白クマ
日医白クマ通信 No.1892
2015年6月19日(金)


定例記者会見
「2025年の医療機能別必要病床数の推計結果」等に対する日医の見解

定例記者会見


 横倉義武会長並びに中川俊男副会長は、6月17日の定例記者会見で、15日に発表された「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」の「第1次報告」の中に示されている「2025年の医療機能別必要病床数の推計結果」等とその報道の在り方について、日医の見解を公表した。

 冒頭、横倉会長は、「地域医療構想は、構想区域内で、必要な病床を手当てする仕組みである。手当の仕方は地域の事情によってさまざまであり、構想区域の必要病床数を全国集計することに意味はない」と指摘。「そうしたことを踏まえず、単純集計を公表したことは、医療関係者として納得できない思いである」と述べた。

 更に、報告書の公表以前に情報が流出し、一部マスコミにより、「病床10年後1割削減」「全国の病院、必要ベッド20万床減」などの見出しで報道されたことで、地域の医療現場が混乱するだけでなく、地域住民をも不安に陥れることとなり、各都道府県医師会が対応に追われている状況にあることを明らかにし、「日医としては極めて遺憾である」との意を表した。
 

定例記者会見

「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会第1次報告」について、具体的に問題、懸念のある部分を示しつつ、日医の考え方を説明

 続いて中川副会長は、今回の報道によって、全国の会員から多くの心配の声が寄せられており、マスメディアの影響力を感じるとしつつ、「正確な理解を得るのは簡単ではないので、事あるごとに説明していきたい」と述べた。その上で、「2025年の医療機能別必要病床数の推計結果」の「全国ベースの積上げ」で示された2025年の必要病床数は、診療行為を診療報酬の出来高点数で換算した医療資源投入量を基に医療需要を出し、それを病床稼働率で割り戻して必要病床数としたものであり、患者数に限りなく近く、急性期病床には100%急性期の患者が入っているとの仮定で出した病床数なので、現状の病床機能報告の病床数(病棟単位)等と比べることに意味はなく、すべきではないと指摘。更に、「都道府県別・医療機関所在地ベース」のデータで、在宅医療等で対応する患者数を慢性期病床と別に推計している点については、地域医療構想策定ガイドラインでは、慢性期と在宅医療の数は一体として考えることになっており、地域の実情に合わせて構想区域ごとに柔軟に策定出来ることになっていると説明。調査会がこのような資料を出すことで、間違った理解が進み、動揺が広がることに懸念を示し、「非常に恣意(しい)的な、不安を助長するような公表の仕方である」と批判した。

 また、同調査会が、医療・介護情報の活用方策等の調査及び検討を行うことを目的として設置されたものであるにもかかわらず、今回の報告では、医療・介護提供体制の改革そのものにまで踏み込んでいる点について、「明らかに行き過ぎである」として不快感を示した。

 更に同副会長は、具体的に問題、懸念がある部分として、(1)地域の実情を踏まえることに制限をかけていること、(2)都道府県知事の権限強化、(3)平均在院日数の更なる短縮化を求めていること、(4)診療報酬について具体的な記述があること、(5)早急に地域医療構想を策定すべきとしていること―の5点を挙げ、それぞれに対する日医の見解を説明し、正しい理解を求めた。

  (1)では、地域医療構想は、地域の実情を踏まえて策定されるべきものであると強調。また、地域差の要因を分析することは重要だが、地域差を全て否定することになってはならないとした。

 (2)では、6月10日の経済財政諮問会議で、有識者議員が県の権限強化で病床再編を後押しすると発言したことにも言及。医療法では、地域医療構想において都道府県知事が対応できるケースは、1.病院・有床診療所の開設・増床等への対応2.既存医療機関が過剰な病床の機能区分に転換しようとする場合の対応3.地域医療構想調整会議における協議が調わない等、自主的な取組だけでは不足している機能の充足が進まない場合の対応4.病棟単位で1年以上稼働していない病床への対応―の4つに限定されており、地域医療構想区域内で都道府県知事が強制力をもって圧力をかけることは全くないとした。

 (3)では、平均在院日数のこれ以上の短縮化は、患者の追い出しにつながる上、勤務医の疲弊を増すことになると説明。DPCでは平均在院日数の短縮化が進んでいるが、その結果、治癒率が低下し、予期せぬ再入院率が上昇するという事態になっていることも指摘した。

 その一方で、地域医療構想の医療ニーズの算定に当たって、平均在院日数を含む入院基本料が除かれ、医療資源投入量が用いられていることについては非常に評価をしているとした。

 (4)では、地域医療構想と診療報酬をリンクさせるべきではないが、地域医療ニーズの充足を阻害している不合理な診療報酬要件は是正すべきであるとした。

 (5)では、地域医療構想策定ガイドラインにも「拙速に陥ることなく確実に、将来のあるべき医療提供体制の実現に向け、各医療機関の自主的な取組等を促す」とあることから、地域の実情を見誤ることなく、関係者の理解と納得を得て慎重に進めていかなければならないとした。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代)
◇プレスリリース資料はこちら⇒PDF(1.1MB)


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