日医ニュース
日医ニュース目次 第1103号(平成19年8月20日)

視点

今こそ日医年金に加入を

 社会保険庁の年金問題は,社会問題から,ついには政治問題となり,今般の参議院選挙の結果にも大きく影響を及ぼし,国民の公的年金に対する信頼は地に落ちている.
 医師にとっても年金の問題は他人事ではなく,生涯に得られる収入総額が減少する可能性があるなかで,老後の生活が不安なく現在の仕事に専心するためには,信頼のおける年金の存在が必須である.
 従来,勤務医や開業医といった身分の相違にかかわらず,医師は,公的年金にその老後の糧を求めるサラリーマン等に比較して,総じてその収入が高い時代があり,漠然と将来の生活に対する安心感を持っていたことは否めない.また,学生時代から医学という専門性に徹し,交友関係も同じ医療界に多いという環境で,他の社会生活に関する問題に対して関心が低かったこともあるだろう.
 多くの勤務医が退職を目前にし,自分の老後を支える原資が公的年金に依存していることに気付き,豊かな老後が過ごせるのかという不安にかられる例が実に多い.
 一九六八年,日医の会員でさえあれば,すべての医師がその身分や医療機関の種別に関係なく加入でき,自らのために積み立てる年金として,日本医師会年金(医師年金)制度が発足した.発足当初,多くの会員が加入され,すでに年金の受給者としてその恩典を受けている会員も多数いる.その後,日本の経済・金融環境の悪化に伴い,やむを得ず予定利率を下げなければならない不幸な時期もあり,加入者にご迷惑をかけたこともある.それでも他の私的年金に比較して,予定利率は高く,また日医年金独自の有利性は,他のすべての年金に比べて傑出している(http://www.med.or.jp/nenkin/index.html参照).
 しかしながら,最近の新規加入の状況を見ると,徐々に増加しているものの,低い加入率であり,その傾向は若い医師,特に勤務医に顕著である.昨今,勤務医の労働環境改善に焦点が当てられ,また勤務医の所得が世間一般の常識よりずっと低額であり,また仕事の内容に対して適正であるかどうか,問題になっている.医師の生涯を通した所得を少しでも増加させるには,日医年金は最も優れた手段の一つである.
 会員でありながらこの制度を利用しないのは,制度への理解が足りないためだと思われ,その意味で,制度を運営するわれわれの責任は重大であると痛感している.多くの金融関係者から,「もし自分が医師であれば,必ずこの年金に加入します」という発言があることを,結びにご紹介しておく.

(常任理事・今村 聡)

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