白クマ
日医白クマ通信 No.1054
2008年11月27日(木)


定例記者会見
「2008年4月の診療報酬改定の影響に関する検討結果について」
―中川常任理事

中川俊男常任理事


 中川俊男常任理事は、11月26日の定例記者会見で、2008年4月の診療報酬改定の影響について見解を示した。

 日医では、すでに、(1)日医「2008年度緊急レセプト調査(4〜6月分)」、(2)日医・TKC全国会「平成20年診療報酬改定後の医業経営動向」、(3)厚労省「最近の医療費の動向(メディアス平成20年4〜6月)」―などを基に改定の影響について分析してきた(それぞれ、8月6日、11月19日、11月12日の定例記者会見参照)が、今回、これら3つのデータをあらためて比較、検証したものである。

 その結果、保険診療収入の前年同期比は、病院がかろうじて増収となったものの、診療所ではすべてのデータで減収になった。さらに、病院の増収分は大学病院に集中しており、個人立など小規模病院では、診療報酬改定や診療所からの財源移転による増収効果は見られなかったとしている。

 同常任理事は、地方の小規模病院は依然として厳しい状況にあるのではないかとの懸念を示し、「国民会議等でも主張しているが、医療崩壊を食い止めるためには、大病院や基幹病院に偏重しない財源配分が必要だ」と述べた。

 また、病院、診療所ともに、経常利益率が下がり、医業収入に対する材料費・委託費の増加や給与費比率の上昇が見られた。特に、病院では、保険診療収入は増加したが給与費などの固定費がさらに増加し、損益分岐点比率は94.9%(前年92.6%)と悪化。診療所では、保険診療収入が減少しても給与費を圧縮するわけにはいかず、損益分岐点比率は98.9%(前年96.2%)と、100%(超えれば赤字)に限りなく近づいた。

 これについて、同常任理事は、「給与費負担の増加は、医師等、医療従事者確保のためのコスト増と推察される。医師確保対策は、診療報酬の確保と両輪で進めなければならない」と強調した。

 さらに、中医協でも議論になっている外来管理加算見直しの影響については、日医レセプト調査の算定回数の減少等から試算すると、診療所での減額幅は805億円となり、当初見込みの240億円を大幅に上回った。病院(一般病床200床未満)は、後期高齢者の外来管理加算の点数引き上げが行われたものの123億円の減額になるとしている。

 これに関して、中医協の答申書(2008年2月13日厚生労働大臣に提出)では、初・再診料、外来管理加算、入院基本料等の基本診療料の在り方を検討し、今後の診療報酬改定に反映させるとあり、また、中医協検証部会(3月26日)では、財源が当初見込みと異なる場合には、対策を考えなければならないとの発言もあったことを指摘。そのうえで、同常任理事は、「今国会に提出された政府管掌健康保険の国庫負担を健康保険組合などに肩代わりさせる健康保険特例措置法案が成立しない見込みとなっており、前提条件がこわれている。以上のような改定の影響から、基本診療料の枠組みの中での外来管理加算の在り方の見直しに先立ち、緊急の対応策も求められる」との見解を示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

◇定例記者会見資料はこちらから
 ⇒ http://www.med.or.jp/teireikaiken/


  日本医師会ホームページ
http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association.
All rights reserved.