白クマ
日医白クマ通信 No.1358
2010年12月7日(火)


定例記者会見
「ペイアズユーゴー原則は社会保障制度に適合するのか」
―三上常任理事

定例記者会見


 三上裕司常任理事は、社会保障審議会介護保険部会が11月30日に「介護保険制度の見直しに関する意見」を公表したことを受けて、翌日の記者会見で日医の見解を述べた。

 同常任理事は、まず、意見書に対し、「我々が主張した意見が取り入れられており評価する」としたうえで、「しかし、多くの項目が両論併記であることは残念と言わざるを得ない」と述べた。なかでも、今回の介護保険部会で議論の焦点となった”給付と負担”について、政府の方針である、”ペイアズユーゴー原則”に則り、利用者負担増が強く打ち出されていることを受けて、「こうした夢のない原則は、果たして社会保障制度に適合するのか、はなはだ疑問である」と強調した。

・各論への日医の見解

 そのうえで、三上常任理事は、意見書の各論のそれぞれの項目に対して、日医の見解を述べた。

 「介護職員処遇改善交付金」については、平成23年度末で終了し、必要な財源が示されないまま、介護報酬改定で対応するとした意見が強く書かれたことを残念とした。その場合には、保険料の大幅な上昇が避けられず、被保険者の負担が大きくなることから、「公費財源を確保したうえで、処遇改善の取り組みを継続すること」とした意見を強く支持するとした。

 「新しいサービス類型」に関して、地域包括ケアシステムの構築について異論はないとしたうえで、24時間対応の定期巡回・随時訪問サービスに対して、「現在の訪問介護や、夜間対応型訪問介護サービスを整備すれば、新サービスの創設は必要ない」と述べた。

 「小規模訪問型居宅介護の複合型サービス」については、経営の安定化や職員の労務管理から見て、一定の規模と事業所との併設を行うべきとし、「医療ニーズの高い利用者の安心感や安全担保から、老人保健施設や有床診療所との併設で行うことが良い」と述べた。

 「介護福祉士等によるたんの吸引などの実施」については、法整備を行うべきであるとの表現に修正されており、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」等において引き続き議論したいとした。

 「介護療養病床」については、両論併記となったものの、「介護療養病床の廃止方針を撤回すべき」との強い表現で記載されたことを評価した。

 「認知症を有する人への対応」について、「認知症サポート医を適切に評価するべき」と記載されたことを評価した。

 「家族介護者支援」について、「緊急時に迅速に対応出来るような仕組みを含めて、ショートステイの活用を図ること」とされたことに対して、「日医が長年主張してきたことであり、高く評価する」と述べた。

 「地域包括支援センター運営」については、「地域のワンストップサービスを実現させるため、総合相談や虐待防止、権利擁護、包括的継続的なケアマネジメントなどの機能を発揮させることのほか、地域支援事業をより活用するため、十分な財源確保が必要である」との考えを述べた。

 「ケアプラン作成に関する利用者負担の導入」について、両論併記ではあるが、利用者負担の導入反対と強い表現で書かれたことについて、「我々を含めた、多くの委員の意見の表れと考える」と述べた。

 「要介護認定」については、「以前に、要介護認定の在り方を議論する場にいて質問した際、介護給付費分科会での所掌事項ではないとの回答を受けており、所掌分掌を明確にするように指摘している最中である」と述べた。

 「介護サービス情報公表制度と指導監督」については、「我々が以前から指摘していた、情報公表制度の手数料事業者負担廃止が示されたことは高く評価する」と述べ、また、指導監督の項目で、指導の一部を指定法人に委託出来るようにすべきと記載された意見については、「中立性、公平性を担保するため、委託する指定法人要件について、政省令等を注視していきたい」と述べた。

 「多床室の給付範囲の見直し」については、介護保険部会で、「介護保険法48条に、介護サービス費に減価償却費が含まれていないとの趣旨が書かれており、現在の給付は、法律に違反して支払われてきたのか」と再三指摘している事項であると説明。厚生労働省からは、「交付金等では、ユニット型と同等に取り扱っている」との回答があったが、介護報酬との関連事項であるため、介護給付費分科会で引き続き指摘していきたい」と述べた。

・介護保険が国民の安心と安全を支える制度になる法律改正を

 会見の終わりに、三上常任理事は、「今回の意見書を基に、来年の法改正を目指して法案が整備されることになるが、介護保険制度が創設されて10年が経過し、我が国の高齢者を取り巻く状況も変化しているなか、政府与党、厚労省においては、介護保険が国民の安心と安全を支える制度になる法律改正を、ぜひともお願いしたい」として、今後、政府与党などへの働き掛けを行っていく考えを示した。

◆問い合わせ先:日本医師会介護保険課 TEL:03-3946-2121(代表)


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