平成28年(2016年)4月20日(水) / 日医ニュース
「控除対象外消費税」「新たな専門医の仕組み」「医療事故調」等に関する質問に理事者側から回答 代表質問
第136回日本医師会臨時代議員会
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代表質問1 控除対象外消費税問題の抜本的解決について
杉田洋一代議員(中部ブロック)からの「控除対象外消費税問題の抜本的解決」についての質問には、今村副会長が回答。まず、「平成28年度税制改正大綱」に、「平成29年度税制改正に際し、結論を得る」との文言が、日医の強い働き掛けにより明記されたとした上で、8月に決定する厚生労働省の「平成29年度税制改正要望」と日医の要望内容とを擦り合わせるよう準備するとした。
また、日医がこれまで検討を進めてきた「課税転換、軽減税率適用」は、小規模医療機関に大きなマイナスの影響が及ぶことが改めてはっきりしたとして、4つの課題を指摘。そうした経緯で、「病院に対しては仕入れ税額控除、診療所は診療報酬への上乗せ」とする案に至ったと説明した。
更に、日医の医業税制検討委員会が3月に提出した、同案をより進化させ、一つの制度として実現することを提案した委員会答申の要旨を示し、「これは医療界が初めて一つになれた具体的な解決要望であり、この案を基本に検討を進めていく」と述べ、更なる理解と協力を求めた。
代表質問2 医療における消費税問題解決に向けた質問と国への働き掛け
加藤智栄代議員(中国四国ブロック)からの、「国民と共に軽減税率を勝ち取って解決すべき」との考えに対し、今村副会長は、そのためには国民に課税転換することの意味を正しく理解してもらう必要があり、さまざまな努力を重ねてきたが、「国民の正しい理解」を得ることは極めて困難であることが実感され、また、医療機関側への影響もあり、「軽減税率」による解決を選択すべきではないとの結論に至ったと説明。
また、「国民の総意とするために全都道府県が意見書や要望書を提出すべき」との意見に対しては、本年1月、横倉会長より各都道府県医師会長宛てに要請した「地方自治法第99条に基づく国及び関係行政庁への意見書提出の働き掛け」の意義を強調した上で、既に中央議会へ提出済みの道県も含め、多くの都府県医師会が取り組み中であることに改めて感謝の意を示すとともに、現在対応を保留中や検討中の医師会に対しては、「改めて働き掛けをお願いしたい」と述べた。
代表質問3 新専門医制度における日医の対応について
小熊豊代議員(北海道ブロック)からの、(1)専攻医が都市部に集中し、地域医療の確保が困難になるのではないか、(2)日医が主張している"制度の延期"は混乱を生じさせるのではないか、(3)日医と全国医学部長病院長会議による「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」と整合がとれているのか─という3つの質問には、中川副会長が回答。
同副会長は、定例記者会見における横倉会長の発言、社会保障審議会医療部会の審議内容などに触れた上で、(1)には、日医も医師の地域偏在について危機感を持っているが、地域医療に配慮したプログラムの検討や問題点の協議といった北海道のような取り組みが進んでいない地域があるのも実情である、(2)には、見切り発車でのスタートは、専門医の質の確保という本来の目的が達成されず、専攻医に不安を与えかねない他、医師偏在が深刻化すれば、地域包括ケアシステムの構築を阻害する恐れがある、(3)には、現在、合同緊急提言を基に病院団体と協議を重ね、新たな専門医の仕組みも見据えてその具現化を目指している─ことをそれぞれ説明した。
代表質問4 新専門医制度について
橋本省代議員(東北ブロック)からの「新たな専門医の仕組みに関する日医の考えを問う」質問には、中川副会長が導入時期を延期することも視野に入れ、地域の連携状況を把握し、地域における研修体制の整備を優先するためには、まず日本専門医機構の組織運営の透明性の確保が最優先だと指摘。社会保障審議会医療部会の下に設置された「専門医養成の在り方に関する専門委員会」での議論を通して、また、日本専門医機構の内部からも、徹底して軌道修正を図っていきたいとした。
更に、各地域では医師会を始め、大学病院、市中病院、自治体などの意見交換がより重要になるとして、一層密に議論を重ねて欲しいと要望するとともに、医療提供体制全般について責任を持つという日医の役割を肝に銘じて、新たな専門医の仕組みの構築に対応していくとした。
