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Vol.14公開:令和8年7月

摂食症(摂食障害)

国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センター 副院長・心療内科診療科長
河合 啓介

摂食症とは

辛そうに沢山食べている女性のイラスト

摂食症は、体重や体型への過度なこだわりが自己評価に強く影響し、食行動の異常を示す精神疾患群の総称です。代表的なものに、明らかな低体重を伴う「神経性やせ症」と、過食と代償行動(嘔吐や下剤乱用など)を特徴とする「神経性過食症」があります。近年では、「回避・制限性食物摂取症」や「むちゃ食い症(過食性障害)」も含めて、摂食症と理解されています。
これらの異常な食行動は、「やせたい」という個人の意志や性格の問題だけでは説明できず、当事者が抱える様々な心理的苦痛を一時的に和らげる「機能」を持つ場合があります。そのため患者は、「やめたいのにやめられない」という葛藤を抱えます。

*摂食症は、以前は摂食障害と呼ばれていました。近年、名称が変更されつつありますが、いまも摂食障害と表記されていることもあります。

症状・疫学・病態

摂食症は、主に思春期から若年成人期に発症します。国内では女子学生において、「神経性やせ症」は約0.4%、「神経性過食症」は約2.3%と報告されています。背景には、やせを理想とする社会文化的影響に加え、対人関係の困難や孤立といった心理社会的要因が関与しています。さらに、低栄養に伴う脳機能の変化、遺伝的素因、神経免疫学的異常なども関連する多因子疾患と考えられています。

身体面において、「神経性やせ症」では低血糖、徐脈、低体温、無月経、骨粗鬆症などが見られ、「神経性過食症」では電解質異常が問題となります。これらは生活機能を大きく損ない、「神経性やせ症」の死亡率は約5~6%と高いことが知られています。
また、精神面では過食後に、体型が予想以上に変化したように思え、それによって不安や強い気分の落ち込み(抑うつ状態)に悩まされることも少なくありません。

自分は摂食症かもしれないと心配している方向けのセルフチェック(表)があり、摂食障害全国支援センターが運営している「摂食障害情報ポータルサイト」に紹介されています。しかしながら、どの程度から病気といえるかを自身で判断することはたいへん難しいので、正確な診断のためには医療機関への受診が必要です。

拒食症のセルフチェック表

※摂食障害情報ポータルサイトの<トップ画面>→<摂食障害について>→<摂食障害のサイン>と進むと、「セルフチェック」とその解説が見られます。

治療

治療には身体面と心理面の双方からのアプローチが必要です。重度の低栄養状態では、入院による全身管理を優先します。心理的治療としては摂食症のための認知行動療法(CBT-E: enhanced cognitive behavior therapy)や家族療法などが有効とされています。
治療の目的は単なる体重回復にとどまらず、背景にある心理的課題に取り組み、患者が治療者とともに回復を目指すことにあります。

家族や周囲の関わり

家族や周囲の関わりも重要です。摂食行動はストレスへの対処としての側面を持つため、「食べればよい」といった単純な指摘や叱責は逆効果となることがあります。これらはすべて「心配だからこそ」の言葉だと思いますが、行動そのものを否定するのではなく、背景にある苦痛に共感し、理解しようとする姿勢が必要です。

受診の勧め

摂食症は早期発見・早期介入が重要ですが、受診するには心理的・情報的な障壁が存在します。
国立国府台医療センター心療内科が精神保健対策運営費補助金により運営している電話相談事業「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」の集計結果(図)によれば、相談者は本人および母親が中心であり、相談内容としては受診に関するものが最も多いことが示されています。また、未受診の状態や治療中断に至っているケースも少なからず認められました。

摂食障害全国支援センター:相談ほっとラインの集計結果円グラフ

受診先に迷う場合には、専門の相談窓口を活用することが有用です。本人や家族が相談でき、受診できる医療機関も探せます。本人や家族にとって重要な医療への橋渡しとなります。

スマートフォンを操作する女性のイラスト

摂食症の相談窓口

摂食障害全国支援センター:
相談ほっとライン

受診先の相談

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