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Vol.9公開:令和7年9月

川崎病の症状を知っておこう

東京都立多摩南部地域病院 副院長
三浦 大

はじめに

川崎病は0~4歳に多い原因不明の発熱性疾患で、川崎富作先生が1967年に世界で初めて報告しました。全身の血管に炎症(血管炎)が起き、適切に治療しなければ心臓の筋肉に血液を送る冠動脈かんどうみゃくのこぶが20~30%の患者に生じます。
何らかの病原体の感染によって、本来は病原体を取り除く仕組みである免疫が異常に反応し、血管炎を引き起こすと考えられます。この30年間、小児人口の減少にもかかわらず、川崎病の発生数は増え続けていました(図)。新型コロナウイルスが流行し感染対策が厳しかった2020年には一時減少しましたが、最近、また増加傾向にあります。

グラフ 東京都立小児総合医療センターにおける急性期川崎病の症例数の推移

気をつけるべき症状

主な症状は、①発熱、②目の充血、③唇や舌の発赤ほっせき、④発疹ほっしん、⑤手足の発赤、⑥首の腫れの6つです(表1)。①では、通常は38度以上の高熱が続き機嫌も悪くなります。発熱が3~4日以上続くと、②~⑥の症状が認められるようになります。気になる症状は、スマートフォンで写真を撮って診療の際に医師に見せると良いでしょう。
②では、白目の部分の血管が拡がって赤くなります。目やにはほとんど出ません。
③では、唇が赤くなり、腫れたりひび割れたりすることもあります。舌も赤く腫れ、ブツブツがみられます(いちご舌)。
④では、いろいろな形の発疹が全身(特に陰部やへその周り)に出ます。BCGの接種部位の発赤も特徴です。
⑤では、手足が硬く腫れて赤くなり、回復期に指先の皮がむけることがあります。
⑥の首のリンパ節の腫れは3歳以上に多く、しばしば発熱と一緒に出現します。

表1 川崎病の診断の目安(主な症状)
発疹や充血が現れた子どものイラスト

急性期の治療

検査所見(表2)も参考に、川崎病と診断されれば入院が必要です。標準的な治療は、血液製剤である免疫グロブリン製剤の点滴静注とアスピリンの経口投与です。効果があれば速やかに解熱しますが、15~20%の例では発熱が続くか再燃します(不応例)。この不応例の予防や治療のために、ステロイドホルモンのほか、シクロスポリンやインフリキシマブなどの薬剤が用いられます。

表2 川崎病の診断の目安(検査所見)

おわりに

病院の待合席に座っている親子のイラスト

およそ2~3%に冠動脈瘤かんどうみゃくりゅうが残ります。主な原因は免疫グロブリン不応例や診断・治療が遅れた場合です。現代では、冠動脈瘤の約70%は退縮して正常化し、大きなこぶになることはまれ(0.1%)です。冠動脈が正常で経過した例でも、5年間は通院して検査を受けてください。
子どもの発熱が続く場合は、川崎病の可能性があります。時期を失さない診断と治療が大切ですので、早めに小児科を受診しましょう。

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