代表質問5 「2025年を見据えた看護、介護福祉に対応できる職種」の創設について
天木聡代議員(東京ブロック)からの「2025年を見据えた看護、介護福祉に対応できる職種」の創設の提案に対しては、松原謙二副会長が回答した。
同副会長は、「看護・介護人材のすそ野を広げるには、社会人や子育てを終えた主婦等にも取り組んでもらうことが必要で、そのためにも准看護師資格の魅力を増していく必要があるが、現在、准看護師制度の抜本的な見直しや、准看護師とは別の新たな職種をつくることは検討していない」と説明。
更に、前述の提案に対しては、「新しい資格を創設した場合、業務内容、特に診療の補助の範囲が狭められ、地域の医療提供体制を支えることができなくなる可能性がある」との考えを示した上で、「日医は、地域の医療・介護を支える人材として准看護師が必要と考えており、准看護師養成制度を堅持していく方針である。今後も准看護師養成所の運営環境の改善や、准看護師の生涯研修の充実など、准看護師養成制度の基盤強化に努めていきたい」と述べ、理解を求めた。
代表質問6 「持分あり医療法人の相続承継問題」について
澤井博司代議員(関東甲信越ブロック)からの「持分あり医療法人の相続承継問題」についての質問には、今村副会長が回答した。
同副会長は、「医療法人の事業承継を支援することは、地域医療確保の上で大変重要な課題であり、持分あり医療法人が事業承継を円滑に行えるよう、日医は従来から要望を行っている」と説明。
具体的には、持分あり医療法人が事業承継を円滑に行えるよう、「中小企業に認められている相続税・贈与税納税猶予制度と同様の制度の創設」「認定医療法人について、出資者全員が持分を放棄した際、不当減少とみなす贈与税課税を行わないこと」「出資についての評価方法の改善」の3項目を、一方、持分ありから持分なしへ移行を希望する医療法人が、円滑に移行できるよう、「出資者全員が持分を放棄した際、不当減少とみなす贈与税課税を行わないこと」「移行時において、出資者にみなし配当課税を課さないこと」の2項目を、それぞれ要望しているとした。
その上で、「今年は、税制上の喫緊の課題が『控除対象外消費税問題』となっていることから、この1年間は消費税問題に全力を傾注し、次年度以降、この問題に全力で取り組んでいきたい」と述べ、理解と協力を求めた。
代表質問7 介護職の尊さと重要さの啓発活動と人材確保の取り組みについて
林芳郎代議員(九州ブロック)からの「介護職の尊さ、重要さの啓発活動と人材確保の取り組み」についての質問に対し、松原副会長は、「在宅・施設サービス等の整備施策に関する最大の課題は、人材確保である。そのためにはまず、介護に対するイメージを『きつい、汚い、危険』の3Kから転換していかなければならない」と強調。
その上で、(1)介護職の新規確保として、元気な高齢者や短時間の勤務を望む人など、多様な人材を活用すべく、それぞれの能力や希望に合わせて働けるよう制度を整備する、(2)離職防止に向け、産前産後・育児休暇や24時間対応保育所の整備、短時間勤務の受け入れなど、子育てと仕事を両立できる支援を充実させる、(3)処遇改善のため、介護報酬の「介護職員処遇改善加算」の増額と、現場の実態に即して活用させるための見直しを社会保障審議会介護給付費分科会等で主張していく─ことが重要であるとの認識を示し、各地域における介護人材確保のための施策に協力を求めた。
代表質問8 患者中心の地域医療構想策定はいかにあるべきか
中尾正俊代議員(近畿ブロック)からの「患者中心の地域医療構想策定はいかにあるべきか」という質問には、中川副会長が回答。「地域医療構想に外来医療の観点がない」との指摘に対しては、日医も同様の問題意識を持っているとした。
一方、昨年10月に財政制度等審議会の分科会が示した「改革工程表」に、外来医療費の地域差の是正が盛り込まれたことに触れ、「外来医療が歪んだ形で議論の俎上(そじょう)に上がろうとしている」と指摘。厚生労働省が都道府県に提供する外来医療費データが一律の医療費抑制に用いられないよう、厚労省に地域の実情を伝えたいとした。
また、療養病床の再編と在宅医療の推進については、「地域医療構想は、在宅医療と慢性期の病床機能を一体として考えることとされているが、在宅医療の実情がほとんど考慮されないまま、病床の必要量を算出していることは非常に問題である」と指摘し、「療養病床が強制的に他の機能に移行させられたり、過度の在宅偏重にならないよう、療養病床の新たなサービス類型の議論に臨んでいく」と述べた。