白クマ
日医白クマ通信 No.928
2008年6月13日(金)


定例記者会見
「財政審の建議に反論」―三上常任理事

三上裕司常任理事


 三上裕司常任理事は、6月11日の定例記者会見で、財務省財政制度等審議会が6月3日に取りまとめた「平成21年度予算編成の基本的考え方」(建議)の介護に関連した部分に対する日医の見解を明らかにした。

 同常任理事は、まず、建議で、「今後も介護給付費の伸びを放置すれば保険料負担等を大幅に引き上げていかざるを得ない」としていることに関して、利用者負担等の引き上げを抑えるために、平成18年4月に制度の一部を改正し、新予防給付や地域支援事業が創設されたものであり、利用者負担の引き上げなどは、社会保障の理念からして決して容認されるものではないと主張。そのうえで、介護給付費が伸びた要因には、サービスの基盤整備が全国的に徐々に進み、介護サービスを必要とする多くの高齢者が利用できるようになったことを挙げ、このことは介護保険制度創設の意義の一つであった「介護の社会化」が進展し、広く介護サービスが普及したことを意味するもので、批判されるいわれはないと反論した。

 また、「居宅サービスの給付の伸びが著しい」「施設利用率の高い地域ほど高齢者一人当たり給付費が高くなる傾向にある」との指摘に対しても、「介護保険施設については、国が示した参酌標準により実質的な数量規制が行われており、サービス給付の伸びが抑えられていること」「居宅サービスの給付が伸びた一因には国が進めてきた居宅系のサービス等の整備が進み、利用が増えたこと」を挙げて反論。今後、医療費適正化等の施策による介護療養病床の廃止、平均在院日数の短縮が進めば、ますます在宅療養の基盤整備は必要となることから、それを支える居宅介護サービスの充実は必須であるとした。

 その他、建議では近年問題となっている介護労働に携わる人材の確保に関して、報酬の増加は労働者の賃金の引き上げには必ずしもつながらないとしている。この指摘に対して、同常任理事は、平成16年度と19年度の介護事業経営概況調査の結果を比較してみると、各事業所の収支差率は大きく減少し、経営難の事業所が増えており、事業所収入の原資を引き上げなければ、労働者への配分もままならない状況は明白であると指摘。

 厳しい状況下にある介護サービス従事者の処遇改善を図り、在宅療養や介護施設における多様なニーズに対応可能な従事者の確保と質の向上推進するためは、介護保険の財源を確保したうえで、健全な事業運営が可能となるような介護報酬上の評価を行うべきであると訴えた。

◆問い合わせ先:日本医師会介護保険課 TEL:03−3946−2121(代)

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