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令和5年(2023年)8月5日(土) / 日医ニュース / 解説コーナー

医師の働き方改革導入に向け医療機関勤務環境評価センターへの今夏までの受審申込に協力を

医師の働き方改革導入に向け医療機関勤務環境評価センターへの今夏までの受審申込に協力を

医師の働き方改革導入に向け医療機関勤務環境評価センターへの今夏までの受審申込に協力を

 医師の働き方改革の導入が来年4月に迫る中で、今号では城守国斗常任理事に、医療機関勤務環境評価センター(以下、評価センター)の評価申請受付状況や受審申込に当たっての注意点などについて説明してもらった。

Q 評価センターへの評価申請の申込状況はどのようになっていますか?

A 7月19日現在、評価受審申込は合計で351件であり、そのうち、大学病院からの申請は108件(注、本院・分院合計)となっています。
 評価センターの運営開始当初から、2024年4月までに指定を受けるためには遅くとも今年の夏までには受審申込をして頂くよう、講演や説明会を通じて繰り返しお願いして参りましたが、図に示したように本年3月以降は月30件以上の申し込みがされるようになり、4月は48件、5月は55件、6月は141件、7月も既に58件の申し込みを頂いています(都道府県ごとの受審申込受付状況は、評価センターのホームページにて随時更新しておりますので、ご参照下さい)。

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Q 受審申込してからの流れを改めてご説明頂けますか?

A 評価センターのホームページから評価申請の申し込みをされますと、評価センター事務局から提出資料の作成依頼メールが届きます。
 医療機関では申し込みに当たり、(1)病院の診療機能や申請予定の特例水準などを記入する「基本情報シート」、(2)厚生労働省が定めた評価項目・評価基準に沿った自己評価と根拠資料を添付する「自己評価シート」、(3)「令和6年度以降の医師労働時間短縮計画書案」―を準備する必要があります。
 評価センターではこの三つの資料に不備がないか点検を行い、サーベイヤーによる評価が始まります。評価は労務管理サーベイヤー(社会保険労務士)、医療サーベイヤー(医師)がそれぞれ行い、評価センターに報告することになります。医師の働き方改革では、「勤務医の健康確保」と「地域医療の継続及び医学・医療の質の維持向上」が重要であるため、評価に当たっては必ず両者がペアを組んで医療機関を評価します。
 また、評価の過程で必要に応じて医療機関から追加の資料をご提出頂く場合もございます。
 サーベイヤーによる評価結果が評価委員会で審議され、その後、日本医師会の理事会に諮られ、評価結果が決定・承認されることになります。
 評価結果を申請医療機関に通知後、2週間以内に異議申し立てがなかった場合には、確定した評価結果を評価センターから申請医療機関の所在する都道府県に提出して一連の評価手続が完了します。
 このように、受審申込から評価結果を都道府県に提出するまで審査が順調に進んだとして、おおよそ4カ月掛かることになります。ただし、サーベイヤーによる評価の時点で労働関係法令及び医療法に規定された事項、いわゆる必須項目が未達成の場合や、未達成の項目が多く、現時点における取り組み状況に改善の必要があり、また、今後の取り組み予定も見直す必要がある場合には、いったん、評価を中断し、医療機関に対して90日以内に改善に向けた取り組みを実施するよう依頼する場合があります。これを「中間報告」と言います。
 中間報告を受けた医療機関は、未達成項目の改善に向けた取り組みを実施した上で再度資料を提出し、改めて評価を行うことになるため、審査期間は通常より更に長引くことになります。
 都道府県の指定申請時期はさまざまであり、申請が遅くなりますと来年4月までの指定に間に合わなくなる可能性もありますので、評価センターへの受審申込は早めにお願いいたします。

Q 医療機関が受審申込する際に注意すべきことを教えて下さい。

A スムーズな評価のためにも、提出資料が正しく作成されていることが重要になります。
 評価項目数は88項目ですが、初めて指定を受ける医療機関については、76項目となっており、そのうち、必須項目は18項目となっています。改めて、88項目(うち、必須28項目)ではないことにご注意願います。
 また、必須項目については、都道府県の指定を受けるためにその全てが達成できていることが必要条件となりますが、必須項目のうち、項目4、25、31、35、42番に限り、申請時点では達成できていなくても、達成するための仕組みや規定(案)ができていれば、自己評価を達成していると見なすことが可能となっています。
 次に、提出資料のうち、①「令和6年度以降の医師労働時間短縮計画書案」②「自己評価シート」―の作成上の注意点をご説明します。
 ①ですが、必須項目以外の評価項目(アウトカムに関する項目は除く)については、現時点で達成されていなくても、具体的な時期を定めて実施する取り組みを記載することで、自己評価を「現時点では達成していないが、具体的な時期を定め、取り組むことを医師労働時間短縮計画に記載している」とすることができます。このように全体評価に当たっては、現時点でできていなくても計画を立てて頂くことが重要なポイントとなります。
 また、②ですが、評価項目ごとの自己評価と合わせて医療機関で実施されている取り組みを詳しく記載して頂くとともに、その根拠の確認が可能な資料を添付して頂く必要があります。
 また、「取組状況」欄には、医療機関の取り組みをできるだけ詳しく記載して頂くとともに、添付資料には、「取組状況」欄に記載した内容に対応する箇所のページ数や項目番号等を記載し、該当箇所には印や下線を引く、注釈を入れる等、ご配慮頂きますようお願いします。
 自己評価を「達成している」とした場合には、その裏付けとなる資料を添付して頂く必要がありますが、関係のない資料を添付されますと、サーベイヤーが評価できず、医療機関へ資料の追加を求められたり、問い合わせ等が発生するなど、かえって評価手続きに時間を要することになりますのでご注意下さい。
 なお、医師の働き方改革を着実に進めるためには、必須項目以外の項目についてもその取り組みを進めることが重要です。これまでの評価申請においては、必須項目以外の多くの項目を未達成として提出するケースがありました。評価は、ストラクチャー・プロセス・アウトカムを総合的に見るため、多くの項目で未達成がありますと全体評価に影響します。このため、評価センターでは、現在達成していない評価項目については、医療機関内で実施に向けた取り組みをご検討頂き、その実施計画を時短計画に明記することで自己評価を(○)として頂くよう助言を行っています(「時期を定めて取り組む」と自己評価した場合、サーベイヤーは取り組む準備をしていると評価します)。

