白クマ
日医白クマ通信 No.777
2007年11月9日(金)


定例記者会見「財政制度等審議会での検討に反論」

 財務省の財政制度等審議会は、11月5日、社会保障をテーマに議論を行い、診療報酬の引き下げを求めることで合意。日医が求める5.7%の診療報酬の引き上げ要望についても「約2兆円の国民負担増となり、不適当」とした。これに対して、中川俊男常任理事は、11月7日に記者会見を行い、「今の医療現場の疲弊した状況の根本的な要因は長期の医療費抑制策にあるにもかかわらず、あるべき医療費の増額要求を国民負担増と表現するのはいかがなものか」と批判、引き下げの方針に対する反論を行った。

 同常任理事は、(1)度重なる診療報酬のマイナス改定により、診療報酬全体では1998年度に比べて6.5ポイント低下。2003年以降では経済の伸びを下回り、2006年度の名目GDPとの差は7.9ポイントに拡大していること、(2)小泉改革以降に着目すると、診療報酬本体だけ見ても、2007年は消費者物価指数、実質賃金を下回っていることなど、診療報酬が低く抑えられている現状を説明した。

 そのうえで、財政審が「診療報酬が賃金・物価と3.6%乖離しており、この乖離を解消することが先決」としていることについては、小泉政権下から今までの厳しい医療費抑制の間、診療報酬の伸びは、財政審の示す人事院勧告ではなく、実質賃金で見た場合、実質賃金・物価を1.0%下回るものになっている。仮に人事院勧告と比較するとしても、長期的に見れば、診療報酬本体は均衡していると反論。また、賃金上昇率、物価上昇率を年0.5%を前提とした日医の診療報酬改定要望について「高すぎる」としていることに関しても、この前提は現状を認識し、国の見込みも踏まえたものであると説明。国の見込みは、医療費給付や年金給付費の資産にも使われており、この見込みに問題があるのであれば、財政審はその点を正すべきだと主張した。

 また、医業経営の実態について、財政審が中医協「医療経済実態調査」の結果をもとに、一般病院の収支差額比率が「医療法人は改善」などと述べていることに関しても、中医協「医療経済実態調査」は、変化の把握に適さない点があるため、「TKC医業経営指標」を用いて分析した結果、(1)病院・診療所、法人・個人のいずれにおいても、前年比で減収・減益になっていること、(2)経営安全性を示す損益分岐点比率は民間医療機関で約95%となり、危険水域に突入していること―などが明らかになっていると反論した。

 財政審は、また、医師の所得に関して、中医協「医療経済実態調査」に基づき、開業医(法人等)は病院勤務医の1.8倍、開業医(個人)は病院勤務医の2.0倍というデータを示している。この点についても同常任理事は、(1)勤務医師と診療所開設者は平均年齢が約18歳の差があること、(2)特に民間の診療所開設者は、事業者としての経営責任をはじめとするさまざまなリスクを抱えていること、(3)事業主と給与所得者との比較は、両者の税引後の手取り年収を試算しなければ、不可能であること―等を示して、その比較は不相当であると指摘。この件については、日医が実施した「診療所開設者の年収に関する調査結果」を改めて説明し、診療所開設者の年収は必ずしも高いものではなく、むしろ病院勤務医の収入が低いことに問題があると主張した。

 最後に同常任理事は、度重なる医療費の抑制によって医療現場は疲弊しており、これ以上の抑制は医療現場の崩壊を招くと主張。財政審が不適当とする指摘する5.7%という数字についても、医療を取り巻く環境の悪化、国民が経済力に見合った医療を受ける権利があることを踏まえれば、不当な数字ではないとし、今後は地域医療の崩壊を防ぎ、国民医療を守るためにも、関係各位に対して日医の要望に対する理解を求めていくとの考えを示した。

 なお、会見に使った資料は、日医のホームページに掲載しています。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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