白クマ
日医白クマ通信 No.588
2007年2月8日(木)


定例記者会見
「医療提供体制の国際比較の検証結果を公表」

中川俊男常任理事


 中川俊男常任理事は、「医療資源の集約化」と称する医療費削減策が推し進められるなかで、経済力から見た日本の医療提供体制が本当に過剰であるのか、また、今後見込まれる急速な高齢化に対応できるだけの医療提供体制が整っているのか、OECD加盟国の状況と比較・検証した結果を、2月7日の定例記者会見で公表した。

 今回の検証は、「OECD Health data 2006」を用いて、1996年、2004年の医療提供体制および総医療費支出などを、OECD加盟国(日本を含め30カ国)間で比較する形で行われている。

 それによると、日本の人口1,000人当たり医師数は、1人当たりのGDPが平均以上の国のなかで、最下位となっている。また、その医師数を高齢化率との関係で見ると、1996年と2004年を比較して高齢化率にほとんど変化のないアメリカ、イギリスでさえ医師数が増えているのに、高齢化率が著しく進展している日本では微増に止まっていることが分かった。

 一方、日本の人口1,000人当たりの看護職員数は先進国並みとなっており、高齢化率との関係においても、それに対応した供給が実現されている。この数値について、同常任理事は、看護職員のうちの約32%を占める准看護師の存在によってかろうじて保たれているもので、准看護師の供給次第では、たちまち平均以下に転落する可能性があると危惧した。

 日本では病床数が多いことが、医療費高騰の原因のように言われているが、1床当たり総医療費支出(病床にかかっているコスト)を見ると、実際には、韓国など1人当たりのGDPが特に低いグループに属する国々とほぼ同レベルであることが分かった。しかも、高齢化率が著しく進んでいるにもかかわらず、日本の1床当たり総医療費支出は低い水準のまま、横ばいで推移している。

 これらのことを踏まえて、同常任理事は「今回の検証は、国民はその国の経済力に見合った社会保障を受ける権利があるとの前提に基づいて行ったが、日本の医療はその権利を保障するには程遠い状態であることが明らかになった」と述べ、今後さらに高齢化率が進展する前に、国が医療資源を確保するための財源的手当てを早急に検討するよう求めた。

 なお、検証結果の内容は、日医総研のホームページを参照。

◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)


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