
Vol.7公開:令和7年5月
スマホ依存
-若者(青年期)への影響と対策-
東邦大学医学部精神神経医学講座
講師 舩渡川 智之

スマートフォン依存(スマホ依存)とは

内閣府の調査によると、18~29歳の年代ではスマートフォンやタブレットの普及率がほぼ100%に達しています。現代社会において、スマートフォンは生活に不可欠なツールとなっていますが、特に発達途上にある青年期(ここでは10歳頃~20歳代前半頃を指す)における過度な使用は、深刻な健康上の問題を引き起こす可能性があります。
スマホ依存とは、スマートフォンの使用をコントロールできなくなり、日常生活に支障を来している状態を指します。日本の調査では、高校生の約10%、大学生の約25%に依存の疑いがあるとされています。
原因は複合的
スマホ依存の原因は複合的で、現実世界での不安やストレス、抑うつなどの心理的要因、人間関係の希薄化や、SNSでの承認欲求といった社会的要因、そして魅力的なアプリやコンテンツの増加などの環境的要因が挙げられ、これらの複数の要因が背景となってスマホ依存に陥ります。

主な症状とさまざまな影響

主な症状には、使用時間の増加、使用制限時の強い不安やイライラ、学業や仕事への支障などがあります。これは脳の報酬系(※1)が過剰に刺激され、ドーパミンという神経伝達物質が大量に分泌されることによって生じます。特に前頭前野(※2)への影響が大きく、認知機能や感情制御機能の低下を引き起こす可能性があります。思春期・青年期は、脳の発達が著しいとても重要な時期であり、その影響は成人よりも顕著になると考えられます。スマホ依存により、表のようなさまざまな影響がもたらされることがあります。
※1:「気持ちが良い(快感)」と感じた時に活性化される脳の神経回路システム。アルコールや薬物摂取、ギャンブルやゲーム、おいしい食べ物などに刺激される。
※2:脳の最前部、額のすぐ後ろにある脳の領域。記憶、感情や行動の抑制を管理・支配している。


スマホ依存にならない・
進行させないために
スマホ依存の対策は、使用時間の制限やデジタルデトックス(※3)などの自己管理、家族や友人との対話時間を増やすなどの環境調整が基本となります。スマホ依存が進行している場合には、認知行動療法やカウンセリングなどの専門的な治療が必要になります。各都道府県に設置されている精神保健福祉センターに相談したり、専門医療機関で治療を受けることになります。
スマホ依存は、重度になると複雑な問題が生じ、治療が難しくなるため、予防することや早期に発見することが重要です。少しでも気になる症状があれば、一人で悩まず、早めに専門家に相談することをお勧めします。下記に紹介する精神保健福祉センターでは、本人だけでなく、家族の相談にも応じてもらえます。適切な対策と治療により、スマートフォンとの健全な関係を取り戻すことができます。
※3:パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を使用しないこと。
相談できる施設
各都道府県に設置されている
精神保健福祉センター一覧
(全国精神保健福祉センター長会
ホームページより)
治療が受けられる施設
ゲーム障害・ネット依存・
スマホ依存の治療施設リスト
(独立行政法人国立病院機構
久里浜医療センター ホームページより)
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