Q 評価センターでは『医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)解説集』の要約版を作成したそうですが、作成に至った背景などについてご説明願います。

A 初回審査は書面審査となりますので、資料作成に当たっては、医療機関で実施されている取り組みを詳しく記載するとともに、その根拠を確認することができる資料を添付する必要があります。
 このため評価センターでは、資料作成の参考としてもらえるよう、国が作成した「医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン」の解説集を昨年10月に公開していました。
 しかし、公開から半年以上が経ち、実際の審査作業を積み重ねる中で、医療機関や関係者の皆様から多くのお問い合わせを頂きましたので、評価項目の考え方や必要な資料等について、改めて解説集の内容を整理し、評価において必ず提出が求められる資料などの情報を加えた解説集の要約版を発行することにいたしました。
 今回の要約版では、評価申請に必要な資料を作成する上で共通する事項への注意点や対応について、冒頭に記載しています。
 また、個々の評価項目に関しては、評価に当たって確認すべき点を明示し、必要な資料を具体的に示している点が特徴となっています。
 その他、これまで多くご質問頂いた箇所には注意書きに加え、よく見られる誤解や添付資料の間違いなどについても例示するなど、工夫をしています。
 評価センターでは、医療機関の医師の労働時間短縮のための取り組みを評価するだけでなく、医療機関の評価の状況を踏まえながら勤務環境の改善に向けた支援を行っていくことも重要な役割であると考えております。
 要約版は評価センターのホームページからダウンロード可能となっておりますので、ぜひ、受審申込される際の参考にして頂ければ幸いです。

Q 大学病院でもC―2水準への申請をしないというところもあるようですが。

A C―2水準は、日本の医学・医療を維持・向上させるよう高い医療技能を習得するため、長時間労働にならざるを得ない医師がいる場合に適用される水準です。
 現在のスキームでは2036年4月にB水準・連携B水準は廃止されますが、C―1水準・C―2水準は時間外労働時間の上限は縮減される予定ですが存続はします。
 大学病院を始めとする高度医療機関は、教育・研究・診療・地域医療を担う役割を持っていますが、医療の維持発展にどの程度の研修、修練が必要なのかはまだ見通せていない現在、このC―2水準の役割は極めて重要になると思われます。
 C―2水準の適用となるためには評価センターを受審するだけでなく、C―2水準独自に設けられている審査組織も受審しなければなりません。申請件数の立ち上がりが遅れた原因としては、対象技能に対する認識の誤りが影響したこともあると思われますが、厚生労働省や日本医師会からも説明を繰り返し行ったことで、その点も解消されつつあります。
 また、現在、各学会でその対象技能や教育研修機関の施設要件等についての考え方のコンセンサスが形成されてきていますので、本年後半くらいから徐々にC―2水準申請件数は増加するものと考えています。

Q 今後の課題について教えて下さい。

A 評価センター業務の精度を上げること、そのための体制の強化がまず挙げられます。更に各医療機関の勤務環境改善に向けた取り組み事例の収集、好事例情報の周知、共有作業にも努める必要があります。
 一方、この働き方改革が地域医療にどのような影響を与えるのかはまだ見えてきていません。しかし、評価センターへ受審申込をするためには地域の医療機関への医師派遣等に関する対応を決定しておく必要があるため、多くの医療機関の評価申請が終了するであろう今秋には、各地域での影響が可視化できると思われます。そのため、国に対しては地域医療提供体制への影響について、秋口にも調査すべきと要請していますが、各地域におかれましてもぜひご確認をお願いいたします。
 また、2024年4月の指定後は、医療機関は3年ごとに指定を更新することになります。更新に当たっては、評価項目・評価基準の項目(88項目、そのうち必須項目は28項目)全てに対応しなければなりませんし、働き方改革が進んでくる状況で現時点の評価項目・評価基準のままで良いか不明です。この点についても国の検討会の場を通じて整理を求めたいと思います。

Q 最後に会員の皆さんに一言お願いします。

A これまでも繰り返し申し上げてきましたが、評価センターの受審申込から評価結果が出るまで、スムーズに行ったとしても約4カ月掛かり、その後、都道府県の審議を経る必要があることを考えますと、来年4月の医師の働き方の新制度に間に合わせるためには(各都道府県の指定申請締め切り期日にもよりますが)、評価センターへの受審申込は遅くともこの夏がリミットになります。
 評価申請の準備を進めている医療機関におかれましては、必要に応じて医療勤務環境改善支援センターを活用するなど、可能な限り早く評価申請のための準備を進めて頂きますよう、ご協力をお願いします。

ご案内
 医療機関勤務環境評価センターのホームページには、評価申請に関するさまざまな情報が掲載されています。ぜひ、ご活用願います。
https://sites.google.com/hyouka-center.med.or.jp/hyouka-center

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