あなたのため、そばにいる人のため 禁煙は愛

禁煙は周囲への愛

誰かたばこ煙を
吸うだけで
喫煙者
同様リスクあります

  • 他人のたばこの煙を吸うだけで、
    喫煙者と同じ病気のリスクがある
  • たばこの臭いを嗅いだだけで
    健康被害を受ける
  • 煙が出ないたばこでも
    健康へのリスクがある
  • 望まない受動喫煙をなくす

喫煙者が吸い込む煙と
同じくらい
周囲の人が
吸い込む煙は有害です

喫煙者が吐き出した「呼出煙」とたばこから立ち上る「副流煙」にも、多くの有害物質が含まれています。煙に含まれる発がん性物質などの有害成分は、喫煙者が直接吸い込む主流煙より副流煙に多く含まれるものがあり、受動喫煙(二次喫煙)による健康への影響は深刻です。
普段たばこを吸わない人は、たばこの煙に対する感受性が高く、他人の煙を吸うと、少しの量でも大きな健康被害を受けるという報告があります7)。2016年8月に国立がん研究センターから、受動喫煙により日本人が肺がんになるリスクはその影響のない人の約1.3倍になることが発表されるなど、受動喫煙のリスクは科学的にも証明されています8)

7)Barnoya J, et al. Circulation. 2005; 111: 2684-98.

8)Hori M, et al. Jpn J Clin Oncol. 2016; 46: 942-51.

「たばこ臭がする」と
感じたら、
もう被害にあっています

飲食店などでは、分煙にするため喫煙室を設け、出入口にエアカーテンを設置している店がありますが、これでも煙を100%遮断することはできません9)。人が出入りする際には必ず、体にたばこの煙がまとわりついて移動し、有害物質を拡散させるからです。
服や髪の毛、カーテン、家具、壁などからたばこ臭を感じた時には、有害物質を体内に吸い込んでしまうという、残留受動喫煙(三次喫煙)による被害にあっているのです。

喫煙によって発生したたばこの煙は、家具や壁紙、カーテン、玩具、自動車の内装、エアコンの表面に付着した後、有害物質が少しずつ揮発し続けます。たばこの煙が見えない環境でも、受動喫煙と同様にたばこ由来の有害物質にさらされてしまうことになるのです。

9)厚生労働省: たばこ規制枠組条約第2回締約国会議の概要

喫煙所があるから安全?
たばこ煙の到達距離は
直径14m

屋外の喫煙場所として喫煙所が設けられていますが、たばこ煙の到達距離は直径14mの円周内10)(約95畳)と広い範囲に及びます。完璧な排気装置でもない限り、周囲の非喫煙者の健康リスクをゼロにすることは困難です。
また喫煙の時はマスクをはずすだけでなく、手を口元に近づけるため、喫煙者の新型コロナウイルス感染のリスクも高めることになります。

10)James Repace: Measurements of outdoor air pollution from secondhand smoke on the UMBC campus. http://www.repace.com/pdf/outdoorair.pdf(2021年11月4日接続)

新型たばこなら、大丈夫?
は誤解です

新型たばこの種類

最近、煙が出ない新しいタイプのたばことして「加熱式たばこ」と「電子たばこ」、「スヌース(嗅ぎたばこ)」などを使用する人が増えています。

主な新型たばこ

  • 加熱式たばこ たばこの葉を電子機器で加熱して蒸気を発生させ、ニコチンを吸い込む
  • 電子たばこ たばこの葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内の液体を電気加熱し、発生する蒸気(エアロゾル)を吸い込む
  • スヌース 粉砕したたばこの葉を入れた小袋を上唇と歯茎の間にはさむ

新型たばこの健康リスク

加熱式たばこについて、たばこ会社の中には、発がん性物質や有害物質は紙巻きたばこより少なく、たばこ関連疾患のリスクを減らすとの研究論文を出しているところもありますが、米国FDAたばこ製品科学諮問委員会は、たばこ会社の主張を否定していますし11)、2017年には加熱式たばこのフィルターから加熱時に有害化学物質が発生していることが報告されています12)
電子たばこのエアロゾルには、紙巻きたばこより低濃度とはいえ重金属やさまざまな発がん性物質が含まれています。また、スヌースにはニコチンの他、多くの発がん性物質が含まれており、健康被害には口腔がんも知られ、歯周疾患になりますし、循環器疾患のリスクも高まる可能性もあります。 新型たばこは体への影響が少ないと思い、紙巻きたばこから禁煙目的で切り替える人もいますが、むしろ成功率は格段に低くなるという調査結果が出ていますし、若い人の中にはダイエットに有効と考えている人もいるようですが、それは大きな誤りです13)
また、電子たばこ経験者は未経験者よりも紙巻きたばこの使用を始めてしまう人が多いといった報告がありますし、長期にわたるエアロゾル吸引の安全性は確認されていません。

11) FOOD AND DRUG ADMINISTRATION. Meeting of the Tobacco Products Scientific Advisory Committee January 24-25,2018.
https://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/TobaccoProductsScientificAdvisoryCommittee/UCM599236.pdf(2018年11月19日接続)

12) Davis B, et al.:Tob Contol.2018 Mar 13. pii: tobaccocontrol-2017-054104. doi:10.1136/tobaccocontrol-2017-054104.

