日医ニュース
日医ニュース目次 第1220号(平成24年7月5日)

都道府県医師会電力確保対策担当理事連絡協議会
医療施設における計画停電への対策を要請

都道府県医師会電力確保対策担当理事連絡協議会/医療施設における計画停電への対策を要請(写真) 都道府県医師会電力確保対策担当理事連絡協議会が六月十五日,日医会館小講堂で開催された.
 本協議会は,東日本大震災での原子力発電所事故を受けてわが国の電力供給体制が見直されている中,今夏は特に全国的な電力不足が見込まれることから急きょ開催されたもので,政府や電力会社との折衝の状況を報告し,医療施設における計画停電時の対応策などについて協議した.
 冒頭,あいさつに立った横倉義武会長は,震災直後に東北電力・東京電力管内で計画停電の実施が発表された際,政府に実施時間についての配慮を求めるとともに,都道府県医師会長への連絡やNHKに対するテロップ表示要請を行い,医療機関や在宅医療における準備を呼び掛けたことを報告した.
 更に,昨年十月には,厚生労働大臣等に対して計画停電時に通電される医療機関の拡大について要望を行い,五月二十五日には,四病院団体協議会と共に電力会社九社に対して,全ての医療・介護施設や在宅患者等に電力が供給されるよう要望したことを説明.「電力問題で患者さんに大きな被害がないよう切に願っている」と述べ,本協議会を踏まえて対策を講じるよう要請した.
 議事では,まず今村聡副会長が,日医における今夏の電力確保対策並びに節電推進等について説明した.
 同副会長は,昨夏の対応として,ピーク時の電力使用を前年同期比一五%減とする「電気事業法第二十七条による電力使用制限令」の対象に医療機関も含まれていたことから,対象から除外するよう政府等へ働き掛けた結果,医療機関の削減率が〇%と緩和されたことを報告.計画停電時に通電される医療機関については,公的病院を中心とする三次救急医療施設のリストが日医との協議もないままに公開され,混乱を招いたと指摘した.
 今夏においては,日医が都道府県医師会から二次救急医療施設の情報収集を行い,厚労省に提出したことを説明.同副会長は,「今年,厚労省は経済産業省に全ての医療機関に通電して欲しいと要望を出している.ただし,一カ所の医療機関に通電すると,配電所単位で一千戸の住宅に電気が流れることになる.どこかで線引きをせざるを得ないのは事実だが,出来るだけ拡大して欲しいと要望している」と述べ,都道府県医師会と自治体,電力会社で連携した形での,地域の実情を踏まえた検討をすることを求めた.
 続いて,鮫島信仁日医総研研究員が,計画停電時における病院・診療所への影響について説明.病院・診療所への緊急アンケート調査によって,東京電力管内の計画停電時に多くの問題別記事参照が発生したことが明らかになったとし,これらの事例をまとめた「日医総研ワーキングペーパーNo.二五三」(東日本大震災に伴う計画停電・電力需給対策における病院・診療所への影響と対応に関する研究)を参考に,実施時期が夏であることも踏まえた入念な準備を呼び掛けた.
 また,自家発電機を持っている場合でも,切り替わるのに一分近くかかったケースもあることから,事前に動作確認しておく必要があるとした.
 電力会社側からは,西村英樹東京電力(株)法人営業部都市エネルギー部都市第四グループマネージャーが,昨夏の計画停電及び電力使用制限令発動下における電力供給の方法について説明した.
 同氏は,福島第一原子力発電所の事故や計画停電の実施に関して謝罪した上で,この事故で供給力の約四割を失い,想定最大電力と一千万キロワットの需給ギャップが生じたことから,広域停電を回避するために,昨春はやむなく計画停電を実施したことを強調.その後,夏に向けて運用の見直しを行い,計画停電の対象範囲を一次変電所(六万六千ボルト)から配電用変電所(六千六百ボルト)へときめ細かくし,午前九時半から午後八時まで,一グループにつき一日一回,二時間程度を計画(未実施)していたことを報告した.
 なお,今夏については,供給予備率四・五%を有していることから,東京電力管内の計画停電は実施しないとの見通しを示した.

計画停電時の通電対象医療機関を再検討

 引き続き,岩井誠奈良県医師会理事が関西電力との協議状況について報告.計画停電時の通電対象医療機関については,二次,三次救急医療機関の線引きだけで重要性を判断出来ないとして,近畿医師会連合を窓口に,府県医師会と連携して再検討することとなり,各県で二,三の医療施設の追加が可能だとの回答を得たとした.
 計画停電の時間帯やスケジュールは六月中旬に公表し,実施については,前日の午後六時頃に「電力予報」として広報するとの関西電力の説明に対し,停電の予定を出来るだけ早く伝えることを要請.ポータブル発電機の貸し出し数については,人工呼吸器など在宅患者の実態把握を行って検討する必要があるとした.
 この他,計画停電と医師賠償責任保険について,高島昇日医医賠責対策課長が説明.日医医賠責保険での保険金支払いに関し,計画停電時の事故においては一律の判断が極めて難しいとして,個別に判断されるとした.
 また,畑仲卓司日医総研研究部統括部長より,「二〇一一年 病院における地球温暖化対策自主行動計画フォローアップ報告」の温暖化対策が,節電対策としても有効との説明が行われた.
 質疑応答では,事前に都道府県医師会から寄せられていた質問に,高杉敬久常任理事が回答.医療施設の節電対策に関するガイドラインの策定を求める意見など,活発な議論が行われた.

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