
Vol.8公開:令和7年7月
やけどをしてしまったら
日本医科大学形成外科
教授 小川 令

やけどとは
冬はストーブやヒーターによるやけどが増える季節ですが、夏も花火やバーベキューでやけどをすることがあります。また、海やプールで日焼けして肌が赤くなるのも、やけどの一種です。やけどは医学的には「熱傷」と呼ばれます。
やけどの原因は、火炎、熱湯、蒸気、油、薬品、金属、日光など多岐にわたります。原因によって、やけどの重症度は異なります。たとえば、100℃の熱湯に一瞬触れた場合には、軽傷で済むこともありますが、接触時間が長くなると深いやけどを引き起こすことがあります。一方、バーベキューの火が衣服に燃え移った場合、衣服が燃え続けることで皮膚に長時間にわたって熱が加わり、より深刻なやけどを引き起こします。また、サウナは80~100℃と高温ですが、やけどしにくいのは、空気の熱伝導率が金属や水より低く、熱の伝わり方が緩やかなためです。したがって、やけどの重症度は、熱源の「温度」だけでなく、皮膚に接触していた「時間」、さらには「熱の伝わりやすさ(熱伝導率)」によって決まります。

やけどの応急処置
1熱源から離れる
やけどを重症にしないためには、「熱源からすぐに離れる」ことが大切です。たとえば熱湯に触れた場合、反射的に手を引っ込めることで、深いやけどを防ぐことができます。しかし、衣服に火がついた場合は、すぐに水をかけるか、可能であれば服を脱いで消火することが重要です。ただし、皮膚に張り付いた服を無理に脱ぐと、やけどを悪化させる可能性があるため注意が必要です。
2冷却する

熱源から離れることができたら、次に「冷却」が重要です。 やけどした部分は一時的に高温になり、そのままにしておくと組織の損傷が進行してしまいます。そのため、流水でしっかり冷やすことが大切です。ビニール袋に入れた氷や、保冷剤をタオルで巻いて患部に当てても良いですが、胸などのやけどの場合は、狭心症のような症状が出ることがありますので、冷やしすぎには注意が必要です。
「少し冷やせば大丈夫」と思うかもしれませんが、実は長めに冷やすことが必要です。長く冷やすことで血管が収縮し、血流が一時的に抑えられ、組織全体の炎症が軽減される効果が期待できます。
やけどの程度によりますが、流水で10分以上は冷やすことが推奨されています。特に深いやけどのリスクがある場合は、十分に冷やすことで炎症や水ぶくれの発生を最小限に抑えることができます。
やけどの応急処置を適切に行うことで、重症化を防ぎ、回復を早めることもできるのです。

受診のタイミング
-水ぶくれができたら・皮がむけたら


皮膚が少し赤くなる程度の軽度のやけどであれば、適切に冷却を行い、炎症を防ぐことにより回復する可能性が高まります。しかし、水ぶくれができたり、皮がむけたりした場合は、医療機関を受診し、炎症を抑える塗り薬(抗炎症薬や抗生剤軟膏)や、必要に応じて痛み止めや抗生剤(抗菌薬・抗生物質)の飲み薬を処方してもらいましょう。
その後のケアとして、水ぶくれが破れた場合でも、感染を防ぐために水道水で洗浄し、清潔に保つことが重要です。 水道水がしみるときは、ペットボトル500 mLの水に小さじ一杯(5g弱)の食塩を入れ、生理食塩水を作成して、洗いましょう。そして、きずを保護するために、ハイドロコロイド絆創膏などの非固着性創傷被覆材を使用することが推奨されます。医師の指示に従って、適切な処置を行いましょう。
おわりに
やけどは、とにかく応急処置が大切です。 最初は軽症に見えても、数時間~翌日にかけて水ぶくれができることがあります。 予想以上に深くまで熱が伝わっていることもあるため、心配なときは迷わず医療機関を受診してください。
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