13) Int.J.Environ.Res.Public Health 2017,14(2)

新型たばこ1本中の蒸気と
紙巻きたばこ1本中の煙に含まれる
主な成分の比較

新型たばこ(μg) 紙巻きたばこ(μg) 比率(%)
ニコチン 301 361 84
ホルムアルデヒド 3.2 4.3 74
アクロレイン 0.9 1.1 82
ベンズアルデヒド 1.2 2.4 50

ホルムアルデヒド:発がん物質、アクロレイン:劇物、ベンズアルデヒド:香料等に使用される刺激性物質

Auer R, et al. : JAMA Intern Med. 177(7): 1050-1052, 2017より抜粋、改変

水たばこにもご注意を

若い女性を中心に、SNS映えすることからたばこの煙を水にくぐらせて吸い込む「水たばこ」を使用する人も増えているようですが、紙巻きたばこと同様に、水たばこの煙の中には有害物質が含まれるものもあり、健康リスクはあります。

海外では規制する国も

このように、新型たばこは禁煙に役立ちませんし、加熱式たばこは紙巻きたばこと同様に健康リスクがあり、受動喫煙も引き起こします。WHOたばこ規制枠組条約第8回締約国会議の議決で、新型たばこは、たばこと同様に扱われることになっています。

海外の新型たばこの規制状況

電子たばこの持ち込みが禁止されている国・地域 シンガポール、タイ、台湾、香港
(電子たばこ持ち込み禁止条約があり、最悪の場合は逮捕)
電子たばこの販売が禁止されている国 全面禁止 アルゼンチン、インド
ニコチン含有製品のみ禁止 アラブ首長国連邦、インドネシア、ウルグアイ、オーストラリア、オマーン、カタール、トルコ、ブラジル、ブルネイ、ベネズエラ、ベルギー、メキシコ
EU*1 ENDS(ニコチン入り溶液を吸入するタイプ)について、容量・濃度の制限、添付文書による若年者・非喫煙者の使用の非推奨、包装への警告表示、報道・刊行物などによる販売促進の禁止など
米国*2 米国食品医薬品局(FDA)は2020年に加熱式たばこの販売を承認したが、「安全を認めたことにならない」と声明。なお米国はFCTC(たばこ規制枠組条約)を締約していない
WHO FCTCに2020年6月現在、日本を含む182カ国が締約*3。FCTCでは「加熱式たばこはたばこ製品であり、FCTCによる規制が必要」としている*2

*1 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000086466_1.pdf(2021年11月4日接続)

*2 加熱式タバコおよびFDAのアイコスに関する決定に対するWHOステートメント
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/WHO20_7_22.pdf(2021年11月4日接続)

*3 外務省「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/who/fctc.html(2021年11月4日接続)

一歩進んだ健康増進法

家庭を始め、公共施設や店舗、職場など社会全体で受動喫煙をなくすことが必要です。公共の場の受動喫煙を防止するために、わが国では2018年に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、国・地方公共団体は、学校・病院・行政機関や飲食店などの施設ごとに禁煙措置等の責務を課すとともに、掲示を義務付けることが罰則付きで規定されました(健康増進法25条)。各自治体の中には、上乗せ規制のために受動喫煙防止条例を制定しているところもあります。
しかし、小規模の飲食店での喫煙や屋内喫煙室の設置を認めるなど、まだ屋内の全面禁煙には至っていません。世界では屋内全面禁煙の法律が設けられている国がありますのでわが国の規制はまだ遅れているといえます。

受動喫煙防止の
取り組みにより、
急性心筋梗塞の
入院患者が減った事例

米国モンタナ州ヘレナ市では、受動喫煙防止条例を施行後6ヵ月間で急性心筋梗塞の入院患者が40%減少。その後、条例が廃止されると入院患者が増大したとの調査結果があり、その後の多くの追試でも同様の結果が報告されています。

藤原久義, 他. 禁煙会誌. 2017; 8: 119-25.

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