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Vol.16公開:令和8年11月

RSウイルスから赤ちゃんを守る
-「ただのかぜ」ではない理由と、
今できる予防-

国立成育医療研究センター小児内科系専門診療部感染症科 診療部長
大宜見 力

はじめに

RSウイルスは、鼻やのどに感染するありふれた呼吸器ウイルスです。多くの子どもが2歳までに一度は感染しますが、一度かかっても再感染します。年長児や大人では、かぜのように軽い症状で済むことが少なくありませんが、初めてRSウイルスに感染する年齢が低いほど、細い空気の通り道まで炎症が広がり、細気管支炎や肺炎として重症化しやすくなります。特に生後6カ月未満の乳児は注意が必要です。
以前は冬に流行のピークを迎えることが多かったものの、近年の日本では夏に流行を迎える年もあり、地域や年によって流行の時期は大きく異なります。

うつり方(感染経路)と潜伏期間

RSウイルスは、咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことでも、ウイルスが付いた手指、おもちゃやドアノブなどに触れた手で、口や鼻、目に触れることでもうつります。家庭や保育施設では、こまめな手洗い(手指衛生)が大切です。感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、通常2~8日間です。周囲の大人やきょうだいが軽いかぜ症状でも、赤ちゃんにうつすことがあります。

症状と、受診の目安

「鼻水」「咳」「発熱」から始まり、「咳が強くなる」「ゼーゼーする」「呼吸が速い」「胸がペコペコへこむ」「ミルクや水分がとれない」といった症状が出ることがあります(表1)。

表1:RSウイルスに感染した時にみられる症状

特に生後6カ月未満、早産の子や、心臓・肺の病気、神経筋の病気*、免疫の病気がある子は重くなりやすく、生後間もない乳児では無呼吸にも注意が必要です。「呼吸が苦しそう」「顔色が悪い」「意識がおかしい」「水分が飲めない」「尿が少ない」など異変(表2)に気づいたら、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

*神経筋の病気:筋肉や末梢神経、脊髄の運動神経が原因で起こる病気。筋力が弱い、呼吸機能などに障害があるといった症状がある。

表2:受診の目安

治療

小児RSウイルス感染症に特効薬はありません。こまめな水分補給、鼻づまりへの対応、必要に応じた酸素、点滴、呼吸管理などで回復を支えます。抗菌薬はRSウイルスそのものには効かないため、細菌感染の合併が疑われる場合を除いて、原則として使用しません。

予防-赤ちゃんを守るためにできること

予防するためには以下の方法があります。

1予防の基本-みんなで手洗い、咳やくしゃみを飛ばさない

手洗い(手指衛生)、よく触る物の清掃、咳がある時のマスクや咳エチケットは、家庭内で赤ちゃんへRSウイルス感染症をうつす機会を減らします。

両頬に赤い発疹が表れている子供の写真

2乳児に投与する抗体製剤

RSウイルスによる重症化を防ぐため、乳児に投与する抗体製剤があります。重症化リスクのある子どもは保険適用の対象ですが、基礎疾患のない乳児では原則として自己負担です(2026年6月現在)。ただし、一部の自治体では助成制度があり、対象や自己負担額が異なります。詳しくは、かかりつけ医に相談してください。

3妊婦のワクチン接種

2026年度から日本では、妊娠28週0日~36週6日の方を対象に、母子免疫RSウイルスワクチンが定期接種になりました。接種によって妊婦の体内でつくられたRSウイルスから赤ちゃんを守るための抗体が、胎盤を通って赤ちゃんへうつり、生後早期の重症化を防ぎます。

ワクチンを摂取する妊婦のイラスト

今できる予防を実践して、RSウイルスからみんなで赤ちゃんを守りましょう。

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