白クマ
日医白クマ通信 No.1539
2012年3月30日(金)


定例記者会見
「地域医療対策委員会報告書まとまる」
―鈴木常任理事

答申


 鈴木邦彦常任理事は3月28日の定例記者会見で、地域医療対策委員会が取りまとめた報告書の内容を説明した。

 本報告書は、原中勝征会長からの諮問「国民医療を確保するための地域特性と地域連携のあり方について」に対して、2年間にわたり検討を重ねた結果、取りまとめられたものであり、3月21日に青木重孝委員長(三重県医師会副会長)から原中会長に提出された。

 その内容は7章で構成されている。第2章「地域連携における医療圏のあり方」では、特に地方において、医療圏内の医療完結度が低く、提供される医療についても格差が大きいため、不安定な医療提供体制となっている2次医療圏の現状を説明した上で、医療需要と供給の把握、介護圏・救急医療圏との関わり、4疾病5事業におけるそれぞれの圏域との関わり等、さまざまな視点から、今後の医療圏のあり方に対する考察を加えている。

 第3章では、「4疾病5事業の現状と課題」として、本委員会が都道府県医師会を対象に実施した「『4疾病5事業』に関するアンケート」の結果概要を紹介。4疾病5事業に精神疾患を加えた5疾病5事業及び在宅医療も含めた取り組みについて、各自治体へのインセンティブが働くシステムが必要であることを指摘している。

 第4章「在宅医療について」では、高齢化及び疾病構造の変化の中で地域の実情に応じた在宅医療提供体制の構築が必要であるとした上で、地域連携や在宅療養支援診療所、多職種間の連携、4疾病5事業との関係について言及。更に、在宅医療においては、医療保険制度と介護保険制度とが関係してくることから、関係業種・団体との連携を都道府県医師会が主導していくことが重要になるとしている。

 第5章では、「地域医療再生基金について」として、これまでの経緯と課題及びその課題への対策について触れている他、都道府県医師会と行政との関係性が地域医療再生基金には大きく影響するとして、都道府県医師会に対して、地域医療再生計画の作成や遂行に対する積極的な関与を求めている。

 第6章の「地域の医師不足について」では、都道府県別、都道府県内、中大都市圏域と小都市圏域間、診療科間に存在する医師偏在の問題について言及。医師不足・医師偏在の最大の原因として、平成16年から開始された新医師臨床研修制度を挙げ、その見直しに向けた継続的な検討が必要であるとしている。また、地域偏在の解消策として、地域枠入学制度に触れ、地域定着率を挙げる1つの方策ではあるが、あるべき姿ではないと指摘。更に、診療科間偏在の解消策としては、仕事量とキャリアパス、診療報酬を組み合わせた対応が必要だとしている。

 また、第7章では、「東日本大震災の経験から」と題して、今回の大震災を踏まえて、災害対策における地域医療の役割と発災直後の災害医療の検証を行うとともに、被災地における医療再建については、国や行政が責任をもつべきであることを強く主張している。

 なお、本報告書の巻末には、参考資料として、本委員会の委員でもある高橋泰国際医療福祉大学大学院教授による研究結果「2次医療圏データベースから見えてくること―日本の介護・医療の提供レベルの現状と将来予測、その対策―」及び、前述の「『4疾病5事業』に関するアンケート」の詳細な結果が付記されている。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第1課 TEL:03-3946-2121(代)
◇関連資料はこちら⇒PDF(27.6MB)


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