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平成28年(2016年)4月20日(水) / 日医ニュース

「控除対象外消費税」「新たな専門医の仕組み」「医療事故調」等に関する質問に理事者側から回答 個人質問

個人質問1 急増する認知症高齢者に対して、医師会はどう取り組むべきか

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 「急増する認知症高齢者に対して、医師会はどう取り組むべきか」との諸岡信裕代議員(茨城県)の質問に対して、鈴木邦彦常任理事は、かかりつけ医の果たす役割が重要になると指摘。「かかりつけ医には、最大の理解者として、患者が認知症と診断されても、日常の暮らしを大切にして、できるだけ社会と関わり続けながら、住み慣れた地域で穏やかに過ごしていけるよう、医療保険や介護保険のサービスに限らず、地域のさまざまな資源を活用して認知症患者を支えて欲しい」とした。
 更に、都道府県医師会に対しては、行政や医療・介護・福祉関係者と連携するとともに、日医かかりつけ医機能研修制度を活用することで、かかりつけ医の先生方を支援して欲しいと要望。日医としても、認知症施策の推進に関わっていく中で、都道府県・郡市区医師会を支援していきたいとした。

個人質問2・3・4 医療事故調査制度(名称、支援団体、医療事故調査・支援センター等)について

 関連する3つの質問には、今村定臣常任理事が一括して回答した。
 支援団体の取りまとめ役である都道府県医師会が相互に連絡協議する場を設けることを求める豊田秀三代議員(広島県)の質問に対して、同常任理事は、「取り組みの進んでいる地域とそうでない地域との違いも少しずつ明らかになってきており、平成28年度には全国の関係者が相互に情報交換できるような連絡協議会をぜひ開催したい」とした。
 遺族にも悪いイメージを持たれるとして「医療事故調査制度」そのものの名称変更を求める濱田政雄代議員(宮崎県)の要望には賛意を示した上で、自民党の「医療事故調査制度の見直しに関するワーキングチーム」(3月8日開催)において、適切なネーミングへの変更を求めたことを報告した。
 金沢和俊代議員(埼玉県)は、①支援団体の取り組みのマニュアル化②医療事故調査・支援センターとの連携・調整─を要望。①について同常任理事は、「可能な限り全国を平準化した取り組みの成果が出せるよう、工夫を凝らしていきたい」と答弁。②に関しては、制度の見直しの中で議論の俎上(そじょう)に載せていく考えを示した。

個人質問5 医療情報連携に伴う「医師資格証」の普及促進及び会員施設におけるネットワークのセキュリティ対策について

 末松哲男代議員(福井県)からの、「『医師資格証』の普及及び会員施設ネットワークのセキュリティ対策」に関する質問には、石川広己常任理事が回答した。
 まず、同常任理事は、4月から「医師資格証」を用いて電子署名を付与した電子紹介状のやり取りが診療報酬の算定要件を満たすようになることや、講習会等の出欠や日医生涯教育制度の取得単位の管理での活用など、「医師資格証」の周辺環境が大きく変わること等を説明。
 それに伴い、「医師資格証」の更なる普及促進のため、4月より取得・維持費用を改定し、日医会員は、「取得時の発行手数料を無料とし、利用料を廃止、5年ごとのカード更新時の発行手数料5,000円(税別)」、非会員は、「取得時と5年ごとの更新時の発行手数料5,000円(税別)、年間利用料6,000円(税別)」とすることを明らかにした。
 また、ICTを用いて医療情報を扱う限り、小規模医療機関でも最低限のセキュリティ対策を実施する必要があるとの認識を示し、その手助けとなる資料等のツールを提供していきたいとして、理解と協力を求めた。

個人質問6 新専門医制度について

 「新たな専門医の仕組み」に関する白石昌之代議員(福岡県)の質問に対し、回答に立った小森貴常任理事は、「地域医療が一歩たりとも後退することがあってはならない」との考えの下、日本専門医機構の運営に関して、日医が主導的な立場を取ってきたと説明。その結果、専門医取得のために地域医療現場での研修が必修化されたことを挙げ、今後も地域医療が強化される方策を実現させていくとした。
 更に、総合診療専門医はあくまでも学問的な面から評価したもので、今後も地域医療を守るのは、かかりつけ医であるとの認識を示すとともに、総合診療専門医がサブスペシャルティに進むことも可能とすべく議論していると述べた。
 また、新たな仕組みが開業医等の生涯教育の妨げにならないよう、都道府県医師会開催の講習会や、日医生涯教育制度のe-ラーニングで要件を十分満たせるように準備を進めるとともに、かかりつけ医が地域医療と専門医の資格更新を確実に両立できるよう、今後も対策を充実させていく意向を示した。

個人質問7 地域医療の確保について国への働き掛け

 松山正春代議員(岡山県)からの地域医療介護総合確保基金に関して、(1)基金の使途区分間における額の調整の柔軟化、(2)基金原資の確保充実、(3)事業費の早期内示の実施─を国に働き掛けて欲しいとの要望には、釜萢敏常任理事が回答した。
 同常任理事は、(1)について、財務省の姿勢は非常に厳しかったが、日医が強く要望した結果、本年1月18日付で、各都道府県衛生主幹(部)局長宛てに「事業区分Ⅲに含まれている一部を事業区分Ⅰに含めて差し支えない」との厚労省地域医療計画課長名の事務連絡が発出されたことを報告。(2)では、厚労省に対して、平成29年度の概算要求要望及び補正予算を組む際に、十分な財源を確保することを要望していくとした。
 また、(3)については、現段階のスケジュールを示すとともに、内示の回数を1度にするよう強く要請していることを説明。看護学校補助金など継続分を確実に手当てし、地域の事業に影響が出ないような基金交付の実施を厚労省に要請しているとして、理解を求めた。

