白クマ
日医白クマ通信 No.1713
2013年10月31日(木)


定例記者会見
「地域医療における中小医療機関、特に有床診療所の重要性と防火対策の強化について」
―横倉会長

定例記者会見


 横倉会長は、10月30日の定例記者会見で、まず、本年10月11日、福岡市博多区の有床診療所において火災が発生し、医療を信頼して身を委ねていた患者さんや、長く地域医療に心を砕いてきた元院長夫妻など、多くの死傷者を出す結果となったことについて、「大変悲しい出来事であり、亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りする」と述べると共に、このような事件は決して再び起こさないとの決意を持って我々医療関係者は診療所や病院を運営して行く覚悟だとした。

 その上で、同会長は、これを機会に、(1)中小医療機関、特に有床診療所が、存続が危ぶまれるような弱い立場におかれている、(2)開設者の負担が過大なものになっている、(3)かかりつけ医機能を担う中小医療機関は、これからの高齢社会に対応し、高齢者を地域で支えていくための極めて大きな役割を持つ施設である―ことの3点について、国民や関係各位に理解を求めたいとした。

 (1)については、高齢化が世界一進んでいる中で、我が国の医療費は、先進国の中で低い水準であり、地域医療を支える診療所の医師の報酬単価、有床診療所の入院単価は非常に低いまま据え置かれてきたと指摘し、高度医療を重視する流れのなかで、有床診療所が弱い立場に置かれてきたことが、先に述べたような事故の背景にあるとした。さらに、中小医療機関も同様の状況であり、厳しい経営環境に耐えられず、身近で入院可能な設備を持つ医療機関が少しずつ減少しているのが現状だとした。

 (2)では、中小医療機関に従事する医師や看護師、またその家族は、昼夜を問わず汗を流しているにもかかわらず、その負担は政策上、あるいは診療報酬上で、相応に評価されてこなかったとした上で、医師あるいは看護師の負担をできるだけ軽くするような措置がなければ、中小医療機関、特に有床診療所は我が国からなくなってしまうとの危機感を示した。

 (3)については、今後、高齢者が増えると共に、病院中心の医療から地域中心の医療ヘと、地域包括ケアという大きな転換が始まろうとしており、これを可能にするのは、身近なかかりつけ医と地域の中小医療機関だとし、海外のプライマリケアを担う医師と違って、住民の健康の継続管理と必要に応じた専門医への紹介を行うことが出来る診療能力の高さが我が国の特徴だと指摘した。また、「民間中小医療機関は、急病の時の対応に加え、病院と病院の連携や医療福祉の連携、在宅医療支援などの拠点となりつつあり、地域包括ケアシステムの成否を握っていると言っても過言ではない」と述べ、この新たな役割を、地域のかかりつけ医が要となり、住民に寄り添う形で、「切れ目のない医療・介護」を提供し、国民の健康と安心を支えていかなければならないとした。

 同会長は、二度と事故を起こさないためにも、こうした中小医療機関の置かれた現状に対する正しい認識を強くお願い申し上げるとともに、医師会自らが先頭に立って訴えていきたいとの考えを示した。

 結びに、同会長は、亡くなられた方々に対して、申し訳ないという思いを共有しているとして、重ねて哀悼の意を示した。合わせて、元院長が地域住民から広く感謝されていたことを紹介し、有床診療所では院長自らが泊まり込んで見守りを行うことが普段からの姿であり、地域医療の充実のために、まさに自分の一生を捧げられたとして深い敬意を表した上で、中小医療機関が円滑に運営出来る仕組みづくりは、高齢社会に向けて非常に重要なことだと強調した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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