白クマ
日医白クマ通信 No.1167
2009年8月6日(木)


定例記者会見
「2008年度の医療費」に対する日医の見解(その2)
―中川常任理事

定例記者会見


 中川俊男常任理事は、8月5日の定例記者会見で、7月17日に厚生労働省が公表した、「2008年度の医療費」について、前回29日の会見につづいて、日医の分析結果と見解を以下のとおり示した。

 種類別医療費の伸びについて、2008年度の医療費の対前年度比は全体で1.9%増であり、医科入院1.9%増、医科入院外0.2%増と入院(特に病院)に手厚い改定であったことがうかがえる。また、歯科医療費は2.6%増だが、絶対額ではここ数年ほぼ横ばいで、調剤医療費は5.3%増と突出している。2008年度の調剤医療費の伸びの内訳は、院外処方・長期投薬などから来る処方せん枚数(1.8%増)や投薬日数(4.6%増)の増減によるものが6.4%増、薬価改定分が5.2%減、その他の薬剤単価アップ分2.6%増、その他1.5%増と推計される。薬価改定以外の薬剤単価アップ分は2007年度も2.2%であり、新薬の拡大、高価格品のシェア拡大等によって、年2%程度単価が上昇しているのではないかと推察した。

 一方、診療報酬改定の検証を病院と診療所に分けて行ったところ、いずれも改定時の予想を下回っていた。医療費は「一日当たり医療費×受診延べ日数」で示される。診療報酬は一日当たり医療費を決めるものであり、2008年度改定では、病院はプラス改定になった。しかし、受診延べ日数が減少したため、病院も、プラス改定の効果が十分に確保できなかったと分析している。

 さらに、病院(入院)の受診延べ日数が、ここ数年一貫して対前年度比マイナスである背景には、療養病床数の削減のほか、一般病床の平均在院日数の短縮化などがあるとした。一方、診療所(入院外)の受診延べ日数が、2006年度以降マイナス幅が拡大している点については、人口増減・高齢化による受診延べ日数の伸びに比べ、長期投薬や受診抑制の影響が大きかったと考えられる。ただし、長期投薬はこの1〜2年で急速に拡大したわけではないので、受診抑制が起きていることを否定できないとした。

 これらから、同常任理事は、(1)医療全体の底上げのために、入院だけではなく、入院外においても診療報酬の引き上げが必要である、(2)2008年度の診療報酬改定によって、対前年度比2.5%増になるはずの病院医療費は、実際には1.4%増、0.7%増になるはずの診療所医療費は、実際には0.3%増であり、さらなる医療費の配分が必要である、(3)診療報酬引き上げの成果が期待どおりに得られない背景には、受診延べ日数の減少があり、入院では平均在院日数の短縮化、入院外では長期投薬および受診抑制によって減少していると考えられ、特に、受診抑制による重症化が懸念される、(4)調剤医療費については、引き続き、分析・検討を重ねたい―との見解を示した。

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