日医ニュース
日医ニュース目次 第1219号(平成24年6月20日)

平成24年度近畿医師会連合定時委員総会
「皆保険制度の堅持,TPPへの参加中止」等について決議を採択

平成24年度近畿医師会連合定時委員総会/「皆保険制度の堅持,TPPへの参加中止」等について決議を採択(写真) 平成二十四年度近畿医師会連合定時委員総会が五月二十七日,奈良市内で開催され,日医から横倉義武会長を始め,中川俊男副会長,石井正三・高杉敬久・鈴木邦彦各常任理事が出席した.

「医療保険・介護保険」「救急災害医療」「地域医療」について分科会を開催

 各分科会では,横倉義武会長と塩見俊次近畿医師会連合委員長(奈良県医師会長)が各会場を訪れ,あいさつするとともに活発な議論を要請した.
 第一分科会「医療保険・介護保険」では,平成二十四年度診療報酬・介護報酬改定の問題点について協議した.
 まず,鈴木常任理事が,平成二十四年度診療報酬・介護報酬改定の概要について説明.各府県医師会を対象に行ったアンケートでは,「わずかではあるがネットプラスの改定」「病院における複数科受診での二科目の再診料算定」「地域医療貢献加算から時間外対応加算に名称変更し,細分化により明確化」「入院中の患者が他の医療機関を受診することが可能になったこと」「手術料の引き上げ」などが評価された一方,「再診料の据え置き」「診療報酬体系の複雑化」「後発医薬品の効果が十分に検証されていない現状での,一般名処方加算の新設などによる後発医薬品使用の加速化」などの問題点が指摘された.
 鈴木常任理事は,時間外対応加算の要件を明確化したことを取り上げ,加算点数について医療機関での算定状況を見ながら次期改定での対応を検討していきたいとした.
 第二分科会「救急災害医療」では,災害時医療活動について協議された.
 災害発生時の医療活動に関する「府県行政との協定書」について各府県医師会が検討状況を報告.既に,災害時の自らの府県内への派遣については,協定書が交わされているが,東日本大震災を受けて,地域外への派遣についての対応も視野に協議が進められていることが説明された.石井常任理事は,昨年のJMAT活動に関して,「各医師会が独自に判断し活動したことを,行政も認めざるを得ない状況になった.日本の災害対策の要は都道府県レベルにあり,都道府県医師会同士が協調して動き出したことは,大きな力になる」として,医師会同士が連携を図りながら活動することの重要性を訴えた.
 近畿医師会連合「災害時等における相互支援に関する協定書」に基づく訓練については,早期に実施することが確認され,担当者間の関係構築や複数の連絡手段確保の重要性などが議論された.また,原子力発電所に関する対応については,原子力発電所が設置されている福井県医師会なども交えて検討していくこととなった.
 第三分科会「地域医療」では,地域医療における新医師臨床研修制度に対する検証について協議された.
 新医師臨床研修制度が地域医療へ及ぼした影響についてアンケートを行い,各府県医師会から結果の内容が報告された.その中では,新医師臨床研修制度が始まって以降,都市部では医師が増加傾向を示した一方,へき地では減少傾向を示し,地域偏在が解決されていない状況が明らかとなった.
 議論の中で,各府県医師会からは研修医のキャリアパスの重要性や研修医の推定年収の格差など,臨床研修制度の問題点への指摘や,へき地医療支援病院で医師数の減少が確認されたことに関して,支援機能の低下を懸念する意見が述べられた.
 また,高杉常任理事からは,今夏の電力使用について,五月二十五日に電気事業連合会を訪れ,日医と四病院団体協議会で取りまとめた,「電力使用制限令及び計画停電発動に伴う医療機関等への通電に関する要望」を提出したことを説明別記事参照.今夏の電力使用制限令の発動や計画停電が実施される場合に,医療・介護施設や居宅での患者や被介護者等への特段の配慮を要望したと報告した.

委員総会

横倉会長(右)と塩見近医連委員長(左)

 午後からは,委員総会が行われ,塩見委員長のあいさつの後,役員選任報告が行われた.来賓として,横倉会長(中川副会長代読)があいさつし,地域医療の発展に各府県医師会の協力を求めた.
 続いて,「平成二十三年度近畿医師会連合会務報告」の後,「平成二十三年度近畿医師会連合歳入歳出決算に関し承認を求める件」等の議案三件を審議し了承された.
 また,公益法人化に伴い,近畿医師会連合規約を一部改正し,本総会の開催時期等を変更する案が示され了承された.
 その後,「皆保険制度の堅持,控除対象外消費税の解消,TPPへの参加中止,地域格差の解消」などを趣旨とする決議(別掲)を採択.更に,次期主務地医師会は,和歌山県医師会とすることが紹介された.

経済学の視点からTPP交渉参加を懸念

 特別講演では,「岐路にたつ日本―今,何が必要なのか─」と題して,佐伯啓思京都大学大学院人間・環境学研究科教授による講演が行われた.
 佐伯氏は,現在の構造改革推進を訴えている経済学者は,九〇年代にアメリカで「市場競争が万能である」との間違った経済学を学んだ者であり,現在の日本経済の正常な状態を見誤っていると批判した.
 また,産業などの生産活動を行う基本的な条件として,食料,医療,教育などの安定供給が不可欠であるとした上で,医療,教育すらも市場で供給しようとするアメリカ型の経済への移行に危機感を訴えた.
 更に佐伯氏は,今回TPP交渉に参加しようとしている日本政府の交渉力不足などを指摘し,市場拡大により米や司法,医療などが狙われる可能性があり,TPP交渉参加は危険過ぎると警鐘を鳴らした.

平成24年度近畿医師会連合定時委員総会/「皆保険制度の堅持,TPPへの参加中止」等について決議を採択(表)

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