活躍できる環境は十分にある.
 一方で,勤務医が抱えている問題の解決に取り組むことも重要である.主要な問題としては,(1)キャリアの問題(2)医療トラブルに関する問題(3)労働問題(4)健康問題─などを挙げることができる.
 現在,新専門医制度が発足し,今秋には医療事故調査制度がスタートする.これらの問題において,医師会がイニシアチブを発揮し,勤務医の理解を得ることが求められている.
 労働や健康に関して,日医では「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」を発表しており,また日医の発案により実施されることになった厚生労働省の「医療勤務環境改善マネジメントシステム」が創設された他,各都道府県に医療勤務環境改善支援センターが設立されている.各都道府県医師会は,同支援センターの運営に積極的に関わり,成果を上げる必要がある.

各医師会の課題

 勤務医活動の活性化や組織率の向上を図るには,郡市区等医師会の勤務医の声が都道府県医師会に届き,ブロック会議を経て日医で議論され,政策に反映されることが重要であり,日医の方針も双方向で各医師会に反映される必要がある.
 しかし,郡市区等医師会や都道府県医師会の勤務医役員は少数であるために,勤務医の意見が反映されにくい.これを改善するには,情報の共有化や意見集約の機能を果たすフレームワークとしての勤務医委員会や勤務医部会の役割が不可欠である.
 (1)今後,地域医師会で必要となる主な取り組み:今後求められる取り組みとしては,主に以下のものが挙げられる.
 (1)医療事故調査制度への協力に関する課題(2)医師のキャリア・アップや研修支援システムの活用に関する課題(3)各都道府県に設置される医療勤務環境改善支援センターの積極的な活用(4)「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」の活用(5)男女共同参画に関する課題(6)日本医師会電子認証センターで発行している「医師資格証」の活用(7)地域包括ケア推進の課題.
 (2)勤務医に関する体制強化の課題:日医勤務医委員会では,委員会活動に加え,今期よりワーキング・グループを設置し,体制強化のための検討を開始した.主な課題として,以下のものが挙げられる.
 (1)『日医ニュース』の勤務医のページの戦略的活用(2)各都道府県・郡市区等医師会における勤務医活動の取り組み状況及び先進例の把握,また各都道府県・郡市区等医師会勤務医担当者への情報の提供(3)ブロックにおける勤務医対策の強化(4)都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会等のあり方の検討(5)勤務医との関係が強い日医の他の委員会との連携強化(6)医師会の取り組みや体制に関するいくつかのモデルの構築.
 日医勤務医委員会は,横倉会長からの諮問に答えるだけではなく,組織率向上に大きく貢献するために,これまで以上に活動していかなければならない.医師会組織強化の実現は,全ての医師会が総力を挙げて初めて達成できる難題でもある.日医勤務医委員会は,この目標達成の牽引車として全力を尽くすものである.

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