白クマ
日医白クマ通信 No.1618
2012年12月3日(月)


第3回医療政策会議
「フランスとオランダの医療制度改革の動向について講演」

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 第3回医療政策会議が11月22日、日医会館で開催された。

 冒頭、横倉義武会長があいさつに立ち、「衆議院が解散し、12月16日に選挙が行われることとなった。選挙後の政権がどのように構成されるかということも含め、色々と考えなくてはいけない選挙になる。社会保障について議論する『社会保障制度改革国民会議』に、医師会として参加することは叶わない方向のようだが、医療政策会議の委員がメンバーに入る予定となっているので、期待をしている」と述べた。

 議事では、松田晋哉委員(産業医科大学医学部公衆衛生学教室教授)より、「欧州の医療制度改革の動向―フランスとオランダを中心に」と題する講演、及び質疑応答が行われた。

 同委員は、欧州の主な医療制度のモデルに触れた上で、フランスの医療制度について、(1)被保険者が医療機関に全額を支払い、保険者に請求する償還制、(2)開業医に対する報酬の支払いは出来高払い制、(3)病院に対する支払はDRG/PPS方式(診断群別分類に基づく定額払い制)―であることなどを説明。フランス医療では、1.開業、2.処方、3.診療報酬決定、4.患者による医師選択―の4つの自由が認められているが、1996年の「Juppé plan」(制度改革のグランドデザイン)に基づき、医療情報を透明化し、毎年国民議会で医療費総枠を定めるなど、改革を進めてきたことを解説した。

 レセプトは、かつて治療内容が第三者には分からない記入方式だったが、医療費適正化などの観点から、ICカード(写真入りの患者カードと医療職カード)を導入して医師間で患者情報を共有し、医療サービスの重複を避ける取組みが行われているとし、医療機関から疾病金庫に診療情報が送付されるようになったために、患者が償還請求することなく償還される支払い方式に変更されたと説明。このほか、患者の紹介をスムーズにするため、各医療機関の医療情報共有のデータベースが、地方単位で整備されているとした。

 また、かかりつけ医制度も導入されたことを紹介。患者は、まず「かかりつけ医」(一般医)を受診し、紹介状を携えて専門医等を受診することとなっており、直接専門医を受診した場合は、「協定価格」の支払いに加え「付加料金」を支払うこととなるとし、「フランスの一般医はビルにオフィスを構え、あるのは机と聴診器のみ。レントゲンや臨床検査はそれぞれの専門医の独占事項なので、紹介状を書いてもらい、結果を持ってまた一般医の元に戻る仕組みで、日本の診療所とは全く違う」と述べた。

 医療計画については、1994年の策定から見直しが重ねられ、現在では病床規制ではなく、「高額医療機器・高度医療技術の計画的配置」「地域内完結から広域での連携を視野に入れた医療施設の整備」「予防・医療・介護の総合的な計画」などを目的に策定されているとした。

 医師の偏在問題に関しては、卒後研修において、11の専門診療科に対して地域ごとに募集定員の制限を設け、医師の少ない地域の定員を多くするなど、政策的に誘導していることを説明した。

 一方、オランダの医療制度に関しては、(1)患者は家族単位でGP(Gate keeping)に登録し、救急を除いてGPの紹介なしに病院の専門医を受診出来ない、(2)GPの報酬は、登録した医師に人頭制で支払われる定額部分と、時間内の診察ごとに支払われる出来高部分、時間外の診療に時間単位で支払われる出来高部分からなる、(3)病院への支払いはオランダ版DRGであるDBCによる包括支払い―であることなどを紹介。

 医療制度改革において、診療報酬に、保険者と病院が国の定める公定価格を上限として価格交渉を行う管理競争を導入したところ、病院の営利性が高まり、かえって医療費が膨らみつつあることなどを報告した。

 質疑応答では、欧州において日本の医療制度がどう評価されているかとの問いに、松田委員は「日本の医療制度は諸外国ではほとんど知られていないが、どこの国も高齢社会になり、日本型の介護保険や医療保険に興味を持ってくるだろう」と述べ、医師会が中心となって海外に情報発信していくべきだとした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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