個人質問8 死亡時画像診断と解剖との併用について

 西成忍代議員(秋田県)からの法医解剖医の処遇、死亡時画像診断(Ai)と解剖の併用に関する質問には、松本純一常任理事が回答した。
 同常任理事は、「死因究明等の推進に関する法律」は、既に効力を失っているため、後継となる法案提出に向けて、関係国会議員などに働き掛けている状況を説明。法医解剖医の待遇改善を含めて、新たに設置を要望している「国全体で省庁横断的に死因究明施策のあり方を検討する会議などの場」を通じて、問題提起などを行っていきたいとの考えを示した。
 また、司法解剖時におけるAiの併用については、警察が犯罪捜査上の必要性を認めれば、Aiの実施を妨げるものではないとの警察庁の考え方を報告するとともに、「医師として、医学的に必要と判断した検査方法を予算的な理由で十分活用することができないという事態はあってはならない」として、警察庁に対し、解剖時のAi併用の意義を強く申し入れていくとした。

個人質問9 医療における消費税問題について

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 鈴木伸和代議員(北海道)からの、①日医は消費税率10%引き上げ時の解決策を「課税方式」から「非課税方式」に方向転換したのか②非課税還付方式導入の場合、診療所でもインボイス方式を導入するのか③消費税率が上昇し財源的に耐え切れなくなった場合、上乗せ財源が一気に引きはがされることはないのか─との3つの質問には、今村常任理事が回答した。
 ①には、日医は当初より「課税方式」「非課税方式」を問わない解決策を求めており、その方針は変わっていないとした上で、引き続き、患者負担を増やさない制度への改善、税制による解決を要望していくとした。
 ②には、仮に非課税で還付を受けることになった場合、診療所も含めてインボイスを利用した還付手続きとなると思われるが、今後も議論が必要と説明。
 また、③に関しては、抜本的解決を図る際に、仮に課税転換ということになれば引きはがしの議論が起こるが、その時以外では「理由なき引きはがし」は起こらないとの認識を示した。

個人質問10 病床機能報告制度と地域医療構想について

 大澤英一代議員(奈良県)からの「病床機能報告制度と地域医療構想に関する日医の見解を問う」質問には、釜萢常任理事が、地域医療構想策定において、入院と在宅をどのように組み合わせるかは、全国一律に決められるものではなく、地域の実情を十分勘案した上で、在宅医療の選択は、あくまで住民の希望に応じ行われるものであるとの認識を示した。
 また、県行政の医療需要の推計値を絶対視する認識を払拭できないとの訴えに対しては、医師会が中心となり、地元大学や病院団体、住民と連携し、県との協議を継続して欲しいと要望。病床機能報告制度については、ガイドラインに「将来も病棟ごとに選択した機能と患者像が完全に一致することを想定しているものではない」と明記されていること、ガイドライン検討会の資料では、本制度の病床数は、あるべき医療提供体制の実現に向けた「参照情報」との位置付けとされていること等を説明し、本制度が行政による強制的な規制につながらないよう、日医としても、厚労省に対し都道府県行政への指導徹底を求めていくとした。

個人質問11 日医の考える「かかりつけ医とは」何か

 森久保雅道代議員(東京都)からの日医の考える「かかりつけ医とは」との質問に、鈴木常任理事は、平成25年8月に日医が四病院団体協議会と共に行った合同提言で、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と改めて定義していることを説明した。
 また、本年4月から開始する「日医かかりつけ医機能研修制度」について触れ、「かかりつけ医機能をより充実・強化することを目的としており、地域のかかりつけ医として活動している医師が本研修制度を活用して研鑽(けんさん)を続けることは、地域住民からのより一層の信頼にもつながる」と強調。
 本制度の実施を検討中の都道府県医師会に対しては、「5月22日に開催する『平成28年度応用研修会』で取得できる単位の有効期間が3年となっている。地域包括ケアの重要な担い手となるかかりつけ医を育成する本制度を理解し、前向きに検討して欲しい」と述べ、更なる協力を求めた。

個人質問12 特別支援学校における医療的ケアについて

 森喜久夫代議員(和歌山県)の「特別支援学校における医療的ケア」についての質問に回答した道永麻里常任理事は、医療的ケアを充実させるためには、看護師が特別支援学校で勤務する際の不安を払拭(ふっしょく)できるよう、看護師を増やすこと、看護師の雇用待遇の改善など身分の保障が重要になると指摘。文部科学省に対して、①専門性の高い看護師の確保②研修の場の確保と内容の充実─等を働き掛けていくとした。
 ネブライザーの吸入、酸素吸入、坐薬挿入などの「特定行為以外の医行為」については、「医師の具体的指示」を受けて行うのであれば、看護師が行ったとしても法的に問題はないことを改めて説明。また、38の特定行為を看護師が特別支援学校で行うことについても、研修を受けた看護師が手順書に従って行うことは可能とした。
 その上で、学校医が責任を問われる懸念に関しては、文科省から「関与の度合いにもよるが、医療的ケアに関する責任は、学校設置者であり実施主体である教育委員会や学校にある」との回答があったことを紹介し、理解を求めた。

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