白クマ
日医白クマ通信 No.1189
2009年10月15日(木)


定例記者会見
「日本医師会の提言―新政権に期待する―」について
―中川常任理事

定例記者会見


 日本医師会は、「日本医師会の提言―新政権に期待する―」をまとめ、10月 14日の定例記者会見で、中川俊男常任理事が公表した。(全文は、日医ホームページに掲載)

 中川常任理事は、冒頭、本提言の趣旨について「新政権は、社会保障費削減の撤回、医療費の増加を掲げているが、改めて日医の医療政策を説明したいと思い、取りまとめた」としたうえで、長妻昭厚生労働大臣、副大臣、政務官にも提出したことを明らかにした。

 日医執行部の任期(2年)ごとに公表しているグランドデザインとの違いについては、「グランドデザインは、日医が考える、あるべき医療の方向性をまとめたものだが、本資料は、新政権にむけての政策提言資料であり、深刻な医療崩壊の実態を示すとともに、重要度かつ優先度の高い個別課題を取り上げている」と説明。

 医療費抑制政策が医療崩壊を引き起こしたことを資料から示したうえで、緊急提言として、「診療報酬の大幅な引き上げ」と「患者一部負担割合の引き下げ」を掲げた。

 また、高齢者のための医療制度については、「新政権は、マニフェストで、現在の後期高齢者医療制度を廃止するとしている。現在の制度は、世代間の負担の不均衡を問題に創設されたものであり、廃止することは再びこの問題を浮び上がらせることになる」と述べ、日医が考える保障の理念による高齢者のための医療制度を改めて説明した。

■日本医師会の提言―新政権に期待する―■

 提言は、第1部の「総論」と第2部の「各論」を柱とし、総論は、1.社会保障費削減政策を振り返る、2.医療崩壊の実態、3.医師不足対策、4.国民皆保険を守る財源についての検討、5.国民皆保険を守るための日本医師会緊急提言、6.医療・介護の強化によって日本の再生を、各論は、1.日本医師会「高齢者のための医療制度」、2.新医師臨床研修制度を見直し、地域で医師を育てる、3.2010年度の診療報酬改定において解決すべき課題、4.医療機関経営を揺るがす課題―からなっている。

 総論5の「国民皆保険を守るための日本医師会緊急提言」のうち「診療報酬の大幅かつ全体的な引き上げ」については、診療報酬が2002年度から2008年度の間に累計7.7%も引き下げられたことで、医療機関の経営健全性が大きく損なわれ、医療崩壊に至ったことを指摘。病院と診療所の連携の下、切れ目のない、安心の医療を提供するためには、診療報酬引き上げによる地域医療の全体的な底上げが不可欠であると強調している。

 一方、「患者一部負担割合の引き下げ」については、雇用環境等の悪化に歯止めがかからないうえに、諸外国に比べて高い負担率が受診抑制を招いているため、まずは早期発見、早期治療が重要との観点から、外来の引き下げを優先することとし、(1)0歳から義務教育就学期間中は、外来患者一部負担を無料にする、(2)義務教育終了後の現役世代については、現在の3割負担を2割負担に引き下げる、(3)70歳以上は一律1割負担にする―ことを提案。給付費の増額には、保険料の引き上げではなく、公費で対応することを求めている。

 各論1の「日本医師会『高齢者のための医療制度』」では、基本的スキームとして、保障の理念の下で75歳以上の高齢者を手厚く支えるため、医療費の9割を公費負担とし、保険料と患者一部負担は合わせて医療費の1割で、患者一部負担割合は所得によらず一律、運営主体は都道府県とする案を提示している。

 各論2の「新医師臨床研修制度を見直し、地域で医師を育てる」では、医師不足対策として、医師数をOECD加盟国並みにするべきだとし、現状の1.5倍を到達目標に置きつつも、日本が人口減少社会に転じたことなどから、中長期的に現状の約1.1〜1.2倍にすることが妥当だとの見解を示している。

 このほか、優先度が高い個別課題として、各論3の「2010年度の診療報酬改定において解決すべき課題」では、「レセプトオンライン化への配慮」と「外来管理加算5分要件の撤廃」を掲げている。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
◇関連資料はこちら⇒PDF(570KB)


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