日医白クマ通信 No.438 2006年6月28日（水）

定例記者会見 中医協「第15回医療経済実態調査」本報告に対する日医の見解について

中川俊男常任理事は、６月27日、中医協「第15回医療経済実態調査」本報告に対する日医の見解について、日医会館で記者会見を行った。 　「６月21日開催の中医協で、この調査が報告されたが、マスコミは療養病床60％以上の病院の収支差が624万円になっていて、一般病院に比べてよかったと報道している。しかし、療養病床の見直しが決まった今頃、なぜ療養病床の収支差を持ち出してくるのか、疑問に感じる。収支がかなり良いのだから、慢性期入院に係わる診療報酬改定は当然であったと正当化したつもりなのか。この収支が事実であれば、療養病床のはしごを外す準備として点数誘導したとも考えられる。しかし、次に述べるように、収支自体が正しくないことも考えられ、調査内容の信憑性についても疑問点があると考えている」と述べ、以下の点をあげた。

【医療機関】 療養病床の有無別一般病院の収支状況 療養病床見直しが決まったこの時期になって、なぜデータを公開するのか理解に苦しむ。公表値については、個人と法人を一緒に扱うという問題も見られる。また、療養病床60％以上の病院の客体数は55でしかない。 開設者別１施設当たり賞与・退職給付費用・法定福利費 医療法人に比べて、国公立病院の賞与は約2倍、退職給付費用は5〜7倍である。 １施設当たり資産・負債額、設備投資額、年間税負担額 無床（その他）では、当期借入金が借入金返済額を大幅に上回った。また、当期借入金は設備投資額をも上回っており、運転資金まで借り入れている可能性がある。 【保険薬局】 保険薬局の収入はこの2年間で、法人で1.2倍、個人で1.4倍になった。利益率も、法人で安定的に5％超を維持している。 【保険者】 平成16年度は、診療報酬改定の結果、ほとんどの保険者で黒字となり、積立金等の残高は6兆円を超えた。 　 　調査全般については、(1)定点観測を基本とすべき、(2)決算期の損益計算書・貸借対照表を調査すべきであると、２点について欠陥を抱えていることを指摘した。 　(1)については、定点調査も行っているが、客体数が少なすぎる。非定点の調査部分も診療所の客対数は、全国診療所の１％にすぎない。また、診療所の個人と法人・その他を統合して示しているとして、「データに信憑性がない」ことを指摘した。 　(2)については、貸借対照表が活用できない、すなわち、収支状況は６月単月の調査、資産・負債は年額での調査で、関連性の分析ができない−の２点を指摘した。 　また、国公立病院については、「開設者別に退職給付費用等が発表されるようになり、これによって、国公立・公的病院には、医療法人の1.3〜1.4倍の人件費がかけられていることが浮かび上がった。特に国公立病院の賞与は医療法人の約2倍、退職給付費用は5〜7倍であった。また、公立病院では医業収入の13.5%分の補助金が投入されている」と医療法人との違いを説明した。 ◆問い合わせ先：日本医師会広報課　TEL：03-3946-2121（代）