風しんの予防 メインビジュアル

Vol.10公開:令和7年11月

風しんの予防

神奈川県衛生研究所 所長
多屋 馨子

はじめに

2025年9月に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局は、国内に定着した風しんウイルスによる感染が3年間確認されなかったことなどから、日本は風しんの排除状態にあると認定しました。しかしながら、厚生労働省では、今後も風しんを流行させないために、引き続き、感染状況を適切に監視し、ワクチン接種を推進していくとしています。

風しんとは

風しんは、14~21日(平均16~18日)の潜伏期間を経て、発熱、発疹、リンパ節腫脹を主症状として発症します。主症状が3つともそろうのは約半数です。他に、眼球結膜の充血、関節痛、咳、鼻汁、頭痛、咽頭痛、倦怠感、下痢、硬口蓋こうこうがい(口内の上あご前方の硬い部分)・口蓋粘膜(口内の上あごの粘膜)の点状出血などが見られます。まれに血小板減少性紫斑病や脳炎を合併することがあります。発疹の出現前7日から出現後7日まで、周囲の人に感染する可能性があります。

妊娠中の風しんウイルス感染

妊娠20週頃までに風しんウイルスに感染すると、生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群(CRS:congenital rubella syndrome)を発症することがあります。CRSの症状は白内障、先天性心疾患、感音性難聴、低出生体重、色素性網膜症、血小板減少、精神運動発達遅滞などですが、妊娠初期ほどおなかの赤ちゃんへの影響は大きく、CRSの頻度も高くなります。

体温計と妊婦のイラスト

風しんの発生状況

風しんは、2012~2013年、2018~2019年に成人男性を中心とした全国流行があり、それぞれ45人、6人の赤ちゃんが先天性風しん症候群と診断されました(図)

風しんの発生状況グラフ

風しんの予防方法

1977年から風しんの定期接種が始まりましたが、男女ともが定期接種の対象になったのは1995年4月からです。1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性は風しんの定期接種の機会がなく、この世代の男性を中心に全国流行が起こっていました。国は2019~2025年3月の約6年間、この生年月日の男性を対象に風しん抗体検査を全額公費で実施し、抗体価が低かった場合には定期接種としてMRワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン)を受けられるようにしましたが、 抗体検査実施率は32.8%、ワクチン接種率は7.1%にとどまりました。

目薬を持ち、手で「2回」を示す医者のイラスト

現在、1歳(第1期)と小学校入学前1年間(第2期)にそれぞれ1回、合計2回のMRワクチンによる定期接種が実施されていますが、接種率が下がり、2024年度は1歳が92.7%、小学校入学前1年間が91.0%で、いずれも目標の95%を下回っていることがわかりました。2024年度の定期接種対象者で受けられていない場合は、2025年度と2026年度の2年間、定期接種として、MRワクチンの接種が可能です。この機会を逃さずに受けましょう。

2024年はアフリカ地域(特に南アフリカ共和国)で風しんが流行しました。再び風しんの国内流行を発生させないために、男女ともに1歳以上で2回の予防接種を受けておくことが大切です。女性は妊娠前に子どもの頃を含めて合計2回の予防接種を受けておきましょう。

目薬を持ち、手で「2回」を示す医者のイラスト

風しんについて、もっと知りたい方へ

国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト:風しん

※上記のサイトで紹介されている情報には、
医療従事者などの専門家向けの内容も含まれています。

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